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業務自動化の成功要因:目的を明確にする重要性

株式会社パソナ ローコード開発チームの深井亘です。 本記事ではPower Automateの事例を取り上げて、自動化を成功に導くために目的を明確にすることの重要性についてお話しいたします

業務自動化の成功要因:目的を明確にする重要性

株式会社パソナ ローコード開発チームの深井亘です。 本記事ではPower Automateの事例を取り上げて、自動化を成功に導くために目的を明確にすることの重要性についてお話しいたします

知識・情報

2025/01/17 UP

問題提起:目的が曖昧な自動化のリスク

業務自動化は、効率化や生産性向上を目指す上で重要な取り組みとして広がりを見せています。しかし、導入の初期段階でつまずき、思うような効果を上げられないケースも少なくありません。期待する成果が得られない要因のひとつは、目的が曖昧であったり、不正確であったりすることです。目的が曖昧または不正確な状態では、最適な手段や技術を選ぶことが難しくなり、期待した結果に結びつかないことがあります。

自動化を成功させるためには、まず具体的な目的を設定し、それに合った手段や技術を選ぶことが不可欠です。何を達成したいのかを明確に定義することで、自動化の効果を最大限に引き出すことができます。

モデルケース:提出物管理の課題

仮想のモデルケースを使って解説します。下記のケースはMicrosoft Teamsを活用してチーム内の提出物管理を効率化しようとした例です。このケースを通じて、目的が明確でないまま自動化を進めることのリスクについて考えていきましょう。

ケース

背景

あるチームのリーダーは定期的にチームメンバーに提出物の依頼をします。リーダーは提出物管理の業務を楽にするために、社内で利用可能なツールを活用して提出状況を可視化しようと考えました。

リーダーがとった施策

リーダーが思いついたアイデアはMicrosoft Teamsの「いいね」機能を活用して提出状況を管理する方法です。具体的な運用は以下の手順で行われました。
1週間の出勤届を提出してください。(期限:月曜10:00)提出が完了したらこの投稿にいいねをしてください。

 
運用手順
1.リーダーがMicrosoft Teamsでメンバー全員に向けて提出依頼を投稿する
2,提出が完了したメンバーは提出依頼の投稿に対して「いいね」をする
3.リーダーは投稿についた「いいね」を確認して誰が提出したのかを把握する
4.リーダーは未提出のメンバーにメンションを送って提出の催促をする
 
この方法は一見すると提出物管理の効率化に有効な手段に思われます。しかしながらこの方法には問題があります。
 

この施策の問題点

この方法では提出が完了したメンバーを可視化することに成功しています。しかしながら、未提出者を特定して提出の催促をする作業は手動で行う必要があります。この作業の具体的な実施内容は下記の通りです。この作業は煩雑であり、リーダーの負荷が高いことがわかります。

未提出者への催促作業
1.提出状況の確認
 投稿についた「いいね」を手動で確認して、誰が提出を完了したのかを把握する。
 投稿に「いいね」をしたメンバーの名前を手動でリスト化する。
2.未提出者の特定
 全メンバーのリストと「いいね」をしたメンバーのリストを照らし合わせて未提出者を特定する。
3. 未提出者への催促
 未提出者に個別にメンションを送って提出を催促する。
 例: 「○○さん、提出期限が近づいていますので提出をお願いします。」
4. 再確認の実施
 期限が近づいた段階で投稿を再確認し、未提出者が残っていないことを確認する。
5.全員の提出が完了したことを確認
 全員が提出を完了するまで、手順1から4を繰り返す。
 

問題の原因:目的の設定が不十分

このケースでリーダーは提出物管理を楽にするための施策としてMicrosoft Teamsの「いいね」を使った施策を行いました。しかしながら、この方法で実現できることは「提出完了したメンバーの見える化」です。提出が完了したメンバーを特定しても提出物管理は楽になりません。この問題が発生した原因は提出物管理の本来の目的を明確にしなかったことです。

提出物管理の本来の目的は「期限内にすべてのメンバーに提出を完了させること」です。
つまり、本来自動化するべきことは「未提出のひとを洗い出して催促を行うこと」です。

解決策:目的を中心としたアプローチ

1. 目的の再定義

リーダーの目的は下記の通りです。
・期限内にすべてのメンバーに提出を完了させる
・未提出者への催促作業の負荷を軽減する
 

2.手段の見直し

目的達成のために自動化する作業を選定します。
・未提出者を特定する作業
・未提出者に提出を催促する作業
・メンバー全員が提出完了したことを確認する作業
 

3. 技術的な課題への対応

自動化するための技術的な課題を洗い出します。

・技術的課題1: 「いいね」をしたメンバーを取得する方法
 解決策: Power AutomateのMicrosoft Teamsコネクタを使って特定の投稿につけられた「いいね」を取得する。

・技術的課題2: 未提出者を特定する方法
 解決策: Power Automateの関数を使って取得した「いいね」のリストとチームメンバーのリストを機械的に比較して「いいね」をしていないメンバーを特定する。

・技術的課題3:未提出者へメンションを自動送信する方法
 Microsoft Teamsコネクタを使って、指定したメンバー宛てに提出を促すメッセージをつけてメンションを自動送信する。

結果(解決)

今回の目的達成のために下記のPower Automate フローを作成しました。
 
フロー概要
・Microsoft Teamsに投稿された提出依頼に対して下記内容のフローを実施する
 ・提出依頼の投稿に対して返信を行う
  ・メンバーの一覧を表形式で表示
  ・表にはメンバーの名前、および「いいね」をした時間を表示
  ・「いいね」をしていないメンバー宛にメッセージ付きのメンションを送信

・Microsoft Teamsに投稿された提出依頼に対して下記内容のフローを実施する  ・提出依頼の投稿に対して返信を行う   ・メンバーの一覧を表形式で表示   ・表にはメンバーの名前、および「いいね」をした時間を表示   ・「いいね」をしていないメンバー宛にメッセージ付きのメンションを送信

この取り組みによって、下記の成果が得られました。
・手動作業がほぼ不要となり、リーダーの負担が大幅に軽減された
・未提出者への催促が迅速化し、期限内の提出率が向上した
 

まとめ:目的を明確にする重要性

自動化を成功させるには、目的を明確に設定してその目的に沿った手段と技術を選定することが重要です。本事例のように目的から逆算してアプローチを設計することで自動化の効果を最大限に引き出すことができます。
 
エンジニアラボをご覧の皆さまへ
業務自動化に取り組む際には、まず目的の明確化を第一歩とし、適切な手段を設計してみてください。この記事が皆さまの課題解決に役立てば幸いです!
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この記事を書いたメンバー
ローコード開発チーム 深井亘
ローコード開発チーム 深井亘