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SXとは?これからの企業が目指す「持続可能性」についてわかりやすく解説

企業にとってSXとはどのような意味をもつものであり、推進するには何から手をつければ良いのかについて説明します。

SXとは?これからの企業が目指す「持続可能性」についてわかりやすく解説

企業にとってSXとはどのような意味をもつものであり、推進するには何から手をつければ良いのかについて説明します。

知識・情報

2022/08/25 UP

「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」とは、ひとことで言えば「持続可能(サステナブル)な企業を目指した変革」です。近頃は耳にする機会が増えてきた「SDGs」や「DX」とも関係の深い概念ですが、これらと何が違うのかと聞かれたら、具体的に答えられない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、企業にとってSXとはどのような意味をもつものであり、推進するには何から手をつければ良いのかについて説明します。

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは

激動する現代社会において、先行きを見通すのは簡単なことではありません。SXとは、こうした不確実性の高いビジネス環境のなかで企業に求められる、「持続可能性(=サステナビリティ)」を重視した「変革(=トランスフォーメーション)」のことです。

「サステナビリティ」に関する話題はニュースなどでもたびたび取り上げられますが、「持続可能な社会」という意味合いの場合が多いでしょう。これに対してSXは、個々の企業にとっても「持続」が重要なテーマであることを示しています。

SXで重視されるのは企業本来の「稼ぐ力」と、社会全体も含めた「持続可能性」とを、いかにして両立していくかという点です。そのため、社会の一員としての経営の「あり方」や、それを実現するための戦略が問われることになります。

SXが注目される背景

歴史を振り返れば、さまざまな企業の努力により技術や経済が発展し、その恩恵を受けて私たちの暮らしも豊かになってきたことがわかります。しかし、一方では環境課題や社会問題が次々と表面化し、対応を迫られているのも事実です。

このような状況のなか、SXにもつながる重要な考え方が生まれました。

社会全体の目標を示すSDGs

社会全体の目標を示すSDGs

SDGsは、人間と地球、繁栄のための行動計画です。持続可能な世界を実現するための「開発目標」として、2015年の国連総会で採択されました。すべての国と人が協力し、経済・社会・環境のバランスを保ちながら持続可能な開発を進めるための、17の目標と169のターゲットが示されています。

実は、SDGsの15年前には「MDGs(ミレニアム開発目標)」という計画も存在しました。しかし、このときは達成できなかった目標や、取り残された国々がみられたといいます。そこでSDGsでは、MDGsでできなかったことも目標に含められました。SDGsは持続可能な世界を目指す開発から取り残される国をなくすべく、「誰一人取り残さない」という決意が込められたものなのです。

社会における企業の責任を表すESG

社会における企業の責任を表すESG

持続可能な社会の実現のために、国連は2006年に投資に関する行動原則として「PRI(責任投資原則)」を策定しました。PRIでは投資対象を決める際、企業のESG課題への取り組み状況を考慮することなどが提唱されています。

ESGとは、以下の3つの視点の頭文字を合わせた用語です。

・E:環境(Environment)

・S:社会(Social)

・G:ガバナンス(Governance)

「環境」は、経済的な発展と引き換えに発生してしまった環境課題についての視点です。地球温暖化や海洋汚染、それにより住処を追われ絶滅の危機に瀕している生物などの問題を指しています。

「社会」は、人々の暮らしや生存に関する視点です。不平等な人材採用や所得格差、最低限の教育を受けられない児童の存在といった社会問題に対して、企業として見直すべき行動もあるかもしれません。

「ガバナンス」とは経営の健全性や自己管理に関する視点のことで、「企業統治」ともいわれます。法令遵守や適切な情報開示など、社会的なルールを守ることは持続的な企業活動の基本です。

PRIに賛同する投資機関は世界中で増え続けており、日本でも2015年以降多くの機関が受け入れたことから、ESGはSDGsとともに注目されています。サステナビリティを高めたい企業にとって、ESGへの配慮はより重要となってくるでしょう。

