人間拡張とはどんな技術?強化される能力や活用分野について
この記事では、人間拡張についての概要や、どのような能力が強化されるのかについて解説します。また、人間拡張の技術の活用が期待されている分野、人間拡張が抱える課題についても解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事では、人間拡張についての概要や、どのような能力が強化されるのかについて解説します。また、人間拡張の技術の活用が期待されている分野、人間拡張が抱える課題についても解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
知識・情報
2022/07/08 UP
- 技術
近年、AIやIoTなどのIT技術は急速に発展し、私たちの日常生活にも広く浸透してきています。これらのIT技術の進歩により、人間のさまざまな能力を強化する「人間拡張」の技術にも注目が集まっています。
人間拡張の技術は、少子高齢化による労働力不足を解決する手段の一つとしても期待が寄せられています。しかし、人間拡張という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような技術なのかを知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、人間拡張についての概要や、どのような能力が強化されるのかについて解説します。また、人間拡張の技術の活用が期待されている分野、人間拡張が抱える課題についても解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
人間拡張とは
人間拡張(Human Augmentation)とは、AIやIoTなどのテクノロジーを用いて、人間の身体能力・知覚などを増強・拡張させる技術です。また、もとからある能力を強化するだけでなく、新たな能力を獲得する場合もあります。
AIやIoT、VRやARなどのIT技術の進歩により、「人間と機械の融合」や「仮想と現実の融合」が可能となりました。「人間の能力を向上・補完する」という人間拡張は、これらの技術により実現しています。
人間拡張の技術はさまざまな分野での応用が期待されています。人間の負荷をウェアラブルデバイスなどが軽減することにより、個人の生産性を向上したり、ケガや病気などにより低下した身体能力を補完したりすることもできるのです。
今後、製造業をはじめ、医療や介護などの分野で人間拡張の技術の活用が進んでいくことでしょう。
人間拡張により強化される能力
人間拡張の技術では、「身体」「知覚」「存在」「認知」に関する能力が拡張されます。どのように能力を向上・補完するのか、具体的にみていきましょう。
身体の拡張
身体の拡張とは、人間の身体機能を向上・補完する技術です。
例えば、義足や外骨格、ウェアラブルデバイスを用いることにより人間の負荷を軽減することで、身体機能を拡張させることなどが挙げられます。
筋力の低下を補うことで日常生活の負担を軽減したり、行動範囲を広げたりすることが可能となります。また、全身の筋力を強化・向上させることで、個人の運搬能力を強化し、業務の効率化を図ることもできます。
知覚の拡張
知覚の拡張とは、感覚器官の能力を向上・補完したり、感覚を置き換えたりすることにより、人間の五感の能力を拡張させる技術です。五感のうち、おもに視覚と聴覚が対象となる技術であり、身近なデバイスにはスマートグラスや補聴器などがあります。
VRやARなどの「仮想と現実を融合する技術」が多く活用される点も、知覚の拡張の特徴といえるでしょう。
存在の拡張
存在の拡張とは、遠隔地や仮想空間での活動が可能となる技術です。ロボットや他者の身体などとの感覚共有・遠隔操作により、個人の存在を拡張します。
例えば、デジタルアバター、遠隔医療ロボット、人間同士での体験共有などが存在拡張に該当します。
認知の拡張
認知の拡張とは、人間の脳の能力を拡張する技術です。具体的には、知能や認知の能力を向上させることが挙げられます。
AI技術を応用し、記憶チップによる記憶障害の補完などを行なう認知拡張などが該当します。
人間拡張の活用が期待されている分野
人間拡張は新しい技術ですが、すでに実用化が進んでいる分野もあります。人間拡張の技術の活用が期待されている分野について、具体的にみていきましょう。
医療・介護分野
医療や介護の分野では、人間拡張のなかでも「身体拡張」と「知覚拡張」の技術の活用が期待されています。
身体拡張については、医療機器やパワーアシストツールを用いることで、加齢や事故などによって低下した身体能力を補うことが可能となります。
また、知覚拡張は医師の技術向上にも貢献しています。例えば、AR技術を使うことで、事前に手術のシミュレーションを行なうことができます。難しい手術でも入念な準備ができ、手術の成功率アップにつながります。
製造業・農業
製造業や農業の分野でも、「身体拡張」の技術の活用が期待されています。
すでに一部の企業では、パワーアシストツールなどの導入が進められています。個人の運動能力を強化することで、従業員一人あたりの生産性を向上させることが可能となるのです。
少子高齢化が進み、今後ますます深刻化する労働力不足という課題への解決手段の一つとして、人間拡張の技術の活用が期待されています。
エンターテインメント
VRやAR技術を活用することにより、私たちは「仮想空間と現実世界の融合」を体験できるようになりました。
VR技術は家庭にも普及しており、ウェアラブルデバイスを装着することで、映画やゲームの世界への没入感を味わうことが可能です。
また、自宅にいながら現地でのスポーツ観戦を体験するサービスなど、人間拡張の技術はさまざまな応用が進んでいます。
人間拡張の課題
人間拡張は、人間の可能性を広げる技術として、さまざまな分野での活用が期待されています。
しかし、人間拡張は個人に大きな影響を与える技術のため、実用化には倫理に関する課題を抱えているのです。
人間とデバイスの融合がどの程度の範囲まで許されるのかを規制する法律がなければ、人間拡張の技術により個人の人権が侵害される恐れもあります。
人間拡張の技術が今後より発展・普及するためには、倫理に反する人間拡張を規制するための法律整備が求められているのです。
人間拡張は人間の身体能力・知覚を補完・向上させる技術
人間拡張は、人間のさまざまな能力を向上・補完し、また新たな能力を習得させる技術です。AIやIoT、VRやARなどのIT技術の進歩により、人間拡張を実現することができるようになりました。
人間拡張の技術を用いることで、「身体」「知覚」「存在」「認知」などの能力を拡張することが可能です。なかでも身体や知覚についての拡張は実用化が進んでおり、医療や製造業などの分野で活用されています。
VRやAR技術を用いた「知覚の拡張」は、家庭用ゲーム機用のデバイスが発売されるなど、いまや生活のなかにも広く浸透しています。
人間の能力を向上・補完する人間拡張は非常に便利な技術ですが、その実用化には大きな課題を抱えています。人間拡張の技術は、人間の肉体に少なからず影響を与えます。そのため、人間拡張の適用が許される範囲についての法律整備が求められているのです。