いま注目の「トータル・エクスペリエンス」を詳しく解説
この記事では用語の意味だけでなく、背景や構成する4つのエクスペリエンス、活用するメリットも含め、トータル・エクスペリエンスについて詳しく解説します。
この記事では用語の意味だけでなく、背景や構成する4つのエクスペリエンス、活用するメリットも含め、トータル・エクスペリエンスについて詳しく解説します。
知識・情報
2022/09/22 UP
- データ活用
2020年代に入り、「トータル・エクスペリエンス」という言葉を耳にするようになりました。令和のビジネスで先陣を切りたいならば、「トータル・エクスペリエンス」の意味はぜひ知っておきたいもの。一方でどのような意味なのか、特に「何をもってトータルと見るのか」という点を気にする方も、いるのではないでしょうか。
この記事では用語の意味だけでなく、背景や構成する4つのエクスペリエンス、活用するメリットも含め、トータル・エクスペリエンスについて詳しく解説します。
トータル・エクスペリエンスとは
トータル・エクスペリエンスはビジネス戦略の一つで、「TX」と略されます。ガートナージャパンは、2022年における「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の一つに挙げています。
TXは後述するUX、CX、EX、MXといった、4つのエクスペリエンスを相互に連携することが特徴。さまざまなIT・デジタル技術を活用し、顧客はもちろん従業員の満足度も高めます。企業価値を高める効果も期待できるでしょう。顧客と従業員・企業との間にWin-Winの関係を築けるため、安定した経営にも寄与します。
企業間の競争がますます激しくなっている時代において、TXは企業の成長を加速し競争に勝ち抜くうえで重要な戦略です。
トータル・エクスペリエンスが求められる背景
トータル・エクスペリエンスは、なぜ求められるようになったのでしょうか。それを解き明かすためには、背景を知ることが重要です。ここでは3つの項目を取り上げ、TXが必要とされる理由を考えていきましょう。
一層の顧客満足度向上が求められている
企業活動において、顧客満足度の向上は収入や利益を左右する重要なポイントです。ガートナー社が2021年8月、日本で働く従業員や経営者に行なった調査結果によると、「顧客満足度を高める」ことを重要視する方は全体の33.5%にのぼります。
一方で、すでに多くの企業が顧客満足度向上に取り組み、厳しい競争に勝ち抜こうとしています。顧客のニーズを確認しないまま企業の思い込みで取り組んでも、業績改善にはつながりません。
顧客満足度の向上と業績アップを実現するためには、顧客の声に対して真摯に耳を傾けることが不可欠。リアルとインターネットそれぞれについて、取引の過程全体にわたり満足を得られるよう、工夫を行なうことが欠かせません。
ITやデジタル技術を活用したアプローチが可能となった
IT化やデジタル技術の進化も、トータル・エクスペリエンスが求められる背景の一つです。いまや購買やサービスの活用に、Webやスマートフォンはよく使われています。以前はイメージがつかみにくかった服の試着も、AR(拡張現実)やMR(複合現実)の活用により、画面上で行なえるようになりつつあります。それだけでなく、店内に入って買い物をしているような雰囲気も作ることが可能です。
実際に来店しない方に対しても満足度の高い対応を行なえるかどうかは、ときに雌雄を決する決め手となる場合があります。業界をリードする立場であれば、もはやITやデジタル技術の活用を避けることはできません。
従業員の満足度向上も重要
高い顧客満足度や良い顧客体験を提供するためには、従業員も満足して働く職場であることが重要です。多くの方が働きたいと思う職場では意見が活発に交わされ、創意工夫も絶えず行なわれています。職場を改善したいという意識も高まり、自主性や責任感も大きくなるため、売上や利益の増大という良い結果を得やすくなります。
上記の効果を得るためには、貴社が魅力的な職場である、または働くことにベネフィットを感じることが必要です。今後貴社が発展するためには、従業員の満足度向上も欠かせません。
トータル・エクスペリエンスを構成する4つの要素
今後ますます重視されるトータル・エクスペリエンスは、以下に挙げる4つの要素で構成されます。
・ユーザー・エクスペリエンス(UX)
・カスタマー・エクスペリエンス(CX)
・従業員エクスペリエンス(EX)
・マルチエクスペリエンス(MX)
いずれも、今後のビジネスに重要な影響を与える項目です。それぞれについて、詳しく確認していきましょう。
ユーザー・エクスペリエンス
ユーザー・エクスペリエンス(UX)は製品やサービス、サポートの利用を通じて感じた体験を指します。以下の感想は、代表的な例です。
・快適に使えてうれしい
・感動した
・心地良い体験ができた
