PROJECT STORY
プロジェクトストーリー
防災ヘルプサービス開発プロジェクト
一人の営業マンの実体験から走り出す。
自治体向け防災ヘルプサービスの開発
今回紹介するのは、名古屋市とともにパソナが進めている「防災ヘルプサービス開発プロジェクト」。大都市が絡むこの大規模プロジェクトが始まったきっかけは、一人の熱意ある営業担当の想いからだった。
パソナが開発した「防災ヘルプサービス」とはどのようなものなのか。また、どのように企画は動き出し、具現化したのか。プロジェクトに携わる森川氏、水野氏、杉山氏の3人に話を聞いた。
INTERVIEW MEMBERS
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森川 稔也 MORIKAWA TOSHIYA
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2016年新卒入社。
防災ヘルプサービス開発プロジェクトの
発起人であり、統括責任者。
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2016年新卒入社。
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水野 将史 MIZUNO MASAFUMI
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2012年入社。
営業と開発現場の架け橋のような
立場としてプロジェクトに参画。
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2012年入社。
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杉山 拓 SUGIYAMA TAKU
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2012年に入社。
防災ヘルプサービス開発プロジェクトに
おける開発現場の中心人物。
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2012年に入社。
父を心配する一人の営業マンの想いから
誕生したパソナの「防災ヘルプサービス」
防災ヘルプサービス開発プロジェクトの発端は2019年まで遡る。当時森川氏、水野氏、杉山氏の3人は中部支社におり、社内では新規サービス開発の機運が高まっていた。
そんな折、2019年に台風19号が発生。大雨によって関東・甲信地方など各地の川で氾濫が起こった。森川氏の実家は東京にあり、体の不自由な父親は一人暮らし。もし家が浸水すれば、父親一人では逃げることもできない。森川氏はそんな状況に危機感を覚えたという。
- 森山氏
- 幸いにも実家近くの川は氾濫せず父は無事でしたが、今後もこのような事態が起こるリスクを考えたとき、父のように自分で逃げられない人を救う方法はないかと考えました。そこから、災害時に避難のサポートが必要な人とサポートを志願する近隣住民をマッチングさせる、防災ヘルプサービスのアイデアが浮かんだんです
その後、森川氏はこのアイデアを水野氏に提案した。水野氏はエンジニアサイドで検討し、森川氏の構想をもとにアプリ開発をスタート。そしてアプリ開発の実証実験を行なう過程で、現在プロジェクトを進めている名古屋市との関わりが深まったという。
- 水野氏
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2020年に、まず豊田市でアプリの実証実験を行ないました。その後、防災関連の研究をされている名古屋市の大学教授とかかわりができ、名古屋市南区の自治会とも実証実験を行なう運びとなりました。この実証実験は名古屋市自体とは関係がなく、助教授とつながりのある地区の避難訓練で開発中のアプリを使わせてもらう形で進めていました。
そんなとき、本来はかかわっていなかった名古屋市の職員の方が偶然見に来られていて、『うちの避難訓練でも使わせてもらえないか』と打診があり、それから名古屋市とのお付き合いが始まりました
実は名古屋市はその頃、災害時に欠かせない「個別避難計画の策定機能」のシステムを作ろうとしていた。個別避難計画とは、要支援者(高齢者・障害者など災害時に避難のサポートが必要な人)がとるべき避難行動や、支援者(実際に避難をサポートする人)の名前などを記したものである。
この個別避難計画をスムーズに策定できるシステムを、名古屋市は求めていた。そして、パソナが開発を進めていた防災ヘルプサービスの核となる機能の一つが、まさに個別避難計画の策定機能だったのだ。
