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バイオメトリクス認証とは?認証方式の特徴やメリット・デメリットについて解説

人間の生体情報を用いる認証方式をバイオメトリクス認証と呼びます。指紋認証や顔認証などが一般的に知られていますが、私たちの身近な場所でも多く実用化されています。本記事では、どのような生体情報を用いた認証方式が存在するのか、他の認証方式と比べて何が特徴的なのか解説します。

バイオメトリクス認証とは?認証方式の特徴やメリット・デメリットについて解説

人間の生体情報を用いる認証方式をバイオメトリクス認証と呼びます。指紋認証や顔認証などが一般的に知られていますが、私たちの身近な場所でも多く実用化されています。本記事では、どのような生体情報を用いた認証方式が存在するのか、他の認証方式と比べて何が特徴的なのか解説します。

知識・情報

2022/08/25 UP

人間の生体情報を用いる認証方式をバイオメトリクス認証と呼びます。指紋認証や顔認証などが一般的に知られていますが、私たちの身近な場所でも多く実用化されています。本記事では、どのような生体情報を用いた認証方式が存在するのか、他の認証方式と比べて何が特徴的なのか解説します。

バイオメトリクス認証とは

バイオメトリクス認証とは、人間の身体的特徴を本人確認に用いる認証方式のことであり、生体認証とも呼ばれています。事前に登録された指紋や音声、顔などのデータをもとに照合し、本人確認を行ないます。スマートフォンのロック解除やライブ会場での人の識別、犯罪捜査などさまざまな分野で活用されている技術であり、実際に利用したことがある方も多いでしょう。

認証のシステムを構築するには、あらかじめ対象者の身体的特徴から「特徴量」と呼ばれるデータを抽出し、データベースに保管します。顔など身体の情報を保管されることに抵抗のある方もいるでしょうが、実際に保管されているのは顔写真などではなく、特徴量に変換されたデータです。顔認証であれば、カメラなどで読み取った対象者の顔情報と、事前に保管されているデータで特徴量の比較を行ない、同一人物かどうかを判定します。

バイオメトリクス認証の方式

バイオメトリクス認証で識別する要素は、生理的特徴と行動的特徴の2種類があります。各特徴の内容や活用例について解説します。

生理的特徴から識別するもの

生理的特徴から識別するもの

生理的特徴とは、指紋や顔など本人の身体的特徴そのものを指します。

<指紋認証>

指表面の突起の特徴を識別します。スマートフォンの機能として対応している機種もあり、ロック解除などで利用したことがある方も多いでしょう。指の怪我や摩耗して指紋が薄くなると認識しづらくなるというデメリットがあります。

<静脈認証>

指や掌の血流パターンを識別する技術で、銀行のATMなどで用いられています。身体内部にある血流の情報を用いることから、偽造や改ざんのリスクが低いことがメリットです。高いセキュリティが要求される用途を中心に普及しています。

<顔認証>

目や鼻、口の位置などの要素を識別する技術で、空港のゲート通過などで用いられています。デバイスへ触れなくても認証が可能であること、複数人の顔を同時に認識できることから、多人数が集まる場所で活用されています。

<音声認証>

声の周波数や時間変化などの要素から識別する技術で、スマートスピーカーなどで用いられています。本人の認証に加えて、声で指示を出して音楽を再生する、ニュースを読み上げさせるなどの活用も可能です。

行動的特徴から識別するもの

行動的特徴から識別するもの

行動的特徴とは、人の習慣や動作などの行動パターンを指します。

<スマートフォンの操作>

スマートフォンのフリック入力によるキーストロークデータから本人を識別する技術があります。1台のスマートフォンには複数のセンサーが内蔵されており、画面のタッチパネルや指紋認証センサー以外にも、傾きを検出するジャイロセンサーや加速度センサーなどがあります。センサーを活用して、スマートフォンのスクロール速度や手で持ったときの角度、使う指など、操作の仕方による識別も可能となっています。

この技術を導入すると、スマートフォンの操作中の行動解析で常に本人確認ができるため、パスワードの入力などの手間を減らせると期待されています。またスマートフォンの所有者でない人が操作した場合に、それを検知して動作を止めるなどの活用が考えられるでしょう。

<歩き方>

歩くときの姿勢や歩幅、腕の振り方なども人によって異なります。人の歩き方をモデル化し、生体認証を可能にする研究が行なわれています。この認証のメリットは、カメラによる遠隔画像からも人の識別が可能なことです。

活用例の一つとして犯罪捜査への応用があります。街なかの防犯カメラの映像を容疑者の映像と比較し、容疑者を見つけ出すことが可能となります。また歩き方の特徴から病気の程度や回復具合を判断できる技術の開発も進められており、人の経験に頼らずとも高精度で把握できると期待されています。

バイオメトリクス認証のメリット

バイオメトリクス認証のメリット

生体情報を用いた認証ならではのメリットを3つ紹介します。

パスワード管理の負担が少ない

生体情報を用いて本人確認を行なうため、パスワードを作成・記憶しておく必要がありません。パスワードには文字数が何文字以上という指定や、大文字と小文字、記号を含めることといった制約があるため、作成に困る方も多いでしょう。またセキュリティリスクを考えると用途ごとに異なるパスワードを設定しなければならず、管理の負担が大きくなります。

生体情報であればパスワードを管理する必要がなくなるため、ユーザーの負担の低減につながります。カメラによる顔認証や行動認証などであれば、特別な操作なしで自動的に認証を完了させることもできるでしょう。

