ネットワーク設計の基礎|設計〜構築の流れや手順を解説
この記事では、ネットワーク設計とは?の基本的な内容、設計構築の流れを解説します。
この記事では、ネットワーク設計とは?の基本的な内容、設計構築の流れを解説します。
知識・情報
2021/09/06 UP
- 技術
社内で使用するコンピューターや電子機器同士を繋ぎ、最適なネットワーク環境を設計するのがネットワーク設計です。AIやIoT、5Gなど現代のIT技術進化を支えるITインフラを作り上げる「ネットワーク設計」は日進月歩のIT時代には欠かせません。
しかし、ネットワーク設計は聞き慣れない専門用語が飛び交い、なんとなくハードルが高いイメージがある方もいらっしゃるでしょう。この記事では、ネットワーク設計とは?の基本的な内容、設計構築の流れを解説します。
ネットワーク設計とは
コンピューターネットワークはビジネスや公共サービス・娯楽など現代社会に欠かせない存在です。今や「24時間365日、問題なく動いて当たり前」であり、電気・ガス・次ぐ第4の社会インフラとして認識されています。
ネットワーク設計によって、このコンピューターネットワークを機器、LANケーブル・無線などで接続し、データの送受信ができるようにします。接続する機器は、コンピューターだけでなく家庭であれば家電製品やゲーム機、オフィスであれば電話やプリンタ・FAXなどのAO機器などがあり、多種多様な機器が対象です。
なお、ネットワーク設計と一口にいってもどのような環境でどのような機器を設定するのかによって大きく構成が異なります。利用用途や目的などの「要件」に合わせて最適なネットワークを構築するのもネットワーク設計の仕事です。
クラウド・IoT技術の実現はネットワーク設計が不可欠
クラウドとIoT技術の進化を理由に近年ネットワーク設計〜構築・運用までを担う「ネットワークエンジニア」の需要が高まっています。
ひと昔前のネットワークエンジニアといえば、各企業が自前で保有するサーバ(オンプレミス)を中心に保守運用するのが業務内容でした。しかし近年ではAWSやAzure、Google Cloud Platform(GCP)といったクラウドサービスの台頭により自前の社内サーバをクラウドへ移行する企業が増加しています。総務省が発表している令和3年版情報通信白書によると国内企業の約7割が何らかのクラウドサービスを利用していると回答しており、クラウドに絡めたネットワーク設計は今後も将来性・注目度の高い分野です。
また、パソコンやスマートフォンといったITデバイスだけでなく、家電や自動車・センサーやレーダーといった産業機器などのモノ同士を繋ぐ「IoT」技術の活用が進んでいます。IoTでは従来の通信規格だけではなくBluetoothなどの無線系ネットワークを利用することもあり、ネットワーク設計の高いスキルを有するエンジニアの活躍が不可欠です。
ネットワーク設計の流れ・手順
ネットワーク設計は具体的にどのような流れ・手順で進めるのでしょうか。どのようなネットワークを設計・構築するとしても、基本的には同じような流れです。ここからはネットワーク設計の基礎知識として実際の作業プロセスを順に解説します。
手順1. 現状のネットワーク構成を把握する
まずは現状調査です。どれくらいの規模でどのような機器・アプリケーションを使っているのかを明確にします。具体的には導入されている設備・アプリケーションの種類やリソース利用状況が調査対象です。現状調査が不十分だと前よりも通信速度が遅くなった、使い勝手が悪くなったと思わぬ不具合が生じる可能性があります。
また、単純に実態調査を進めるだけでなくネットワーク設計の背景となる現状の問題点、将来的な利用ユーザ数の増減や利用予定のアプリケーションなどの予測も含めて把握することが重要です。
手順2. ネットワーク設計の目的・制約を整理する
次に、ネットワーク設計の「要件」に該当する目的や制約事項を明らかにします。新たにネットワークを設計して実現したい目的やネットワークにどのような要件が必要なのか、事前に留意・対処すべき問題(セキュリティや物理配線常用など)は何かを洗い出す作業です。洗い出した項目を元に、以下のような設計を進めます。
・システム設計:どのようなシステム、機器を接続するのか
・物理設計:ネットワーク機器の配置や配線
・論理設計:各機器がどのネットワークに属するのかといった論理構成
