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【防災とエンジニア】ロボットの活用と今後注目されるテクノロジーについて(後編)

防災分野で活躍するテクノロジーについて、防災ロボット研究の第一人者である田所諭教授にお話をうかがいました。

【防災とエンジニア】ロボットの活用と今後注目されるテクノロジーについて(後編)

防災分野で活躍するテクノロジーについて、防災ロボット研究の第一人者である田所諭教授にお話をうかがいました。

知識・情報

2022/10/20 UP

火事や地震、津波など、世界中で大規模な災害が頻発しています。人々の防災・災害への関心は年々高まっており、さまざまな防災用品が登場し、またそれを常備する家庭も増えました。

今、こうした状況を受けて、テクノロジーを防災に活かすための取り組みが注目されています。防災分野には多種多様なテクノロジーが活用されていますが、実際にどのような場面でどのような技術が使われているかは、あまり知られていません。

この記事では、こうした防災分野で活躍するテクノロジーについて、防災ロボット研究の第一人者である田所諭教授にお話をうかがいました。
(インタビュアー・サクラサクマーケティング株式会社CTO山崎好史)

田所 諭(たどころ・さとし)

田所 諭(たどころ・さとし)

東北大学大学院情報科学研究科教授。
1984年東京大学工学系大学院修士課程修了。1993年神戸大学助教授などを経て、2005年より現職。

2014〜2018年に内閣府ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)「タフ・ロボティクス・チャレンジ」プログラムマネージャー、2016〜2017年に国際学会IEEE Robotics and Automation Society Presidentなどを歴任。科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。専門分野はレスキューロボットおよびICTの研究開発。博士(工学)、IEEE Fellow。


※本記事は、以下の記事からの続きとなります。
【防災とエンジニア】ロボットの活用と今後注目されるテクノロジーについて(前編)

防災分野で求められるテクノロジーとは

防災・災害対策において「タフ」なロボットが求められている

――防災・災害対策に関わるロボットに求められる機能や性能とは、具体的にどのようなものでしょうか?

田所 私はロボットを「タフ」にすることが重要だと考えています。タフという言葉にはさまざま解釈があると思いますが、私は「災害下などの厳しい条件下でも性能を発揮できること」という意味で使っています。

現在、技術を成立させる条件が限定的で、非常に狭い範囲でしか性能を発揮できないロボットが多く存在しています。例えば、工場内で活用されている画像認識機能は、照明条件や部品の置き方などが工場に合わせて最適化されており、誤判別が0.001%も起きないように調整されています。その技術自体は非常に高度なものですが、条件が変わるとうまく性能を発揮できなくなります。

災害現場で求められる技術は、そういったものとは真反対です。つまり、若干の誤判定があっても構わないので、ありとあらゆる条件で知能を働かせることができるロボットが必要とされるのです。技術の制約をできるだけ取り払い、どのような環境でもある程度の機能が発揮できるのが「タフ」という定義だと思います。

例えば、瓦礫のある環境を調査する必要があるのに「瓦礫があるから向こう側に行けず、人を助けられませんでした」というロボットでは役に立ちません。そうではなく、調査に時間がかかったり、何か問題があったりしたとしても、それを乗り越えて向こう側にたどり着き調査できるようなロボットを開発しなければならないのです。

――福島原発の内部調査については、当時存在したロボットのほとんどはタフさが足りなかったということでしょうか?

田所 そうですね。防災分野におけるロボット研究では、間口を広げることが大切です。ある特定の環境でのみ能力を発揮する技術も価値あるものだと思いますが、そうではないものを作らないといけません。

大学の研究ではトップ性能を求める傾向があります。そのほうが論文も書きやすいため、ある特定の条件下だけで非常に優れた性能を発揮する技術を作ることに一生懸命になりがちです。しかし、そういった技術は条件が変わると良い結果を出すことが難しいのです。防災分野はそうではなく、さまざまな条件で動ける機能が求められています。

現在、防災分野で注目されているテクノロジー

――現在、災害や防災といった分野で注目されている技術はどのようなものでしょうか?

