汎用系のプロジェクトマネージャーとは?職種の内容や必要なスキルを徹底解説
本記事では、汎用系のシステム開発におけるプロジェクトマネージャーの担う役割、オープン系やWeb系のプロジェクトマネージャーと比べた際の業務内容、求められるスキルの違いを解説します。
本記事では、汎用系のシステム開発におけるプロジェクトマネージャーの担う役割、オープン系やWeb系のプロジェクトマネージャーと比べた際の業務内容、求められるスキルの違いを解説します。
キャリア
2023/06/22 UP
- キャリアパス
- 仕事内容
- 管理
かつて主流だった汎用系システムですが、今でも開発プロジェクトは少なくありません。とはいえ、汎用系のプロジェクトマネージャーについて詳しく知りたいと思っても、なかなか情報が見つからないことがあります。
インターネット上にはプロジェクトマネージャーに関するさまざまな情報がありますが、オープン系やWeb系を暗黙の前提として書かれたものも多くあります。そのため、これらの情報を鵜呑みにしてしまうと、汎用系のプロジェクトマネージャーについて誤った知識を持ってしまいかねません。
そこで本記事では、汎用系のシステム開発におけるプロジェクトマネージャーの担う役割、オープン系やWeb系のプロジェクトマネージャーと比べた際の業務内容、求められるスキルの違いを解説します。
汎用系のプロジェクトマネージャーはどういう職種か?
汎用系のプロジェクトマネージャーは、汎用系システムの開発を指揮する職種です。汎用系システムとは、汎用機(メインフレーム)というコンピューターを用いて処理を行なうシステムを指します。
汎用系システムのプロジェクト規模は大きくなりがちで、その分開発期間も長くなる傾向があります。そのため、腰を据えてプロジェクト管理を行なえるウォーターフォール型の開発がよく採用されます。
取引先から受注したシステム開発であれば、受注金額も大きく、その分プロジェクトマネージャーの責任も重くなりがちです。顧客との信頼関係も求められるため、汎用系のプロジェクトマネージャーは、各所とコミュニケーションを密に取り、良好な関係づくりに努める姿勢も必要です。
汎用系システムの代表例
汎用系システムは、大手企業や官公庁など、規模の大きい組織で使われやすいシステムです。また、汎用系システムは多種多様な業務で使われる傾向があります。
代表的なシステムとしては、以下のようなものがあります。
<代表的な汎用系システム>
・銀行の勘定系システム
・国や特殊法人、地方自治体など、官公庁で使われるシステム
・製造業で使われる、製品・部品管理システムや生産管理システム
・流通業のデータ管理システム
これらのシステムは、一つのミスが致命的な問題を生む可能性があります。そのため、高速性や堅牢性を備えている汎用機で処理を行う汎用系システムが採り入れられています。
オープン系やWeb系との相違点
汎用系のプロジェクトマネージャーは、オープン系やWeb系のプロジェクトマネージャーと異なる点がいくつかあります。
ここからは汎用系システムのプロジェクトマネージャーと、オープン系やWeb系のプロジェクトマネージャーの異なる点を解説します。
・オープン系との違い
汎用系システムのプロジェクトマネージャーと、オープン系のプロジェクトマネージャーの大きな相違点の一つは、ハードウェアを変更した際に、OSやシステムを変える必要があるかどうかです。
汎用系システムの場合、メーカーや機種ごとにOSが作られています。そのため、機種ごとに求められる知識が異なることが特徴です。一方、オープン系のOSはLinuxやWindowsが主流であり、ハードウェアのメーカーを問わず共通です。マルチベンダーに対応できるため、メーカーや機種ごとの知識はそれほど求められません。
また、顧客規模にも違いがあります。汎用系システムを活用する顧客企業の規模はオープン系に比べ、大きい場合が多いでしょう。たとえば、日本を代表する大手企業や官公庁などです。一方、オープン系のシステムは、大手企業もあれば中小企業のときもあり、さまざまな規模の企業で使われます。