・使いにくい
・担当者にいらだちを感じる
・なかなか電話がつながらず、嫌になった
UXは購買や契約、サポートなど、場面ごとに異なります。「製品の質は最高だが、サポート窓口はいまいち」といった、相反する感想はあり得ます。
カスタマー・エクスペリエンス
カスタマー・エクスペリエンス(CX)は、製品の購入やサービスの導入における、一連の体験です。1つの取引に対し、1つのCXが対応します。他の方に対して「あの会社のサービスは○○」といった話の内容は、まさにCXです。この点で、フェーズごとに複数の体験や感想を持つ「ユーザー・エクスペリエンス」とは異なります。
CXを上げるためには、単に良い製品やサービスを提供するだけでは実現できません。販売サイトのUIや充実したサポート体制、親身になって対応するスタッフなど、人に関わる対応の充実も重要です。
従業員エクスペリエンス
UXやCXは顧客に対する取り組みですが、従業員エクスペリエンス(EX)は従業員が職場で体験するすべての項目を指します。給与や業務内容はもちろん、職場環境や福利厚生、裁量範囲の広さ、スキルアップ、多様性なども挙げられます。
「人は城、人は石垣、人は堀」といった言葉もあるとおり、省力化が進む現代でも事業運営に人は欠かせません。事業拡大をしたくても人が集まらなければ、衰退を余儀なくされます。「従業員は、会社の命令に従わせられる人材」という時代は、過去のものとなりました。
生産年齢人口の減少が進む時代、優秀な人材は各社で取り合いとなります。一人でも多くの人が貴社を選んでもらうためにも、良いEXを実現できる環境づくりは欠かせません。
マルチエクスペリエンス
マルチエクスペリエンス(MX)は既存の技術を組み合わせて、多種多様な体験を行なう手法です。一例として注文をインターネットで受け付け、製造状況や配送状況を追跡できるサービスが挙げられます。
またインターネット上に仮想のショッピングモールをつくった事例では、来店者が画面上で自由に動き回り商品を選べます。好みの商品があれば、そのまま電子決済で支払いが可能です。現地に行かなくてもショッピングを体験できることから、アフターコロナで求められる非接触の実現にも貢献する手法といえるでしょう。
トータル・エクスペリエンスに取り組む3つのメリット
トータル・エクスペリエンスに取り組むことで、企業には多くのメリットが得られます。ここからはおもな3つの項目を取り上げ、どのような効果が得られるか確認していきましょう。
製品やサービスの品質が向上する
トータル・エクスペリエンスは以下の効果をもたらし、製品やサービスの品質向上に貢献します。
・より現実にフィットした形で購入・契約でき、返品のリスクを下げられる
・快適なショッピングや契約が可能。顧客満足度を上げられる
・社内の風通しが良くなり、顧客の声が届きやすくなる
・無理のない生産が可能。良質な製品を継続して提供できる
よりユーザーにフィットした商品やサービスを提供できるため、貴社の競争力も高まることでしょう。
働きやすい企業となり、離職率の低下と生産性の向上が期待できる
トータル・エクスペリエンスは、従業員にも効果をもたらします。「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、働きやすい環境としかるべき待遇を提供できるでしょう。この結果、以下の効果が期待できます。
・離職率が低下する
・応募者が増加し、優秀な従業員を採用できる
・仕事にやりがいを感じられるため、能動的に行動する従業員が増える
・部門間の連携をしやすくなる
従業員の創意工夫により、生産性の向上を図れます。また離職率の低下により、新しく入った従業員の育てがいにつながることも見逃せないメリットの一つです。社内教育に力を入れることで、会社全体のスキルアップも期待できます。
業績や企業価値、企業イメージが向上する
上記の取り組みにより、「良い製品やサービスを、創意工夫を凝らして提供する」ことが可能です。部門間の連携により、マーケットの要望に沿った製品やサービスも開発しやすくなるでしょう。顧客満足度の向上を得られるため多くの顧客から支持され、業績向上を実現できます。
加えて近年では、従業員への対応も会社選びのポイントに挙がっています。従業員を大切にすることは、企業のイメージアップにつながります。企業価値の向上にも寄与することでしょう。
トータル・エクスペリエンスを実現し、競争に勝ち抜こう
これからの時代、ビジネスの成功にはトータル・エクスペリエンスの実現が欠かせません。そもそも従業員が満足して働いていなければ、顧客に対する良いサービスもできません。人口減少社会で高い顧客満足度を得るためには、ITやデジタル技術を積極的に活用し、従業員の持つ特性を活かした事業運営が重要です。
競合他社に勝ち抜くためにも、すべての関係者に満足してもらえる事業運営を目指しましょう。