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レガシーシステムからの脱却とDXの実現を目指す企業が求めるものとは

今回は、そのような企業が何を求め、どのように変わろうとしているのかについて考えていきます。

レガシーシステムからの脱却とDXの実現を目指す企業が求めるものとは

今回は、そのような企業が何を求め、どのように変わろうとしているのかについて考えていきます。

DX

2022/07/15 UP

DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた取り組みが、業界・業種を問わず進められています。その一方で、レガシーシステムの問題に直面する企業も少なくありません。かつて「メインフレーム」や「オフコン」などと呼ばれた古いシステムが、組織的な変革を妨げている現状があるのです。

それでも、問題を解決しDXへ舵を切ろうとする企業は増えていくでしょう。今回は、そのような企業が何を求め、どのように変わろうとしているのかについて考えていきます。

コロナウイルス感染症の拡大で露呈したDXの問題点

新型コロナウイルスの蔓延をきっかけにして、各分野でのデジタル活用が急ピッチで進められてきました。医療や教育のオンライン化、企業におけるテレワークの導入などです。日本全体が、なかば強制的にDXの必要性を突きつけられたのだといえるでしょう。

そのような流れのなか、老朽化した社内システムがDXの「足かせ」となる、いわゆる「2025年の崖」問題が現実味を帯びてきました。日本企業はこの問題を早期に解決しなければ、現行システムを維持するためにコストばかりがかさみ、デジタル化が進むグローバル市場で戦えなくなっていく恐れがあるといわれています。

DXの実現を妨げるレガシーシステムの特徴

レガシーシステムが問題となるのは、単に「古いから」ではありません。新しいテクノロジーの導入を阻害し、維持コストも高くつくことが本当の問題点です。

しかし、そのようなシステムが、なぜ今も多くの企業で「現役」として使われ続けているのでしょうか。まずは、多くのレガシーシステムに共通してみられる特徴についてみていきましょう。

ブラックボックス化

多くの企業が、社内システムの刷新を長い間避けてきました。社内システムはあまり生産的とはいえない事務や手続きをこなすためのものだとみなされており、積極的な投資の対象ではなかったのです。特に近年は経済環境が厳しかったこともあり、すでに20〜30年もの間「延命」されてきたシステムもめずらしくなくなってしまいました。

こうしてレガシー化したシステムの多くは、度重なる改修の「つぎはぎ」で複雑化しています。今ではシステムを深く理解する担当者もいなくなり、誰にも手がつけられないブラックボックスになっている例も少なくありません。改良や機能追加の必要性を感じても実現は困難であり、企業としての柔軟性を損なう一因になっています。

サイロ化

レガシーシステムは、組織のサイロ化をともなうケースが少なくありません。部門ごとに過剰にカスタマイズされたシステムが、企業内に重複して存在しているのです。このような状況は、企業が保有するデータの所在を分散させる結果にもつながります。

組織のサイロ化は、各部門が独自に最適解を求めた結果でしょう。しかし、部門をまたぐ部分ではどうしても無駄が多くなり、企業全体としての生産性を低下させる恐れがあります。また、DXの実現にはデータをいかに活用するかが重要です。データが各部門でバラバラに管理され、組織的なデータ活用を阻害するような状況は望ましいとはいえません。

サイロ化と企業に与える弊害については、こちらの記事も併せてご覧ください。
サイロ化とは?分断されたシステム設計や縦割りの組織構造が企業にもたらす弊害

ベンダー依存

社内システムの開発を、外部のITベンダーに頼っている企業は多いでしょう。それ自体は何も悪いことではありません。しかし、開発の「丸投げ」は大きな問題につながる恐れがあります。長く丸投げを繰り返していると、ITベンダーのほうが自社システムに詳しいという奇妙な状況に陥ってしまうのです。

このような状況は、「ベンダーロックイン」などと呼ばれています。特定のITベンダーへの依存が大きくなりすぎてしまい、自社の持ち物であるはずの社内システムを思いどおりにコントロールできません。しかし、システムが現役で稼働している以上、現状から抜け出すことも困難です。そのうえ、いつサポートを打ち切られてもおかしくないため、リスクを抱えたままシステムを使い続けなければならないという問題もあります。

