【身近なIT】POSシステムとは?進化の歴史から最新動向までを紹介
今回は、POSが発展してきた歴史から、ITを活用した最新動向までを紹介します。
今回は、POSが発展してきた歴史から、ITを活用した最新動向までを紹介します。
知識・情報
2022/07/15 UP
- 技術
「POS」は「Point Of Sales(販売時点情報管理)」の略で、店舗の商品や販売状況などを管理するための仕組みのことです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアのカウンターなど毎日の生活で目に触れる場所に端末が置かれていることから、身近な存在として認識している人も多いでしょう。
しかし、POSは会計のためだけの道具ではなく、今も進化を続ける高度なITシステムだということはあまり知られていないかもしれません。そこで今回は、POSが発展してきた歴史から、ITを活用した最新動向までを紹介します。
POSシステムとは?
POSシステムの原形は、「キャッシュレジスター(金銭登録機)」だといわれています。いわゆる「レジ」のことで、商品の値段を計算・記録する機械と、現金をしまっておくための小さな金庫が一体になったものです。
これがやがてシステム化し、店内にある複数のレジや、複数店舗のレジを一元管理できるようになっていきました。「POSシステム」とは、そのシステム全体を指す言葉です。また、カウンターごとに置かれる端末のことは「POSレジ」といいます。
近年のPOSシステムは、決済や販売状況の記録のほかにも、さまざまな役割をこなすようになりました。例えば、商品情報を登録しておき在庫を管理したり、バックヤードでは従業員の勤怠管理に用いられたりしています。商品ごとの売れ行きなどがデジタル化され、データとして活用できるようになったことも現代のPOSシステムの特徴でしょう。データの分析結果に基づいて、仕入れ量の調整や次期商品の開発などが行なわれています。
POSシステムの歴史
はじめは単純な機能しかもたなかった「レジ」は、どのようにシステム化し「POSシステム」になっていったのでしょう。その進化・発展の歴史を紹介します。
スーパーマーケットにおけるレジのシステム化
レジがどのようにシステム化されていったのかを知るには、戦後の復興期までさかのぼらなければなりません。当時、大量消費時代の日本を支える存在として大きく成長したのがスーパーマーケットです。初期のレジは、店舗全体の売上を管理するだけのシンプルなものでした。
のちに、部門別の会計機能を搭載したレジが登場します。単に会計業務を効率化するだけでなく、「鮮魚」や「精肉」、「青果」のような種類別で売上データを集計できるようになったのです。これによりデータに基づいた販売予測が可能になり、実際に売り場面積の調整などで活かされました。
さらに、コンピュータとの連動もはじまります。といっても、ネットワーク化が実現するのはもう少し先の話です。当時は紙テープに穴をあけた「パンチテープ」でデータを移動させていました。レジ側の「紙テープ穿孔機」でパンチテープを作成し、それをコンピュータ側の入力装置に読み込ませる方式です。まだまだ原始的ではありますが、現代のPOSシステムにつながるシステム化の第一歩といえるでしょう。
コンビニエンスストアの急成長とPOSシステムの標準化
コンビニエンスストアの時代を迎え、POSシステムはさらに普及していきます。その要因としては、バーコードを活用したJANコード(共通商品コード)の制定が大きかったといえるでしょう。商品情報はタグをスキャンするだけで即座にコンピュータへ入力可能になり、会計業務から手作業が削減されました。
また、いよいよオンライン化が実現し、売上データは本部に送られて集計・分析されるようになっていきます。商品ごとに割り振られたJANコードのおかげで売れ筋商品の把握も容易になり、仕入れの最適化や商品開発などにデータが活かされはじめました。
さらに時代が進むと、WindowsやLinuxを搭載したPOSレジが登場します。これまでメーカーごとの独自仕様だったPOSレジがパソコンをベースにしたものへと変わり、技術がオープン化されていったのです。これにより周辺機器との互換性も向上し、サードパーティが参入しやすくなりました。
インターネットの普及とECの発展
インターネットの高速化が進みブロードバンドの時代になると、各店舗が本部のサーバーと常時接続できるようになります。これにより、POSレジは軽量なターミナル(端末)へと姿を変えていきました。
