BCPを作る方法やメリットとは?上手に策定し運用する方法を教えます
この記事ではBCPのメリットや作成手順、作成するポイントに触れ、BCPについて詳しく解説します。またBCPを上手に運用する方法も説明します。
この記事ではBCPのメリットや作成手順、作成するポイントに触れ、BCPについて詳しく解説します。またBCPを上手に運用する方法も説明します。
知識・情報
2022/09/08 UP
- 管理
近年では自然災害や情報漏洩、システム障害や従業員によるインシデントなど、事業活動に脅威を与える事態が続々と発生しています。BCP(事業継続計画)を策定し有事に備えることは、企業が事業活動を行なううえでの必須要件です。
この記事ではBCPのメリットや作成手順、作成するポイントに触れ、BCPについて詳しく解説します。またBCPを上手に運用する方法も説明します。
BCPとはなにか?
事業に役立つBCPを作るためには、BCPを正しく理解することが必要です。BCPとはなにかという点を3つの視点に分けて、詳しく確認していきましょう。
非常時においても事業継続を可能とするための計画書
BCPは「事業継続計画」の意味であり、「ビーシーピー」と読みます。事業継続の危機に瀕した際に、あらかじめ取り決めておく計画を指します。
事業運営においては、以下の事態に直面するケースも少なくありません。
・自然災害(地震、台風、風水害など)
・火災
・大規模停電
・テロ攻撃
・重大なシステム障害
・情報漏洩
・風評被害
・SNSでの炎上
・従業員による不祥事
上記の事態は、多くのケースで突然起こります。何も対策を取っていなければ、倒産に追い込まれるかもしれません。BCPは有事の際にも影響を最小限に抑えるとともに、早期復旧と事業を継続するうえで重要です。
継続すべき業務と守るべき業務の水準が定められる
事業の運営や経営を揺るがす事態が発生した際には、すべての業務を通常どおりに行なうことが難しくなります。たとえば被災後は、出社できる従業員が限定されることでしょう。
このため、業務には優先順位をつけなければなりません。BCPでは、以下の事項が定められます。
・最低限継続すべき業務の選定
・提供可能なサービスレベル
・復旧までの時間
上記を定めることにより、どの業務から復旧されるか可視化できます。復旧時間も明確になるため、安心感も与えられます。
BCMや防災との相違点
BCPに関連する用語には、BCM(事業継続マネジメント)や防災があります。BCMはBCPを実施する枠組みやマネジメントのプロセスであり、BCPの策定や実施に欠かせません。社内においてBCPの重要性を理解してもらうことは、代表的な取り組みです。
一方で防災は、災害を未然に防ぐ活動を指します。一例として、風水害に備えるケースを見てみましょう。
・防災:浸水しにくいよう建物を改修する。止水板を設置し土のうを積む
・BCP:浸水した際に、別の拠点で業務を行なえるよう準備する
防災は事前の備え、BCPは有事の対応を決める点に違いがあります。
BCPを策定する3つのメリット
BCPの策定には、3つのメリットがあります。単に事業を守るという観点にとどまらず、攻めの経営につなげられるメリットも見逃せません。それぞれの観点について、どのようなメリットがあるか確認していきましょう。
業績悪化を最小限に食い止め、事業の縮小や廃業を防げる
適切なBCPの策定は、企業を守ります。以下の項目は、おもなメリットに挙げられます。
・他の工場での生産や他の事業所で業務が可能となり、事業を継続できる
・収入の減少が抑えられ、業績の悪化を最小限にとどめられる
・顧客や取引先への影響を抑えられる
・従業員の雇用を守ることが可能
・事業の縮小や廃業を防げる
たとえば製造機械の被災は、経営に深刻なダメージを与えうる事象です。しかし「有事の際は、他の工場で製造する」体制を整えていれば、業績へのダメージを最小限に抑えられます。後悔しないためにも、BCPの策定は欠かせません。
早期の復旧を実現でき、競合他社よりも優位に立てる