セキュリティの向上につながる

本人の生体情報で認証するシステムは「なりすまし」のリスクを低く抑えられます。ただし生体情報の種類によってセキュリティリスクは異なります。

指紋認証はスマートフォンのロック解除などで普及していますが、指紋は触れた場所に残留するため入手や複製がしやすいです。そのためセキュリティ上のリスクは高いといえるでしょう。一方で、静脈認証は体内の血管を識別するため残留することがなく、外部からも見えないためセキュリティに強い認証方式です。

大人数でも素早い認証が可能

空港やイベント会場など多くの人が集まる場所でも、カメラによる顔認証で素早く大勢の人の認証を完了できます。QRコードを読み取る受付システムも普及していますが、こちらは一人ひとりが順番に読みとり機にタッチするため手間が大きく、待ち時間も長くなります。

一度に大勢の人を認証できるシステムであれば、顧客に対応するスタッフの数が少なくても運用しやすいでしょう。システムを導入する側としても人件費の削減や業務効率化といったメリットがあります。また新型コロナウイルスのような感染症対策としても、非接触の認証方式は有効です。

バイオメトリクス認証のデメリット

バイオメトリクス認証のデメリット

ここまでバイオメトリクス認証のメリットを紹介してきましたが、次にデメリットを3つ紹介します。

導入コストがかかる

バイオメトリクス認証を導入する場合、指紋や静脈などの生体情報を読み取る装置、認証データを保存するデータベース、照合用システムなどが必要になります。導入システムや認証の目的などに応じてさまざまなハードウェア、ソフトウェアが必須となるため、導入コストがかかります。

認証の方式によってもコストは変わります。静脈や虹彩を用いた認証は精度が高いですが、コストは高くなりがちです。指紋や声、声紋認証は比較的コストが抑えられますが、認証の精度は低めであり、セキュリティリスクは高くなります。認証の用途や目的に応じて適切な認証方式を選択する必要があるでしょう。

生体情報が変化してしまう

身体の特徴を用いて本人確認を行なうため、外見が変化すると認証精度が落ちてしまいます。例えば、指を怪我すると指紋が読み取りづらくなりますし、整形やメイクをしていると顔認証で識別しづらくなります。また体調が悪くて声が出ない状況では、音声認証で認識しづらくなるでしょう。指紋認証だけでなく顔認証やパスワード入力にも対応させるなど、認証の手段を複数用意しておくことが有効です。

さまざまな体の変化がありますが、特に老化は誰にも避けられません。そのため登録する生体情報は定期的に更新し、データベース上のデータと実際の体の情報に大きなズレがないようにしておく必要があります。

情報漏えい時の対応に手間がかかる

パスワードの文字列とは異なり、人の生体情報は簡単に変更できるものではありません。そのため、情報漏えいが発生した場合は悪用されるリスクが高くなります。漏洩した情報と同じ生体情報を用いる他のサービスの利用も制限せざるを得ないでしょう。認証には別の生体情報を用いるよう変更するなどの対応をしなければなりません。

指紋であれば盗まれたとしても他の指で代用ができますが、顔の情報は1つしかありません。また顔は常に露出した状態であるため、第三者に盗まれやすい情報です。このように生体情報の漏えいはユーザーにとって大きなリスクとなりうるため、個人情報を管理する企業には十分なセキュリティ対策が求められます。

バイオメトリクス認証のトレンド

バイオメトリクス認証のトレンド

近年のバイオメトリクス認証のトレンドについて紹介します。機械学習などのIT技術が向上したことと、新型コロナウイルスがもたらした影響について取り上げます。

機械学習技術の活用

生体情報の照合に機械学習やディープラーニングの技術が活用されています。従来の照合技術にディープラーニング技術を組み合わせることで、特徴量の検出の精度向上や異常データの検知が容易になるなどの効果が得られるようになりました。精度に加えて処理速度も向上しており、実用化につながる技術革新が進んでいます。

ディープラーニングは学習データが多いほど精度が向上します。実際に運用しながらデータを取集・蓄積し、学習を続けることで性能が高まります。現状では従来の認証方式が主流ではありますが、今後はディープラーニングの活用が広がっていくと考えられています。

非接触認証のニーズが高まる

2020年より新型コロナウイルス感染症が流行したことにより、認証の分野でも非接触のニーズが高まっています。指でパスワードを打ち込む形式のような、不特定多数の人がボタンに触れるような認証には抵抗を感じる人も多いでしょう。カメラで行なう顔認証や、手をかざすだけで静脈パターンを識別するような技術の導入が進んでいます。

コロナウイルスの流行のため、自宅の外ではマスクを着用することが一般的になっています。しかし、マスクを着用すると従来の顔認証システムでは認証の精度が低くなってしまうため、一時的にマスクの取り外さなければならない場合がありました。マスクを着けた状態のまま問題なく顔認証ができるように、顔の輪郭や形などからも特徴点を抽出して認証精度を上げる技術の開発が進んでいます。

生体情報という特徴を活かした認証方式

バイオメトリクス認証は人間の身体的特徴を使って本人確認を行なう認証方式のことです。指紋や静脈など生理的特徴から識別するものと、スマートフォンの操作や歩き方などの行動的特徴から識別するものがあります。

生体情報を用いることからパスワード管理の負担が減り、なりすましのリスクも低くなることがメリットです。一方で、生体情報が変化すると認証精度が落ちることや、情報漏えい時の対応には注意が必要です。近年は機械学習技術の活用で精度が向上しており、コロナ禍に対応したシステムの導入が進められています。