また、インターネットの普及は、消費者の購買行動にも変化をもたらします。WebサイトやSNSが身近な存在となり、気になる商品の情報をあらかじめ入手できるようになったためです。実際に商品を買うかどうかは、ユーザーレビューやクチコミのコメントを読んでから判断する人が多くなっていきました。
こうした流れのなかで発展したのがECサイトです。クレジットカードによるオンライン決済で、店舗の立地や営業時間に左右されずに商品を購入できる点などが注目されました。ECサイトが勢力を増していくと、しだいに「ショールーミング」という行動もみられるようになっていきます。情報収集の一環として、商品の実物を手に取って確認するためだけに実店舗を訪れる消費者が増えたのです。
事業者にとっては、「オムニチャネル」の時代に突入したといえるでしょう。オンラインとオフラインのあらゆるチャネルを駆使し、実店舗とECサイトをミックスさせた戦略が求められています。
POSシステムの動向
これからのPOSシステムは、どのように進化していくのでしょうか。ここからは、POSシステムの最新動向について簡単に紹介していきます。
キャッシュレス決済が普及する
最新のPOSシステムは、各種電子マネーやQRコード決済などのキャッシュレス決済に対応しています。これらの新しい方式が決済手段の中心になれば、買い物の際の利便性が増すことはもちろん、釣銭の数え間違いなどのミスも減るでしょう。また、会計の際に現金に触る必要がないため、衛生面での効果も期待されます。
歴史を振り返れば、POSシステムは現金を扱う「キャッシュレジスター」からはじまったものでした。キャッシュレス決済の普及とともに、「レジ」はその役割を変えていくのだといえます。
クラウド化が進む
現在では、業務用ツールからエンターテインメントまで、さまざまなサービスをクラウドで利用できるようになりました。POSシステムについても、同様の変化が起こっています。クラウド化されたPOSシステムでは、レジ数や店舗数に関わらず、売上や在庫などのデータをリアルタイムで一元管理することが可能です。
POSレジをコンパクトにできる点も、クラウドの特徴でしょう。対応するアプリをインストールすれば、タブレットやスマートフォンがレジの役割を果たします。専用のハードウェアが必要な従来のPOSシステムよりも初期コストを抑えられるため、小規模店舗でも導入しやすい方法です。
ECと統合される
POSのデータをECと連携できるサービスも、すでに登場しています。クラウド化の流れとオムニチャネルへのニーズを考えれば、このような機能統合は必然といえるかもしれません。
ECとの連携において特に重要となるのは、在庫の一元管理でしょう。具体的には、各種ECモールでの売れ行きをPOSシステムが追跡します。これにより、実店舗との間で自動的に在庫データを調整して、欠品によるトラブルを防ぐことが可能です。
店舗アプリと連携される
会員向けに専用アプリを配布する店舗が増えてきました。プラスチック製の会員証を発行するよりもコストを抑えやすく、利用者にはポイントやクーポンによる割引のほか、セール情報などを提供できる方法です。
通常、このようなアプリは会計時に提示してもらうので、POSシステムに連携させるのが合理的でしょう。これにより、店舗側はより多くのデータを集められるようになります。例えば、売れ筋商品がどの客層にヒットしているのかを分析し、売上や顧客満足度の向上に役立てることが可能です。
セルフサービスが広がる
飲食店のテーブルごとに注文用の端末を置く「セルフオーダー」は、利用者が好きなタイミングで注文できるようにする方法です。フロア業務の一部を無人化するとともに、伝達ミスも防げます。また、POSシステムと連携するため、会計もスムーズです。
コンビニエンスストアなどでは、会計を無人化する「セルフレジ」も実験的に取り入れられはじめました。このような、POSシステムを応用したセルフサービスが広まれば、いずれ完全に無人の店舗が浸透する日も来るかもしれません。
POSシステムの仕組みはITとともに進化を続けている
POSシステムは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの成長ととも発展してきた仕組みです。その背景には常に、インターネットをはじめとするITの進歩と、売上向上や商品開発を目的としたデータ活用のニーズがありました。ECが勢力を増した現在も、POSシステムは進化を続けています。見慣れた「レジ」の形からは変わっていくかもしれませんが、今後もさまざまな技術を取り入れながら使われ続けることでしょう。