自然災害や大規模停電では、その地域で事業を営む多くの企業が被害をこうむります。しかし復旧の進捗は、企業により多種多様です。
万が一の事態に有効なBCPの策定は、他社に先駆けた復旧を強く後押しします。復旧した時点で需要が供給を大きく上回る状況であれば、貴社への注文が殺到することでしょう。復旧が遅れている企業のシェアを奪うことができ、競合他社よりも優位に立てる点は大きなメリットです。
取引先や顧客、株主からの信頼度が高まる
有効なBCPの策定は、平時においても役立ちます。有事への対策を備えていることが高く評価され、他社よりもリスクが少なく安心して取引できる企業とみなされることがその理由です。
これにより取引先や顧客からの信頼が高まり、貴社の企業価値が向上します。安定した、または良質な取引先の確保もしやすくなるでしょう。場合によっては、貴社でより良い取引先を選べる状況となるかもしれません。加えて株主からも、安心して投資を行なってもらえるメリットが得られます。
BCPを作るうえで重要な5つのポイント
BCPは、さまざまな事項を考慮したうえで策定しなければなりません。事前に考慮・検討した項目が多いほど、有事に役立つBCPとなります。ここでは5つのポイントについて、考慮や検討が必要な内容を確認していきましょう。
現状を正しく認識する
有効なBCPを策定するうえで、正しい現状認識は欠かせません。事業継続にどのようなリスクがあるか、万が一リスクが顕在化した場合はどのような悪影響があるのか、また対応可能なのか余すことなくリストアップしましょう。
リスクが事業継続に致命的なものであっても、また防止できないものであっても目を背けてはいけません。しっかり認識することは、事業継続を力強く後押しする第一歩です。
非常時においても継続すべき事業を洗い出す
非常時において、行なえる業務は限られます。限られたリソースを最大限に活かすためには、企業活動に不可欠の事業にリソースを集中することが重要です。
貴社が行なう事業を隅々まで洗い出したうえで、どのような事態になっても継続すべき事業はなにか決めましょう。「貴社が要とする事業はなにか」と問われた際に真っ先に挙げた項目は、非常時に継続すべき事業の一つです。
目標とする復旧時間や、提供可能なサービスレベルを定める
非常時には事業内容だけでなく、業務を遂行するレベルの低下も避けられません。事業継続に必須の業務であっても、一時的な停止を余儀なくされるケースもあるでしょう。BCPの策定においては、提供するサービスレベルを事前に定めておくことが重要です。また目標とする復旧時間を提示することも、被害の拡大防止と信頼を得るうえで欠かせません。
これらの決定には、顧客との協議を要する場合もあります。契約内容などを確認し、平時のうちに交渉を済ませることが重要です。
通常業務が行なえない場合の代替策を考える
通常業務が行なえない事態に備えて、代替策を考えることも重要です。以下の対応は、代表的な例に挙げられます。
・事業所が被災した場合は、他の被災していない事業所で業務を続行する
・材料や原料を供給する企業が被災した場合は、他の企業から調達する
・クラウド事業者のデータセンターが止まった場合は、他のクラウドサービスで処理を行なう
上記の対応は平時において、十分な検討を行なったうえで決めましょう。重大な事案が起きた時点であわてて決めると選択を誤り、事業継続に重大な悪影響を与えかねません。
従業員に事前の説明を行ない、理解を得ておく
BCPの遂行には、従業員の協力が欠かせません。それは、以下に挙げる3つの理由があるためです。
・業務の再開は、現場の協力が必須
・有事の際は本社から指揮命令が行なえず、現場の判断がすべてとなる場合もある
・迅速な対応が成否を分ける場合もある
このためBCPの重要性や発動基準、有事の際に取るべき行動について、従業員に事前の説明を行ない理解を得るプロセスが欠かせません。正確な判断を行なうためにも、なるべく単純明快な基準にするよう努めましょう。必要に応じて、教育や訓練を行なうことも有効です。