また必要に応じて、上記以外にクラウド設計やサーバ設計などの作業を含むのが一般的です。
手順3. 最適なネットワーク構成を検討する
現状調査と要件整理ができたら、実際にネットワーク構成を検討し、設計書を作成します。このプロセスでは、使い勝手の良さと安定性を両立させるため、検討を重ねていくことになります。いくつかの注意点を理解した上で、要件への落とし込みを進めましょう。
・実現すべき要件は利用者の要望が全てではない
・前プロセスで洗い出した各要件は、それぞれが矛盾することもある
・要望レベルが高すぎて、現在のネットワーク機器では実現できないこともある
性能やコスト、実現可能性のバランスが取れるように要件内容を精査し、最適なネットワーク設計を進めることが重要です。
手順4. 冗長化や保守運用を考慮して設計する
最後に保守運用を考慮します。
ネットワーク設計では基本的な検討内容以外にも信頼性・可用性や拡張性・保守運用性など非機能要件に該当する品質性能の考慮も不可欠です。
信頼性・可用性とは機器故障や物理通信路の切断(ケーブル断)など不測事態の「起こりにくさ(信頼性)」と、システムやサービスを「どれだけ利用できるか(可用性)」を指します。どの程度サービス停止を許容するのか、安定して利用できるようにするための対策(冗長性の確保など)を明確にしておきましょう。
また、カスタマイズしやすく、保守運用がしやすい作りにすることも重要です。将来的に通信量・接続機器・収容機器台数などの増減が見込まれる場合は柔軟に拡張できるようにしておく、稼働後に効率よく運用できるように監視手段の確立や問題発生時の対応を検討する、などの対策を進めます。
ネットワーク設計のポイント
ネットワーク設計は社会生活を支える重要な役割を担います。ビジネスや生活に直結した仕事ゆえに責任感や専門性を高く求められる仕事ですが、やり遂げた後の達成感は格別です。ここからはネットワークエンジニアが効率よく最適なネットワーク設計を進めるために、最低限おさえておくべきポイントを解説します。
現場へのヒアリング
社内ネットワークを構築する際には、実際に働く社員の声が重要です。実際にネットワークを利用するのは現場担当者なのでストレスなく快適に利用できるネットワーク設計ができるようにヒアリングを繰り返し、設計作業を進めます。
現場へのヒアリングでは、面談やインタビュー・アンケート形式で以下のような項目を調査するのが一般的です。
・現行ネットワークへの改善要望
・利用者のネットワークに関する前提知識有無、教育機会の有無
・セキュリティポリシーや具体的なルールの有無
・ネットワーク規模(現在、および将来的なユーザ数など)
・利用するアプリケーション(現在、および将来的に利用するアプリケーションなど)
分かりやすいネットワーク構成図
ネットワーク設計では後続プロセスである構築作業屋保守運用工程の考慮も重要です。各工程で必要となる「ネットワーク構成図」などの成果物は誰が見ても分かりやすい記述を心がけましょう。
ネットワーク構成図はネットワークを構成する機器がどのように接続されているのかを物理的・論理的に書き表した資料で、ネットワーク上の構成要素とそれらの関係性を示しています。中〜大規模ネットワークにおいて構築・保守運用作業において欠かせない資料です。
例えば、以下が構成図作成のポイントとなります。
・情報ネットワーク機器同士の接続を簡潔に示す
・IPアドレス・サブネットマスク・VLAN IDなどコンフィグ作成に必要な情報を明記する
・色分けやアイコン、図形などを活用して見やすさを意識する
ネットワーク設計で構成図を作成する担当者と、実際に構築をする担当者・保守運用をする担当者が同じとは限りません。第三者目線で見やすさ・分かりやすさを追求することが大切です。
基本をおさえて最適なネットワークを設計しよう
ネットワーク設計はネットワークの知識だけでなくセキュリティや各種OS、サーバなどに関する幅広い知識が必要です。特に設計工程では利用者・クライアントとのやり取りを繰り返して設計作業を進めるため、コミュニケーションスキルや調整力なども求められます。
ネットワーク設計で必要な知識や技術は多岐に渡るため、柔軟にスキルの幅を広げることが大切です。まずはこの記事の内容を参考に基本的な流れを身に付けた上で、最適なネットワーク設計ができるようにスキルアップを目指してみましょう。