DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?取り組む際の課題とポイント
DXの定義や、DXを推進する際の課題・ポイントについて解説していきます。
DXの定義や、DXを推進する際の課題・ポイントについて解説していきます。
DX
2021/09/01 UP
- DX
- 技術
新聞やニュースでDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく目にするようになりました。近年リモートワークや事業のIT化が求められるケースも増えており、DX推進に取り組むことが急務となっている企業も多く存在しています。
経済産業省も推進するDXとは、単に事業やサービスにIT技術を導入することが目的の取り組みではありません。DXとはどのような取り組みであり、なぜ企業はDXを推進すべきといわれるのでしょうか?
この記事では、DXの定義や、DXを推進する際の課題・ポイントについて解説していきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。この章ではDXの定義について解説していきます。
広義のDXの定義
DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授エリックストルターマン氏が提唱した概念です。
この定義では、DXを「IT技術が浸透することで、人々の生活のあらゆる面をより良い状況へと変化させる」としています。
つまり、IT技術の進化浸透はビジネスシーンだけではなく、社会の人々の生活に対しても良い影響を与える、という意味にとらえることができます。そのため後述するDXの定義よりも、より広い意味を持っています。
狭義のDXの定義
DXは、ビジネスにおいて重要視されることが多い考え方です。
ビジネスにおけるDXとは、一般的に「最新のIT技術を取り入れることで、ビジネスや組織をより良いものへと変革させていく」といった意味で使用されます。
近年よく言われるDXはこちらが多く、ビジネスシーンに限定した意味合いで使われています。
経済産業省『DX推進ガイドライン』における定義
DXは経済産業省も推奨する取り組みであり、日本の多くの企業の課題ともなっています。
経済産業省は『DX推進ガイドライン』を公表しており、このガイドラインのなかでDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しています。
この定義内容から、経済産業省の推進するDXとは、前述した狭義のDXと近い意味で使用されていることがわかります。
なぜ企業はDXを推進すべきなのか?
そもそも、なぜ企業はDXを推進すべきなのでしょうか。企業がDX推進に取り組むことの必要性や重要性について解説していきます。
日々変化する消費者ニーズに対応するため
DXに取り組む目的の一つに、企業の市場における競争力の強化が挙げられます。
特に近年はスマートフォンでの商品購入や情報収集などが活発であり、ユーザーの消費行動に即したサービスの提供が重要となっています。
DXを推進し、最新のIT技術をビジネスに取り入れることで、市場の急速な変化にも対応できるよう競争力を強化することが可能となるのです。
生産性業務効率の向上
生産状況管理や顧客データの収集を、AIなどのシステムを用いて自動化することで、生産性の向上を期待することができます。
また、業務にIT技術を導入することは、単に生産性を向上させるだけではなく、従業員の業務効率を向上させることにもつながります。システムと人間で業務を分担することにより、従業員がより自分の業務に集中できる環境を作ることができるのです。
事業を継続させるため
老朽化したITシステムは保守や運用にコストがかかる傾向にあります。また、従来のシステムを維持するためにコストがかかることで、新規事業の立ち上げが妨げられる可能性もあります。
近年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークの導入など、ITシステムを活用したビジネススタイルへの見直しが求められるケースが多くあります。
DX推進に取り組むことで、こうした災害などの非常事態に見舞われても、事業をストップすることなく柔軟に対応できるようになるというメリットがあるのです。
DXを推進する際の課題
DXを推進することにより、企業の市場価値・競争力の強化や、事業の継続性を高めることが可能となります。しかし日本ではまだまだDXへの取り組みが遅れているのが現状です。DX推進がなかなか進まないことの背景には、どのような理由があるのでしょうか。
この章では、DXを推進する際に考えられる課題についてみていきましょう。
IT人材が不足している
DXを推進する際の大きな課題の一つに、IT人材の確保が難しいことが挙げられます。
ニーズに即したシステムを迅速に開発・運用するためには、ITシステムの内製化が重要となります。しかし現在、システムの開発や運用は外注している企業が多く、社内にIT技術者がいない場合も少なくありません。
DXでITシステムの内製化を進めるためには、IT技術に精通した人材を確保する必要があります。しかしIT業界自体が慢性的な人材不足であり、特にDX推進を担えるだけの経験やスキルのあるエンジニアとなると、さらに人材確保が難しくなります。
また継続的に事業を成長させるためには、人材を確保するだけではいけません。IT人材を社内で育成し、事業成長を持続させていくための仕組みづくりも重要となるのです。
老朽化したシステムの存在
旧システムがDX推進の妨げとなることもあります。
従来使用していたシステムは老朽化や複雑化していることが多く、旧システムを維持・改修しようとすると多額のコストがかかってしまいます。そのためDX推進に必要な費用を捻出できなくなるケースも少なくありません。
また古いシステムは詳しい人材が社内にいない可能性も高く、旧システムをそのまま活かして新システムを構築するのは難しい場合も多くあります。
DX推進において、旧システムが老朽化・複雑化している場合は、システムの見直しや、新システムの導入を検討する必要があります。
DX推進を成功させるためのポイント
DX推進を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。DX推進の際は、以下についてよく検討したうえで取り組むとよいでしょう。
DXに取り組む意義を正しく理解する
企業がDXを推進する際は、「最新のIT技術を用いて組織をより良いものへと変革させていく」といった意義を正しく理解しておく必要があります。
IT技術の導入による「事業の効率化」や「生産性の向上」のみを目的とした場合は、単にIT技術を導入するだけにとどまってしまう可能性があるからです。DX推進では、なぜDXを推進するのかという目的を明確にすることが非常に重要となります。
また、DX推進は経営陣やIT技術者だけではなく、社内全体で取り組む必要があります。そのためすべての従業員にDX推進の意図を正確に浸透させ、理解を得ることも大切です。
経営戦略ビジョンを明確にする
経営戦略ビジョンが不明瞭なままDX推進に着手してしまうと、システムが一貫性のないものとなり、かえって負担になることや、現場の疲弊を招く恐れがあります。
そのため「DXを推進することでビジネスや組織をどのように変革させるのか」という、DXの目的を明確にしたうえで、そこに至るまでにどのようにIT技術を導入していくのかといったビジョンを打ち立てることが重要です。
また、IT技術の導入は初めから広い範囲に着手するのではなく、スモールスタートを心がけるようにしましょう。いきなり大がかりな変更をしてしまうと、途中で軌道修正することが難しく、DX自体が失敗してしまう可能性が高くなります。
DXへの取り組みでは、経営戦略ビジョンを明確にし、段階的にIT技術の導入を進めていくことが求められるのです。
なお、DX戦略については、こちらの記事も併せてご確認ください。
DX戦略が必要な理由とは?DX戦略を成功させるポイント・進め方について解説
DXはビジネスや組織をより良いものへと変革させるための手段
ビジネスにおけるDXとは、単に業務をIT化するのではなく、IT技術を用いて事業をより良く変革していくという意味があります。
DX推進の大きなメリットは、変化の多い市場においても、顧客のニーズに柔軟に対応することができるようになるという点にあります。また災害などの非常時でもすべての業務をストップしなくて済むため、より安定した事業運営が可能となります。
DXはただ闇雲にIT技術を導入すれば良いというものではありません。まずは経営戦略ビジョンを明確に打ち出し、ビジョンに沿って一貫性のあるシステムを構築していくことが重要となるのです。