レガシーシステムからの脱却を目指す企業が求めるもの

レガシーシステムからの脱却を目指す企業が求めるもの

これからの時代にふさわしい変革を目指す企業にとって、レガシーシステムからの脱却は重要なテーマです。そのために、企業は次世代のシステムと新たな人材を求めています。

社内システムの刷新

企業はレガシーシステムからの脱却をはかると同時に、ビジネスの基盤となりうる新システムへ移行しようとしています。これは、従来と同じ仕組みを作り直すという意味ではありません。これまでとは異なるシステムにしなければ、「再レガシー化」を招くことは目に見えているからです。

刷新後のシステムには、一貫性と柔軟性が求められます。一貫性とは、社内のどの部門からでも統一的に利用できる、共通のシステムにするということです。これにより、企業が保有するデータを一元管理し組織的に活用できるようになるでしょう。柔軟性とは、要求に応じてシステムを素早く改変できるということです。移り変わりの激しいデジタル市場に適応していくために、今後の企業にはアジリティ(機敏であること)が求められます。

このような新システムを、レガシーシステムの上位互換にするのはあまり現実的とはいえません。多くの企業では既存システムのなかから残すべき部分を仕分けし、それ以外については廃棄を決断することになります。

ビジネスを理解できるデジタル人材

国内のデジタル人材は、約7割がITベンダーに集中しているといわれています。これは、米国とはまったく逆の様相です。日本企業は、そもそも自社システムを内製しづらい状況にあるといえるでしょう。社内システムの刷新を目指すためにも、テクノロジーを支える人材をいかに確保するかが課題となっています。

企業が内製の比率を増やしていこうとすれば、多角的な視点を備えたエンジニアの存在がますます貴重になっていくでしょう。ただ要求に応じてシステムを作るのではなく、ビジネスの観点から新システムのアイデアを出せるような人材です。併せて、自ら行動を起こせる自発性も強く求められています。

レガシーシステムからの脱却を目指す企業に起こる変化

レガシーシステムからの脱却を目指す企業に起こる変化

レガシーシステムからの脱却をはかる日本企業は、どこに向かおうとしているのでしょうか。これから企業に起こると予想される、いくつかの変化について紹介します。

クラウドサービスの活用が進む

日本では、IT予算の約8割がレガシーシステムの維持コストだといわれています。コスト削減のためには、社内システムのクラウド化が効果的なアクションの一つとなるでしょう。

ドキュメント管理やコミュニケーションなどの分野でさまざまなクラウドサービスを利用できるようになった今、既存サービスをそのまま利用するだけでも現行システムをある程度置き換え可能です。クラウドの活用で浮いた予算は、最新テクノロジーの導入などに割り振れるようになります。

ベンダーとの新たなパートナーシップが構築される

今後は、ITベンダーとの関係性を見直す企業が増えてくるでしょう。IT技術に強いベンダーの協力を得て社内でデジタル人材の育成に取り組んだり、合弁で新規ビジネスを立ち上げたりといったことが考えられます。

このような流れは、各企業とITベンダーが、デジタル市場における「共創的パートナー」になることを目指すものです。日本市場において、人材不足とベンダー依存を一挙に解決するための考え方だといえるでしょう。

デジタルプラットフォームの形成で協力関係が広がる

レガシーシステム以外の面でも、開発コストを削減し、ITへの投資を効率化させる動きは活発になっていくでしょう。企業がデジタル市場で優位なポジションを維持するためには、新しいテクノロジーを導入して自社の強みを伸ばしていくことが重要だからです。

すべてを自社開発で完結させようとする「自前主義」は、今後は減っていくと考えられます。その代わりに、各業界内には共通のデジタルプラットフォームが形成されていくでしょう。これにより、共通化が可能な部分では他社との協力関係を構築しながら、競争すべき領域への投資を強化できるようになります。

ビジネスとテクノロジーをつなぐ提案型のエンジニアが活躍する時代に

レガシーシステムは維持コストが高くつくばかりでなく、新しいテクノロジーの導入も阻害します。デジタル化とグローバル化が進む市場を戦い抜くために、企業は社内システムを刷新して変革に備えなければなりません。ビジネスの視点をふまえて新システムのアイデアを出し、自発的に行動できる提案型のエンジニアは貴重な存在となっていくでしょう。

企業の変革と求められる人材像については、関連するインタービュー記事もあります。ぜひ、併せて参考にしてください。