有事に役立つBCPを策定・運用する6つの手順
ここからは、いざというときに役立つBCPを策定し、運用する6つの手順を解説します。そそれぞれのステップでは何を行なうべきか、また何が重要なのか確認していきましょう。
目的を設定する
BCPの目的を設定することは、適切なBCPを策定するうえで最も需要なプロセスです。貴社が守るべき重要な項目はなにかを踏まえたうえで、十分に時間をかけて検討しましょう。経営理念などとの整合性を取ることも重要です。
目的に誤りがあると、事業継続に沿わないBCPができあがるおそれがあることに注意しましょう。
BCP策定に取り組む社内体制を整える
BCPを実行した影響は、全社におよびます。会社の一部門だけで決めるのではなく、多くの方を巻き込むことで実効性のあるBCPを策定できます。
このためBCPの策定はプロジェクトチームのように、部門横断型の組織をつくって行なうケースが多くなるでしょう。早期に体制を整え始動することをおすすめします。ビジネスチャットなど、非対面でも意見交換できるツールの活用も有効です。
重要な業務をリストアップする
企業にとって重要な業務を正しくリストアップすることは、BCPの成否を左右します。経営資源が限られる状況下においても優先すべき業務や事業を洗い出しましょう。以下の業務や事業は、選ばれやすいといえます。
・事業継続に不可欠の業務(経理業務、システム運用管理など)
・売上の大きい、または稼ぎ頭の事業
・企業の顔となっている事業
売上額だけでなく顧客への影響など多方面にわたる検討を行なったうえで、優先する業務や事業を決めましょう。
リスクを可視化し、復旧の優先順位をつける
多くの企業は、重要な業務や事業を複数持っています。BCPを策定する際には、想定されるすべてのリスクを洗い出し、分析したうえで復旧の優先順位を決めることが必要です。もし重要なリスクをリスクとして認識しないままBCPを策定すると、有事の際に機能しなくなるおそれがあります。
リスクの分析や可視化には、ビジネスインパクト分析(BIA)の活用が有効です。業績や顧客に与える深刻度、発生頻度、復旧までにかかる時間や停止が許容される時間などを踏まえて、どの業務を優先して復旧するか決めましょう。
非常時の対応や復旧方法を具体的に定める
非常時における対応方法や復旧方法を具体的に定めることも、BCPに含めるべき手順です。初動をスピーディーに行なうため、以下の項目を決めておきましょう。
・BCPを発動する基準
・BCP発動時の責任者
・BCP発動時の体制
災害発生から復旧には、以下に挙げる3つの段階があります。
1.被害状況の確認
2.応急処置の実施
3.本格的な復旧を行ない、通常業務へ戻す
それぞれについて誰が何を、いつどのように行なうべきか定めます。「ヒト・モノ・カネ」に加えて、体制や指示系統、情報の観点にも留意しましょう。行動に迷いがないよう、できるだけ具体的に定めることも重要です。
定期的に見直し、BCPをブラッシュアップする
BCPははじめから完璧である必要はなく、策定後も常に改善することが求められます。事業環境は常に変化し続けているため、作りっぱなしで安心しているといつの間にか実態と乖離し、役に立たなくなるおそれがあります。
策定したBCPは定期的に見直し、ブラッシュアップする取り組みが必須です。新たな知見や新しい技術を積極的に検討し、事業環境の変化にも迅速に対応しましょう。
貴社を守り競争に勝ち抜くためにも、BCPの早期策定を
有事における対応の差は、その後のシェアに大きな影響を与える場合があります。影響が去ったのちに優位な立場を得るためには、有事における素早く適切な対応が必要です。そのためには適切なBCPを策定し、実行しなければなりません。
貴社を脅かす事象は、いつ起こるのかわかりません。貴社を守り競争に勝ち抜くためにも、できるだけ早くBCPを策定し、有事に備えることが重要です。まずは事業継続を脅かすリスクがなにか、調査するところから始めてみてはいかがでしょうか。