田所 私の専門分野以外では深くお話しするのは難しいのですが、津波の被害予測は素晴らしい技術だと思います。津波自体が来ることは避けられないし、来てしまうとどうしようもありませんが、津波が来ることが事前にわかって避難できれば命だけは助かることができます。

それは、気象の線状降水帯(※4)の場合も同じです。雨が降ることを防止することは今の技術ではできません。しかし、事前に雨が降ることがわかっていれば、命だけは助かるように対策を講じ、財産が失われないように何らかの備えができます。

※4 線状降水帯(せんじょうこうすいたい):次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過、もしくは停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ(約50~300km)、幅(約20~50km)の強い降水をともなう雨域。気象庁天気予報で用いる予報用語

気象庁 クリックして拡大

顕著な大雨に関する気象情報が発表された際には、「雨雲の動き」、「今後の雨」(1時間雨量もしくは3時間雨量)において、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている線状降水帯の雨域を赤い楕円で表示している(画像:気象庁)

その災害についてしっかり調査をし、データを積み重ね、そのうえで予測をする。そしてその予測が、天気予報のような確率で的中するようにする。この技術は非常に素晴らしいものだと思います。

――手法としては、AIやビッグデータなどが使われているのでしょうか?

田所 メディアで取り上げられるAIとは、我々研究者がいう機械学習のことです。機械学習はAIの一分野ですが、たくさんデータを取り込ませることにより学習が進み、だんだん賢くなっていくイメージで問題ないと思います。AIは30年、40年前からさまざまな研究がされてきましたが、最近にいたって非常に有効性・汎用性が高い手法が発見されました。それが元となって、現在の「AIブーム」ができあがったのです。

この技術をうまく活用することは、ありとあらゆる場面で重要となります。ロボットにおいても同じです。私は内閣府のImPACT(インパクト)というプロジェクト(※5)の中の,タフ・ロボティクス・チャレンジの代表責任者を務めさせていただきましたが、そこで開発したロボットにも多くのAI技術を活用しています。

※5 革新的研究開発推進プログラム(Impulsing PAradigm Change through disruptive Technologies=ImPACT):将来の産業や社会に大きな変革をもたらし、これまでの常識を覆す革新的なイノベーションを創出することを目標とする。平成25年度補正予算に550 億円を計上して「独立行政法人科学技術振興機構法」を一部改正し、科学技術振興機構 (JST)に設置された革新的研究開発基金(設置期限:平成30年度末)から経費を支出される時限的な研究開発プログラム

例えば、瓦礫の中は暗闇で、あたり一面コンクリート片で埋め尽くされています。そのため、瓦礫内部の映像を人間が見ても、灰色の世界が広がっているだけで、内部を理解することができません。内部を理解できないということは、要救助者が残されていても捜索する手がかりがないということです。

それに対し、画像処理に機械学習をうまく適用することで、瓦礫内部をある程度ガイダンスできます。「ここに木材の壁がある」「ここはコンクリートになっている」「本が落ちている」などの情報を、ロボットが人間に教えることができるのです。手がかりがあれば、救助の専門家は人間の残されていそうな場所を推測できます。そういった手がかりをもとに、救助隊の方がAIのサポートを受けながら、要救助者を探していくことも可能です。

また、音声処理を活用することで、瓦礫の中で非常に微かな人の声だけを選択して聞くこともできます。周囲のさまざまなノイズをすべて消して、ある特定の方向から聞こえてくる音だけを、あるいは人の声だと思われるものだけを強調するという特殊な技術です。この技術を使うことにより、要救助者が残されていそうな方向や、要救助者の言葉を知ることができます。音声の内容を理解するのは人間ですが、そのために必要な情報を取得できるのです。

現在の音声認識技術は、瓦礫の中などの困難な状況下で正確な認識ができるほどには育っていませんが、ロボットができない部分は人間が補えば良いのです。つまり「人間と技術とがコラボ・タイアップすることにより、人命救助という重要なミッションを果たしていく」ことが、今求められている方向性だと思います。

――いわゆるディープラーニング(※6)という技術ですね。田所先生が災害ロボットの研究をスタートした1995年には、ディープラーニングという言葉は登場していなかったと思います。研究を進めるうちにディープラーニングが突然登場して、いきなりさまざまな課題が解決していったのでしょうか?