新型コロナウイルスの流行で問われる企業のレジリエンス

新型コロナウイルスの流行により、多くの企業が「レジリエンス」を問われることとなりました。レジリエンスとは、想定外のダメージから立ち直り、より強くなる力のことです。企業が持続可能であるために必要な能力の一つだといえます。

2020年、東京商工リサーチは「第6回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を実施しました。同調査によると、71%の企業がコロナ後の社会を見据えて「企業戦略を見直した」または「見直す予定がある」と回答しています。また、これらの企業のうち69%は「持続可能性を重視した経営への転換」を見直し内容に挙げました。

これらのデータからは、コロナ禍の苦境にありながらも、現状をSXのための契機ととらえている企業の存在がうかがえます。感染症の流行をきっかけに、企業の意識は変わりつつあるのです。

SXとSDGs・ESG・GX・DXの違いと共通点

SXとSDGs・ESG・GX・DXの違いと共通点

ここでは、SXと関係の深い用語をいくつか取り上げて説明します。SXとの意味の違いや共通点、関係性などについて確認しながら、SXが何を目指す取り組みなのかをより良く理解しましょう。

SXとESGのシンクロがSDGs達成に貢献する

企業が将来にわたって持続するためには、ただ利益を出し続けるだけでなく、活動を通して社会的に認められることも大切です。利潤追求ばかりを基準とする単純な発想は、すでに限界にきているといえるでしょう。

SXの実現を目指す企業は、ESGの3つの視点を経営に取り込む必要があります。ガバナンスを発揮して社会の一員としてのルールを守るとともに、環境課題や社会問題にどのように向き合っていくのかを示すのです。また、そうすることによって、企業はSDGsの達成にも貢献できる存在になっていきます。

このようなESGに配慮した経営ができれば、「将来性のある企業」として投資家や株主からの評価も高まるでしょう。

GXはSXで考慮すべき取り組みの一つ

GX(グリーントランスフォーメーション)は、温室効果ガスの排出量をトータルでゼロにする「カーボンニュートラル」に関する取り組みです。

2020年、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指すと宣言しました。ここで目標とするのは企業ごとの成果ではなく、社会全体としてのカーボンニュートラルです。経済的な成長と環境保護を両立させながら、「経済社会システム全体の変革」をはかります。

SXを実現しようとする日本企業にとって、GXは考慮すべき項目の一つといえるでしょう。国内のGXに貢献する取り組みを進めていけば、世界全体としてのカーボンニュートラルにも一歩近づくことになります。

SXとDXは統合されるべき取り組み

DX(デジタルトランスフォーメーション)」も、現在多くの企業が進めている取り組みです。データとデジタル技術を活用しながら、企業風土の変革や競争力の強化をはかります。

SXもDXも、企業としての「あり方」が問われる長期的な活動となる点については大きく違いません。ただしDXでは、競合に対して優位なポジションを確立するために、短期的な成果を求められる傾向があります。ここにSXの視点を取り入れれば、他社との競争だけでなく、環境の変化にも負けないビジネスを計画できるようになるでしょう。

SXとDXは、どちらかを選んだり、バラバラに取り組んだりすべきものではないといえます。両者を共通のビジョンで統合して、持続的なビジネスを構築できる可能性を高めることが重要です。

なお、DXについては、日本のDX推進のキーマンとして経済産業省の研究会委員も務める山本修一郎さんのインタビューも併せてご覧ください。
【インタビュー】DX時代に求められる人材とは〜日本のDXの課題とデジタルエンジニアの必要性

SXを推進するために必要な施策

SXを推進するために必要な施策

SXの実現を目指す戦略は、企業ごとの特徴や強みに応じて決まってきます。そのため、具体的な施策も企業ごとに違っていて当然です。とはいえ、大きく分類してみれば、SX推進のための施策にはある程度共通する枠組みがあります。