・Web系との違い
汎用系とWeb系には、以下の点に違いがあります。
項目 | 汎用系 | Web系 |
---|---|---|
インターネットとの接続 | 必須ではない | 前提として開発が進められる |
システムの規模 | 大規模 | さまざま。小規模のシステムも多い |
開発期間 | 長期間にわたる場合が多い | さまざま。短期間で開発される場合も多い |
開発手法 | ウォーターフォール型開発が主流 | アジャイル型開発やプロトタイプ型開発が適している |
上表のように汎用系とWeb系には、多くの相違点があります。システムの規模や開発期間だけでなく、開発手法も異なります。特に開発手法の違いは、プロジェクト管理のやり方に大きく影響するでしょう。
なお、あくまで傾向ですが、汎用系のプロジェクトマネージャーは安全かつ確実にプロジェクトを進めることが求められ、Web系のプロジェクトマネージャーはスピードが求められる傾向があります。
汎用系プロジェクトマネージャーが活躍する場面
汎用系のプロジェクトマネージャーが活躍する場面は、大きく2つに分かれます。
汎用系システムの開発
汎用系システムの開発は、汎用系プロジェクトマネージャーが活躍する代表的な案件です。エンジニアやグループリーダーの時期に培った開発経験を活かす場面です。
汎用系システムには新規開発もありますが、追加機能の開発などのように既存システムをベースとした案件も多くあります。既存システムの仕様を把握し、適切な開発方針を決める際も、汎用系システムの開発スキルと経験は役立ちます。
汎用系からオープン系やWeb系への移行
近年は、汎用系システムからオープン系やWeb系への移行も進んでいます。移行の際は、現行システムの仕様や動作を理解するために汎用系システムの知識が必要です。汎用系プロジェクトマネージャーは、こうした移行時もスキルを活かせるでしょう。
なお、汎用系の機能や性能すべてをそのまま移行することが正解とは限りません。新しいシステムに何を移行し、何を変えるか判断する場面でも、汎用系プロジェクトマネージャーのスキルや経験が活きてきます。
汎用系プロジェクトマネージャーに求められる6つのスキル
汎用系システムはオープン系やWeb系と異なる点も多いため、プロジェクトマネージャーに求められるスキルも異なります。以下ではプロジェクトマネージャーに求められる6つのスキルを解説します。
メインフレームの知識や開発経験
メインフレーム(汎用機)に関する知識や開発経験は、求められるスキルの代表的な一要素です。多くのプロジェクトにおいて、メインフレームに関するスキルを活かせます。また、開発プロジェクトではCOBOLやPL/I、RPGに代表される、プログラミング言語のスキルも役立つことがあります。
なお、OSやソフトウェアは、メインフレームごとに対応したものが用意されます。メーカーや機種が異なると、機能や操作方法が大きく変わる可能性があるため、機器の仕様や特徴を把握したうえでプロジェクトを進める必要があります。
プロジェクトマネジメントに関するスキル
汎用系プロジェクトマネージャーが任されるプロジェクトは、しばしば大規模となります。そのため、プロジェクトマネジメントに関する正しい知識も求められることがあります。PMBOKなどプロジェクト管理に関する知識を持ち、実践した経験を求める案件もあるので、しっかり学んでおきましょう。
スキルの証明をするために、資格を取るのも有効です。この分野では「PMP」や「プロジェクトマネージャ」といった著名な資格があります。学習を進める課程で業界標準の手法を学ぶこともできます。資格の取得まで至らなくても、プロジェクトマネジメントの手法を改善する手がかりが得られるかもしれせん。
また、汎用系プロジェクトは、所属するエンジニアの数が多くなりがちなため、まとまった人数を率いたマネジメント経験も求められることがあります。多くの人数を率いた経験があれば、プロジェクトを任されるチャンスが増えるでしょう。
おもな開発手法の理解
