Web3(Web3.0)とは?特徴や注意点について解説
この記事では、社会を大きく変える可能性もあるWeb3の概要とともに、特徴やリスクについても触れていくので、ぜひ最後までご覧ください。
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知識・情報
2022/07/08 UP
- 技術
近年、新しいインターネットの概念である「Web3(Web3.0)」が注目されています。Web3は「分散型」のWeb形態ともいわれており、昨今のインターネットが抱えるさまざまな課題を解決する手段の一つとして期待が高まっています。
この記事では、社会を大きく変える可能性もあるWeb3の概要とともに、特徴やリスクについても触れていくので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、2022年現在では「web3」「WEB3」など、表記が統一されていませんが、本項では「Web3」で統一して表記します。
Web3とは
Web3はインターネットの比較的新しい概念で、ブロックチェーンの技術などを背景にギャビンウッド(Gavin Wood)氏によって提唱されました。2022年現在ではトークン(FT=Fungible Token)、NFT(Non Fungible Token)、DAO(Decentralized Autonomous Organization)なども絡めてWeb3と表現する場合があり、定義が完全に定まっている言葉とはいえません。
Web3は、多くの場合、「オープン」「高い透明性」の2つとともに、分散を意味する「Decentralized」という言葉と結びつけて語られます。そのため、Web3=分散され透明性が高くオープンなWeb、といった意味合いが強いといえるでしょう。
Web3とDecentralized
現在のインターネット環境は、GoogleやApple、Amazonなどの大企業によって管理される「中央集権型」になっているといわれています。ユーザが何かのサービスを利用する際には、管理者側の企業から個人情報の提供を求められます。
しかし、中央集権的なインターネット環境では、プライバシーの問題や、情報セキュリティに関する懸念が生じているのが現状です。管理者側の企業がサイバー攻撃に遭った場合、大量の個人情報が流出する危険性もあるでしょう。そもそも、一企業が知る必要のない個人情報を取得できてしまうという懸念もあります。
しかしWeb3では、企業が運営するサイトなどに、完全な個人情報を提供することなくシステムが利用できます。後述するウォレットなどが代表的なもので、ウォレット抜きには語れないほど重要なものです。
Web3とウォレット
Web3を象徴するものの一つに、ウォレットが挙げられます。ウォレットは、その名のとおり「財布」という意味ですが、Web3の世界では情報を管理するベースとなるものです。2022年6月現在で、TrustWalletやMetaMaskなど複数のウォレットアプリが提供されています。
初期のWebで必要だったIdやPasswordは、ソーシャルログインの機能などによって不要になりました。しかしこれは、大手企業のシステムに個人情報を紐づけることで実現できていることです。
Web3では、ウォレットをサイトにつなぐことで利用可能になります。ウォレットは自分で管理する必要がありますが、逆にいうと情報の自己管理が可能になるため、不必要に情報を提供する必要がなくなるのです。
Web3とブロックチェーン
Web3を語る上で欠かせないものの一つが、ブロックチェーンです。ブロックチェーンは分散型台帳ともいわれる、改ざんが難しい形でデータを分散的に管理する仕組みです。ビットコインなどで利用されている技術でもありますが、Web3を支えるインフラ的な存在とされています。
ブロックチェーン上のデータは、誰でも閲覧可能です。データは常に公開されているものの、不正を行なうことが難しいため、オープンで透明性の高いWeb3のインフラとしてとても重要な役割を果たしています。
Web3の文脈で語られる用語
上述のとおり、Web3は定義が定まっておらず、さまざまなキーワードとともに語られているのが現状です。全体の理解のため、ここでは重要な用語について触れていきます。
スマートコントラクト
ブロックチェーン上で、コントラクト(契約)を実行する仕組み(プログラム)です。スマートコントラクトを実行するチェーンとして有名なものにイーサリアムがあり、ブロックチェーンへの書き込み・読み出し・トークンの転送などを担当します。
スマートコントラクトは、ソースコードの大部分が公開されているため、オープンで透明性も高いことが特徴です。
※Etherscanで閲覧可能なソースコードの例(CryptoPunks)
スマートコントラクトを活用した例としては、DeFi(Decentralized Finance)が挙げられます。AとBという2つのトークンを交換する際、通常であれば銀行などの中央集権的な組織が仲介することで実現していました。