企業としてのサステナビリティを高める

SXを実現するために「稼ぐ力」と「持続可能性」の両立が求められることは、すでに説明したとおりです。「稼ぐ力」は企業本来の基本的な能力であり、その重要性はSX以前から変わりがありません。SXにおいては、この能力を長期にわたって維持するための施策が必要となります。

これは、将来の市場においても今以上の優位性を保っていられるかということです。企業ごとの特徴を活かしたり、独自の強みを最大限に発揮したりできる施策を考え続ける必要があります。現状維持を目標とせず、ビジネスモデルの改良やイノベーションにより競争力を高めて行こうとする取り組みが、持続可能性の強化につながるでしょう。

社会のサステナビリティを経営に取り込む

SXでは、ESGの視点をもつことも大切です。これは、社会的な要請を経営に取り込むことを意味します。

まずは、持続可能な社会が実現した未来をイメージして、現状とのギャップを確認するとよいでしょう。これにより、企業は今後どのような変化を求められるのかを把握できます。新たな「チャンス」を生み出す変化もあれば、将来のビジネスを脅かす「リスク」となる変化もあるでしょう。

こうした変化を認識し受け入れることは不確実性への備えであり、「稼ぐ力」を発揮し続けるためにも必要な施策です。これらを経営に反映させ自ら変わっていくことで、来るべき持続可能な社会にも適応できる企業になっていきます。

ダイナミック・ケイパビリティを強化する

持続可能な社会が実現するまでの道のりは、現時点においては不確実な未来です。新型コロナウイルスの流行で経験したような予見が難しい出来事も、まだまだ起こるかもしれません。

どのような状況下でも企業がレジリエンスを発揮できるようになるには、「ダイナミック・ケイパビリティ」の強化が重要でしょう。ダイナミック・ケイパビリティとは、不確実な世の中の変化を読み解き、柔軟に適応していく能力のことです。

企業がこのような能力を獲得するためには、新しいデジタル技術を積極的に取り入れる施策が一つのカギとなります。社会の変化を素早く察知し臨機応変に対応するために、デジタルデータを扱う技術が役立つからです。

ここがポイント!SXを目指す企業に求められるもの

SXは企業が取り組むべき変革であると同時に、社会全体の大きな変化の流れでもあることを説明してきました。最後に、SXの実現を目指す企業が押さえておくべきポイントをまとめます。

これからの企業には社会的な役割がある

SDGsにもみられるように、「持続可能な開発」が世界的なテーマとなっています。これからの企業は、社会の一員としてふさわしい役割を担っていかなければなりません。

そのためには、ESGの3つの視点を経営に取り込み、自らを変化させていく姿勢が大切です。また、そうすることで地球規模で発生しているさまざまな環境課題や社会問題の解決に貢献するとともに、企業本来のビジネスについても将来にわたって持続できる可能性が高まります。

これからの企業には不確実性への対応力が求められる

企業が持続可能であるためには、不確実な未来に対処する能力が欠かせません。デジタルデータを扱うための技術を積極的に取り入れるなどして、社会の変化にいち早く気付き、どのような状況にも柔軟に適応できる体制を整えておく必要があるでしょう。

それでも、社会の急激な変化により思いがけない苦境に陥ることも考えられます。これからの企業には、たとえ困難な状況でも力をつけて立ち直れるしなやかさをもつことも重要です。

SXを理解してサステナブルな社会の一員になろう

SXとは、将来にわたって持続できる企業になるための変革です。SXへの取り組みは、持続可能な社会が実現した未来から逆算して、それまでに必要な変化を受け入れることからはじまります。また、SXを推進するにはESGに配慮した経営と、不確実性に対処する能力が必要です。

なお、持続可能な社会に貢献できるのは企業だけとは限りません。SXについての理解が広まって私たち一人ひとりの意識や行動が変わることも、より豊かな社会につながるかもしれないのです。