日本政府が進めようとしているデジタルガバメントとは?
デジタルガバメントは政府や自治体だけでなく、一般市民や企業の事業活動にも大きな恩恵と影響を与えます。内容を把握することは、より良い日々を送るうえで欠かせません。本記事でデジタルガバメントとはなにか、しっかり確認していきましょう。
デジタルガバメントは政府や自治体だけでなく、一般市民や企業の事業活動にも大きな恩恵と影響を与えます。内容を把握することは、より良い日々を送るうえで欠かせません。本記事でデジタルガバメントとはなにか、しっかり確認していきましょう。
知識・情報
2022/09/08 UP
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デジタルガバメントは、注目されている用語の一つです。「デジタルを活用した政府」という連想まではできても、内容を知らない方は多いのではないでしょうか。
デジタルガバメントは政府や自治体だけでなく、一般市民や企業の事業活動にも大きな恩恵と影響を与えます。内容を把握することは、より良い日々を送るうえで欠かせません。本記事でデジタルガバメントとはなにか、しっかり確認していきましょう。
そもそもデジタルガバメントとは何か?
まずデジタルガバメントとはどのような意味か、確認していきましょう。日本国内だけでなく、国外の対応状況も含めて解説します。
ITを活用して効率や効果を上げている行政のこと
デジタルガバメントとは、IT技術を行政のあらゆる分野において徹底的な活用を行なうことにより、効率的・効果的な行政を実現する状態を指します。これは、業務を単にIT化するだけではありません。実現の過程において、以下の改革も行なわれます。
・省庁間や国と地方など、行政機関の縦割りを解消
・行政サービスそのものの見直し
・行政と民間との協働
デジタルガバメントを実現する過程で行政の改革が行なわれ、より使いやすい行政サービスになることが期待されます。
日本ではデジタル庁が牽引役
日本では、デジタル庁がデジタルガバメントの牽引役を担います。デジタル庁は各省庁や地方自治体との調整や連携を行ない、デジタル化だけでなく行政改革も後押しすることは特徴の一つです。デジタル化の実行においては全体を俯瞰し、最適化に向けた役割を果たすことが期待されています。
多くの国がデジタルガバメントを実現している
デンマークやエストニアは、デジタルガバメントを実現した代表的な国に挙げられます。どちらもデジタルIDを90%以上の国民が保有し、ほとんどの手続きをオンラインで完結できる仕組みが整っています。
シンガポールやインドではIDと銀行口座との紐づけを事前に行なうことで、給付金の支給をスピーディーに実施できました。国外ではデジタルガバメントの実現により、多くの人が恩恵を受けています。
政府がデジタルガバメントに定める2種類の原則を解説
日本政府はデジタルガバメントの実現に向けて、以下の項目を定めています。
・デジタル化3原則
・サービス設計12箇条
それぞれどのようなものか、概要を確認していきましょう。
デジタルガバメントの基本となる「デジタル化3原則」
デジタルガバメントの基本的な姿勢は、以下で示す「行政サービスのオンライン化実施の3原則」(デジタル化3原則)に定められています。
※引用
・デジタルファースト(個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結)
・ワンスオンリー(一度提出した情報は二度提出が不要)
・コネクテッド・ワンストップ(民間を含む複数の手続・サービスを一元化)
すぐに使えて簡単・便利なサービスを目指すことを重点に挙げています。加えて、官民連携の取り組みが記載されていることは画期的です。市民や事業者の利便性を第一に考えた、あるべき原則といえるでしょう。
「サービス設計12箇条」は行政サービスを設計するよりどころ
「サービス設計12箇条」は、市民や事業者が使いやすいサービスを提供するノウハウをまとめたものです。加えて、これからの行政サービスを設計するよりどころともなる項目です。
※引用
・第1条 利用者のニーズから出発する
・第2条 事実を詳細に把握する
・第3条 エンドツーエンドで考える
・第4条 全ての関係者に気を配る
・第5条 サービスはシンプルにする
・第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
・第7条 利用者の日常体験に溶け込む
・第8条 自分で作りすぎない
・第9条 オープンにサービスを作る
・第10条 何度も繰り返す
・第11条 一遍にやらず、一貫してやる
・第12条 システムではなくサービスを作る