汎用系のシステムは、大規模開発に適したウォーターフォール型が選ばれやすい傾向がありますが、案件によってはアジャイル型開発など、ほかの手法が選ばれることもあります。
そのため、汎用系プロジェクトのマネージャーになるのであれば、ウォーターフォール型開発だけでなく、主要な開発手法は一通り理解しておきましょう。
なお主要な開発手法については、こちらの記事も合わせてご確認ください。
プロトタイプモデルとは?メリットやデメリット、他の開発手法との相違点も解説
業務知識
システムを構築する目的は、業務処理を迅速かつ正確に行なうことです。プロジェクトでは以下のように、正確な判断を行なううえで業務知識を要する場面が頻繁に訪れます。
・システムの要件を決める
・システムの動作や仕様を決定する
・テストの結果を評価する
・トラブルが発生した際の対応方法を決める
・顧客に対して説明や交渉を行なう
プロジェクトマネージャーは担当する業種や企業のルールに合わせて、必要な業務知識を身に付ける必要があります。とはいえ、経験ある業界ばかりを任されるとは限りません。未知の業界や新しい企業の担当になった場合は、日々の業務と並行して業務知識を習得し、実務に活かすことが求められます。
ネゴシエーションスキル
汎用系プロジェクトマネージャーは、ネゴシエーションスキルも重要です。プロジェクトメンバーや顧客とは長い付き合いになるためです。
汎用系システム開発だけに限りませんが、開発プロジェクトでは、しばしば予想外の事態が発生します。顧客などから難しい要求を受けることもあるでしょう。そのような事態の際、安易に決断してプロジェクトメンバーに無理を強いる選択を取れば、プロジェクトに重大な影響を及ぼしかねません。
また、プロジェクトメンバーに対しても、日々さまざまな相談を持ちかける必要があるでしょう。簡単に断ち切れない関係だからこそ、プロジェクトマネージャーには、節度を持った関係性を作るためのネゴシエーションスキルが求められます。
「聴く力」と決断力
汎用系プロジェクトの規模は大きくなりがちなため、メンバーとプロジェクトマネージャーの距離は遠くなりがちです。しかし、プロジェクトマネージャーが一方的に指示を出しているだけでは、各メンバーが持つノウハウを活かしきれません。意見や要望を丁寧に聞き取り、プロジェクトメンバーの知恵を集めれば、実務に活かすことができるうえメンバーのやる気も喚起できます。
このように、プロジェクトマネージャーにとって「聴く力」は重要なスキルの一つですが、一方で決断力も求められます。プロジェクトマネージャーは、責任者であることを忘れてはいけません。多くの意見を集めたうえで、方針の決定は自らの判断と責任で行ないましょう。「○○さんが発案したのだから、失敗した場合は責任を取ってくれ」という姿勢では、メンバーの萎縮を招きます。ときには複数のメンバーから相反する提案がされる場合もありますが、その際もより良い方法を選ぶ決断力が求められます。
汎用系プロジェクトマネージャーになるためのキャリアパス
汎用系システムのプロジェクトマネージャーになるキャリアパスは、以下のステップが一般的です。
1.プログラマーやSEとして活躍する
2.グループリーダーになり、チームをまとめて成果をあげる
3.プロジェクトマネージャーとして手腕を発揮する
このステップは、業界全体で見ても標準的です。ITエンジニアの多くが想像するキャリアパスの一つですから、汎用系だからといって特に異なる点はありません。
仕事と必要なスキルを理解し優秀なプロジェクトマネージャーを目指そう
汎用系システム開発のプロジェクトは、オープン系やWeb系よりも規模が大きくなりがちです。そのため、プロジェクトの期間、顧客とかかわる期間も長くなる傾向があります。
汎用系システムのプロジェクトを遂行するには高度なスキルが求められますが、プロジェクトを完遂した際の喜びはひとしおです。
プロジェクトマネージャーを目指している方は、本記事で解説した6つのスキルを参考に必要な知識を学び、経験を積んでいきましょう。