※6 ディープラーニング:音声の認識や画像の特定、識別、予測など、人間が行なうタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法の一種

田所 救助ロボットの世界は、さまざまなテクノロジーを集めてきて、それをシステムインテグレートすることにより解を導き出していく分野です。その開発の時点で最も役に立ちそうな技術をトライし、不足があれば追加で技術開発を行ない、ロボットに搭載していくアプローチになるのです。

従来から映像の取得やパノラマ映像の作成などは研究され、音声を聞き取り音の方向を識別することもできました。AIの発展により、さまざまな技術の精度が非常に向上し、プロフェッショナルの目から見て使い物になるレベルまで育ちつつある状況になっています。

それはディープラーニングに限りません。例えば、10年前のドローンは能力が低く、少々の風で不安定になり、機体も大きく重たいので、現在のように便利に使えるものではありませんでした。そのため、火山が噴火して数キロ先に調査しに行くといった大規模ミッションだけで活用されていました。今ではドローンは入手しやすく素人でも操作できるものになり、防災分野の研究者の多くもドローンを活用していますし,災害現場でもありとあらゆるところで使われています。

ドローンの活用が進んだのは、テクノロジーの進歩だけでなく、商品として非常に安価に購入できるようになったことも大きく影響しています。商品が普及したことで、それを活用するための技術も成熟してきたのです。

――実際に使われることで、それを応用する技術も進歩したわけですね?

田所 そうですね。また、上空から撮影した映像を使った3次元マップも、かなりの精度でできるようになっています。昔から研究されていた分野なので、ある程度はこれまでも実現できていましたが、今は小さなパソコンレベルで手軽に行なえるような状況になっています。

現在、建設業者の多くは、現場を調査する際にドローンを活用しています。防災や災害対策の観点では、土砂崩れなどの災害が起きた際、現場の状態を3次元データにすることで土砂の量を知ることができるんです。土砂の量がわかれば、土砂を運び出すために必要なトラックの台数もわかり、土砂を運び出すことができるようになります。要するに、土砂の量がわかることで工事計画が立つんです。

ドローンでのデータ収集ができるようになり、さまざまな分野でドローンが活用されるようになりました。それによって、防災技術全体が高度化しているといえます。

――データ収集は徹底的にテクノロジー化されていて、それによってほかの技術も高度化しています。

田所 おっしゃるとおりで、ドローンもロボットの一種ですが、ロボットと他の手段との違いは「動く」ということだと思います。工場やプラントにある計器やカメラは据え付けられており、動くことができないので限られた情報しか収集できません。それに対して、ロボットやドローンは、動き回ってセンサーを動かすことができるので、空間的に調べることが可能です。

例えば、錆のある橋の調査では、月に一回程度の間隔でドローンによる調査を行なうことで、経年変化で錆がどのように進展しているかを記録することができます。いちから人間が調査するよりも短時間に、かつ位置情報も加えたデータを蓄積できるのです。蓄積したデータをもとに、メンテナンスや工事の判断も可能となります。もしデータがなければ、根拠があいまいなまま工事などの判断を下すことになってしまいます。

ドローンが蓄積したデータがあることで、本当にメンテナンスや工事を実施すべきかを判断でき、何かが起きる兆候がある場合は事前に対策を講じることもできます。できるだけ安価に済むような対策を講じたり、延命したりすることも可能になるのです。このような観点から、ロボットやドローンは災害予防のためにも重要な技術といえるでしょう。

防災の観点から今後発展が望まれるテクノロジーとは

今後、防災分野で成長していくテクノロジーとは?