こうして森川氏が父親を想って思いついた1つのアイデアは、名古屋という大都市を巻き込む大規模プロジェクトへと発展する。
各チームで連携し、3つの視点から
今までにない防災システムを構築
今回パソナが開発した防災ヘルプサービスは、3つの視点から開発が進められている。1つ目は、「個別避難計画の策定」をデジタル化し、オンライン上で管理できるようにすることだ。
- 杉山氏
- 一般的に個別避難計画は紙で作成します。しかし、紙のようなアナログ媒体での管理では、実際に災害が起こったときに要支援者一人ひとりの個別避難計画を探し出す必要があり、情報を確認するまで時間も手間もかかります。また紙の場合、紛失や損傷などによって正しく情報を確認できなくなるリスクもあります。そこでパソナの防災ヘルプサービスでは、オンラインで個別避難計画を作成できるようにし、デジタル管理を可能にしたんです
2つ目は、「個人ではなく地域全体で助ける」という視点だ。具体的には特定の支援者を事前に決めず、あらかじめ設けた支援者のグループに向けて、システム側からメッセージを送れる機能を実装した。災害が発生すると、防災ヘルプサービスに登録している支援者に要支援者の避難状況などが共有される。
- 水野氏
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従来の個別避難計画では、要支援者に対して特定の支援者を指定しておく必要がありました。しかし、実際の災害発生時に支援者が要支援者の近くにいるとは限らないうえ、個人が負う責任感の重さなどからそもそも支援者のなり手が少ないことが課題でした。
そこでパソナの防災ヘルプサービスでは、あらかじめ特定の要支援者と支援者のペアを決めない設計にしました。要支援者の情報が支援者のグループに共有されたとき、動ける範囲にいる支援者が実際に避難をサポートできる仕組みにしています。個人ではなく地域全体で、要支援者に手を差し伸べられるようにしたかったんです
そして3つ目は、「災害情報の配信」を独自に行なうことだ。災害でインフラ設備がダメージを受けた場合、テレビやインターネットなどで情報がすぐに得られるとは限らない。そこで要支援者の状況とともに、被災エリアの現状をシステム側が把握し発信することで、よりスムーズで安全な避難につなげられるようにした。
上記3つの視点を軸とし、実際の開発工程は、営業の森川氏、開発の杉山氏、その間を取り持つ水野氏が中心となって連携を取りながら進めたという。
- 杉山氏
- 開発の全体的な指揮については私がとりました。水野さんも開発チームのメンバーですが、実際の開発作業というよりは営業と開発の仲介役のようなポジションで動いてもらいました。森川さんがクライアントからの要望を聞き、技術視点で水野さんがフィードバックをする。その後、決定事項などが私に伝えられ、スケジュールなどを調整しつつ、開発を進めていくという流れですね
この防災ヘルプサービスは、今では名古屋市だけにとどまらず、静岡・広島など多方面に展開している。クライアントが増えていくなかで、要望にあわせて柔軟にカスタマイズも施しているという。今後は平常時に使用できるような機能なども拡張していく予定だ。
防災ヘルプサービスをきっかけに高まりつつある自社サービス開発への機運
一人の営業マンの思いつきが会社全体を動かし、実際にサービスの開発までたどりつくのはそう簡単なことではない。今後も同じように、新しい発想から新規サービスが生まれることはあるのだろうか。
- 水野氏
- 今回の防災ヘルプサービスをきっかけに、新しいサービスを作るチームが社内にいくつかできつつあります。私たちのようなチームが、イチからサービスを作る道筋を作れたことは、パソナ全体にとっても大きな意義があったかなと今は感じています。新規サービスの開発に挑戦するチームがもっとできれば、パソナも活性化していきますし、エンジニア個人としての可能性も広がっていくと思います
- 森川氏
- 防災ヘルプサービスの最初のアイデアは私発信ですが、実際にここまで形にできたのは当然チーム全員のおかげです。やりたいことや欲しい機能を相談すれば、そこから本当に使える機能が次々と開発されていきます。私だけではなく若いメンバーもどんどん発言していく空気感もありますし、新規サービスの開発をしながらスキルを向上させるには最適の環境ではないでしょうか
パソナでは、今回の防災ヘルプサービスのように新しいサービスの開発を積極的に行なっている。新しいチャレンジを行ないたいエンジニアにとっては、非常にやりがいのある職場といえそうだ。