しかしDeFiでは、この交換をスマートコントラクトが担当します。スマートコントラクトを信頼したユーザが、あらかじめAとBのトークンを預け入れておくこと(流動性提供)で、AとBの交換をスマートコントラクトで実現することが可能です。
後述するDAOでは、このスマートコントラクトが資産配分のために重要な役割を担うと考えられており、Web3とスマートコントラクトは密接に関係しているといえます。
DApps
上述のように、スマートコントラクトを使用することでトークンの交換など、本来相手を信頼しないとできないような仕組みをブロックチェーン上で作成することができます。こうしたアプリケーションをDApps(Decentralized Applications)と呼びます。
分散型アプリケーションと呼ばれるDAppsは、
・スマートコントラクトは大部分の処理が閲覧可能なため、オープンである
・ロジックの変更が難しいスマートコントラクトを利用することで、透明性が高い
・ブロックチェーン上で処理されるため、分散性が高い
などの特徴を持っており、Web3では重要な役割を担っています。
DAO
DAOはDecentralized Autonomous Organizationの略で、分散型自立組織と呼ばれています。その名のとおり、個々がプラスとなる行動を自律的にとることで、組織やプロダクトを成長させていくものとされています。
DAOにおいては多くの場合、組織の資産がスマートコントラクトによって管理されます(=ブロックチェーンに刻まれる)。誰かの独断で好き勝手に使うことはできず、仮に不正な支出があった場合でもブロックチェーンの情報をたどって追跡することができるため、よりオープンで透明性が高い組織になるでしょう。
DAOは、将来的に株式会社のように組織の一形態となるとされているほど、Web3において重要な役割を担うと考えられています。
NFT
NFTはNon-Fungible-Tokenの略で、非代替性トークンと略されます。通常のトークンは1枚1枚が同じ=同じ価値(代替可能)なのに対して、NFTは1枚1枚が同じ価値ではないことが特徴です。
そのため、NFT1枚に対して、画像や音楽などを紐づけて、トレーディングカード・ゲームアイテム・アートのように扱うこともあります。
なお、現状多くのNFTは、ERC721という規格に沿って作成されています。その場合、実際ブロックチェーンに刻まれているのは、画像ではなくJSONデータを格納しているURIであることもあります。IPFSなどを活用していない場合、画像を消したり、あとから差し替えたりすることも可能です。
※NFT Azuki のEtherscanでの公開データの確認例
NFTは、チケットや証明書としても活用され始めており、Web3の世界では現実世界との橋渡し的な部分を担う可能性もあります。
Web3のリスク・注意点
Web3はまだまだ不確定要素が多いものです。Web3でプロジェクトを走らせたいと考える場合、リスクについては理解しておく必要があります。具体的なリスクや注意点について、見ていきましょう。
法整備が進んでいない
Web3は新しい概念であり、実現させるための法整備はまだほとんど進んでいません。
2022年現在では、NFTなどを中心に法整備が進められていますが、DeFiやトークン回りの法律については追いついていないのが現状です。
スマートコントラクトはプログラムである
Web3で多く使われるスマートコントラクトはプログラムです。そしてプログラムにはバグが含まれる可能性があります。特にトークンを扱う系のスマートコントラクトの場合、脆弱性を突かれると資金を全部抜かれてしまう場合もあるため、必ず自分で確認する必要があります。
利用上のトラブルは自己責任
Web3では、個人情報はすべて自己管理しなければなりません。そのため、万一トラブルが発生した場合はすべて自分自身で対処する必要があります。
例えば、ビットコインなどを送金する際、宛先を間違えてしまう(通称セルフGOX)などが発生した場合、銀行では送金の取り消しができるかもしれませんが、Web3ではそのような対処が難しいでしょう。
また、上述のようにスマートコントラクトの脆弱性を突かれて資金が流出してしまった場合も、復旧が難しい可能性があります。
Web3では「オープン」「高い透明性」「分散」の3つが重要
Web3では「オープン」「高い透明性」「分散」の3つが重要になると考えられています。まだまだ一般的とはいえないものの、ウォレットやブロックチェーンなどの技術の発展と共に、徐々に日常生活に入り込んできています。
Web3は新しい概念でかつ複雑なため、多くの人が日常的にウォレットを使用する世界になるにはまだまだ時間がかかるでしょう。こうしたなかで、日本ではどのような法律が整備されていくのか、現状持ち上がっている課題にどう向き合っていくのかなど、今後の動向に注目が集まっています。