――今後、防災に関わるテクノロジーについて、どの分野が伸びていくとお考えですか?

田所 どの分野が成長していくかは、おそらく「どういった災害がよく起きるのか」が関わってくると思います。今地球温暖化にともなって多くの問題が起きているので、この分野のテクノロジーが伸びてほしいです。

ただ、地球温暖化に関する課題に対してロボットやドローンがどういったことができるのかは、現段階では大きな問題があります。つまり、何をすれば良いかがわからない、有効な活用方法がまだ見つかっていないというのが今のところの状況です。

私の防災ロボット研究は、地震で倒壊した瓦礫内部の調査がスタートポイントになっており、これまでもさまざまな取り組みをさせていただきました。そして今、瓦礫内を調査するようなミッションについては、大きなイノベーションが起きようとしています。

防災ロボットには、さまざま技術が使われています。瓦礫内に潜り込んで動くための運動性能、センシング技術、センサーの情報を統合して何が起きているのかを推測するビッグデータやディープラーニングに関係する技術。さらに、それらをある程度自動的に行なうための技術です。いずれも重要な技術で、なかでもデータ関係の技術はこれまでも日進月歩で成長しており、頼もしい存在になってきています。

防災ロボットが抱える大きな課題は「動く」ということです。「過酷な環境下でも動き回れる技術」はなかなか向上してきませんでした。ドローンは動くという機能が飛躍的に向上したのですが、瓦礫のような環境で動き回れる技術が思うようにうまくいかないのが、これまでの研究での課題でした。

その課題に対して、「ソフトロボティクス」という分野の研究が非常に伸びてきています。やわらかい機械を作ることにより、今までできなかったことができるようになるというパラダイムです。ソフトロボティクス技術を活用することによって、これまで難しかった場所や条件でもロボットが動くことが可能になる可能性が見えてきつつあります。

▼田所論教授が考える「防災ロボット」の未来

Q.防災分野で今後伸びるテクノロジーは?
A.ソフトボロティクス(ソフトロボットを扱うロボット工学。ソフトロボットは柔軟性のある素材を用いた、生物のような柔らかい動きを再現できる)。

Q.防災ロボットに求められる技術と課題
A.技術
・瓦礫内に潜り込んで動くための運動性能
・センシング技術
・センサーの情報を統合して何が起きているのかを推測するビッグデータやディープラーニングに関係する技術
・上記の技術をある程度自動的に行なうための技術
A.課題
・過酷な環境下でも「動き回れる技術」が向上していない
・ソフトロボティクス技術を活用すれば、難しい場所や条件でも「動く」ことが可能

――田所先生は、ソフトロボティクスの分野が今後伸びていくと考えていますか?

田所 ソフトロボティクスは、まだ登場して間もない「よちよち歩き」の技術です。しかし、10年後にはこの分野の研究が非常におもしろいことになっているのではないかと考えています。研究者によって賛否ある部分かもしれませんが、私はソフトロボティクスの成長に注目したいと思っています。

――ソフトロボティクスの研究には、どのような方が携わられるのでしょうか?

田所 災害ロボットの研究者はもちろんですが、ソフトロボティクス自身のコンポーネント技術の研究をされている方々です。現在もさまざまなソフトロボティクスのプロジェクトが推進されています。例えば、物体をハンドリングすることや、モビリティに関する研究です。

従来、ロボットは硬いパーツを組み合わせて作られていましたが、ソフトロボティクスではぐにゃぐにゃしたボディ全体が自在に変形することにより機能を果たすといったものです。これは災害ロボットにも活かせる特性といえるでしょう。

例えば、狭い場所に潜り込むロボットは、柔軟な機械で構成することでより良い性能のものを作ることが可能です。ソフトロボティクスは、瓦礫の中を調べるような運動性能が求められる研究において、非常に大きな力を発揮していくのではないかと思います。

ソフトロボティクス技術を活用することにより、これまでロボットが侵入できなかった場所にも入れるようになる――。つまり、これまで調査できなかった場所も、比較的容易に調査できるようになるということです。

防災分野に関心のあるエンジニアへ向けて

――エンジニアが防災分野に関わるためには、どのようなスキルが求められるのでしょうか?

田所 防災や災害は、関係するサイエンスやテクノロジーの範囲が非常に広い分野です。例えば、工学部でいうと、機械、電気や情報、化学、建築土木など、ありとあらゆるところが全部関係してきます。材料科学の研究も、回りまわって防災に大きく寄与することがありえるのです。逆に、そういったものが求められています。

皆さんには、自分たちの研究や商品開発が「何らかの形で防災に役立つのではないか」ということを考え続けてほしいと思っています。多くの商品は、直接防災に役立つことは少ないかもしれません。でも、そういった視点を持つ方がたくさんいることで、その中からソリューションが出てくることもあります。

防災専用の商品のマーケットは、それほど大きくはありません。そのため、普段の生活で使っている商品の中に、少しだけでも防災に役立つ機能が含まれていると、それがいざというときに大きな力を発揮します。例えば、アウトドアで使うポータブルバッテリーや、電気自動車のようなものです。防災のために作られた商品ではありませんが、電気の供給などは大規模災害で大きな役割を果たしてくれます。

つまり、一見して防災・災害と直接関係がないようなものであっても、使い方次第で防災に役立つ可能性があるのです。みなさんには、そうしたことをちょっとだけ考えてほしいなと思っています。「少しだけ役に立つ」ということをたくさん積み重ねることは、SDGs(持続可能な開発目標)や仙台防災枠組(※8)などの世界的な取り組みに貢献することとイコールになると私は考えています。

※7 仙台防災枠組:2015年から2030年までの15年間を対象とする国際的な防災取組の指針

――大きな研究をするとなると、どうしても予算の問題が壁になります。防災技術の進歩・開発を進めていくためには、民間の研究機関や企業の力も合わせて、少しずつ成長させていくことが重要です。

田所 そのとおりです。国からの予算も限られていますし、民間企業も投資を回収できる見込みが立たないとなかなか防災分野に参入することはできません。でも、それでは「誰もできない」ということになり、防災分野の成長は見込めなくなってしまいます。ですから、皆さんには「そうではない形」で、少しだけ貢献する意識を持っていただけると良いかなと思います。

まとめ

今回、防災分野で活躍しているテクノロジーについて、田所諭教授にお話をうかがいました。

阪神・淡路大震災が起きた1995年には、防災とロボットを関連付けて研究する人はいませんでした。田所教授も震災を経て、自分の研究と災害との間にまったく関係性がなかったことに気付き、「子どもの頃に思い描いていたロボットは人を助ける存在だったはず」という思いから防災ロボットの研究をスタートされたそうです。

災害現場で必要とされるのは、「タフ」な技術だと田所教授は提唱しています。タフとはただ単に頑丈であるという意味ではなく、たとえ災害下という厳しい条件下であっても、その技術を役立てて性能を発揮できることを指しています。

防災ロボットは、さまざまなテクノロジーをいかに組み合わせて,目的を果たすことができるかがポイントです。その時々に存在するベストの要素技術を組み合わせ、不足があれば新たに開発をすることを積み重ねていくのです。そのため、一見して防災とは関係ない技術であっても、使い方次第で防災分野の成長を飛躍的に促すこともあるといいます。

災害時には、直接防災と結びつかないような商品・技術が、高い効果を発揮することもあります。たとえ直接防災の研究ができなくても、「自分たちの研究や商品開発が、何らかの形で防災に役立つのではないか」ということを考え続けること。そうした小さな意識の積み重ねが、災害時に大きな役割を果たすのだと、田所教授は提言しています。