出典:内閣官房「サービスデザイン思考によるサービス・業務改革(BPR)を進めよう」
以下の事項は、サービス設計12箇条により推進される項目といえるでしょう。
・アジャイル開発
・最新技術の積極的な活用
・API連携や外部データの活用
・はじめから完璧を目指さない取り組み
行政サービスに関するシステム開発では、「自前でつくるべき箇所は利便性を考えてしっかり作り込み、外部と連携できる箇所は積極的に活用してコード数を減らす」取り組みが求められます。
7項目の「デジタルガバメント実行計画」を紹介
「デジタルガバメント実行計画」は、デジタルガバメントを具体的に推進する計画で、7つの項目に分かれています。ここでは2020年に改定された計画をもとに、記されている項目を確認していきましょう。
サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底
さきに解説した「サービス設計12箇条」に基づき、利用者がすぐ使えて簡単・便利なサービスの実現を目指す項目です。あらゆる行政サービスがデジタル化されることに加えて、業務改革の徹底も挙げています。単なるIT化にとどまらず、利用者の視点に立った改革も求めています。
なお、BPRに関しては、こちらも合わせてご覧ください。
BPRとはなにか?導入のメリットや進め方を紹介
国・地方デジタル化指針
「国・地方デジタル化指針」では、行政サービスの利便性を高めるうえで効果的な施策が盛り込まれています。
・社会保障・税・災害以外の分野にも、情報連携を広げる
・国と地方の情報システムの共通基盤となる仕組みの整備
・マイナンバーカードの機能強化(スマートフォンへの搭載、国や自治体が発行する証明書等との一体化など)
・マイナポータルの改善
改革すべき項目が広範囲にわたって盛り込まれていることは特徴的です。
デジタルガバメント実現のための基盤の整備
システム基盤やセキュリティ、情報の取扱いに関する項目が並びます。
・クラウドサービスの利用を検討するよう徹底する
・政府全体で共通利用するシステム等の整備
・業務継続性の担保
・情報セキュリティ対策の徹底や個人情報の保護
・データの整備やオープン化の強化
国民の安全・安心を担保しつつ、適材適所のシステムを選ぶ方向性がうかがえます。
一元的なプロジェクト管理の強化等
費用の抑制とより良いシステムづくりの両立を目指す取り組みです。
・公務員試験によるIT人材の採用や、外部の高度IT人材を活用する仕組みを導入
・契約締結前に、提案内容について技術的な会話を可能とする仕組みの試行
・システム改修に関わる経費を、令和2年度から令和7年度までの間に30%削減
これにより設計段階での精度が高まり、不具合や仕様の相違といったトラブルの低減が期待できます。
行政手続のデジタル化、ワンストップサービス推進等
ここでは手続きにおける書面・押印・対面の見直し、ワンストップサービスの推進、添付書類の省略などが挙げられています。利便性の向上と手続きの迅速化を実現できるため、利用者は大きなメリットを感じる項目となるでしょう。
デジタルデバイド対策・広報などの実施
いわゆるプロモーションや情報格差を縮めるための項目で、デジタルガバメントに興味・関心を持ってもらうことも目的に含まれます。デジタル活用支援員の仕組み、国民参加型イベントの実施、SNSや動画の活用などが挙げられています。
地方公共団体におけるデジタルガバメントの推進
自治体における手続きの改善は、国民が行政のデジタル化を実感できる場面です。自治体をはじめとした、地方公共団体におけるデジタルガバメントの推進は外せません。
・自治体の業務システムの標準化や共通化
・クラウドサービスやAI、RPAによる業務効率化を推進
上記の取り組みにより、行政のデジタル化を後押しします。
デジタルガバメントの実現で得られる4つのメリット
デジタルガバメントの実現により、さまざまなメリットが得られます。ここでは4つの項目を取り上げ、どのようなメリットが得られるか確認していきましょう。
いつでもどこでも必要な手続きを行なえる
いつでもどこでも必要な手続きを行なえることは、デジタルガバメントのメリットを実感できる代表的な項目です。インターネットさえあれば早朝・深夜や休日でも、自宅やオフィスから必要な手続きが可能。わざわざ休暇を取って窓口に出向く必要がなくなることに、便利さを感じる方は多いでしょう。
行政のワンストップ化を実現できる
行政のデジタル化により、情報の共有や連携がしやすくなります。制度を整えることで、他の組織が持つ情報も瞬時にチェックできるわけです。
これにより、行政のワンストップ化を実現できます。複数の窓口を訪問する手間が省けるため、手続きに要する時間を最小限に抑えられることは大きなメリットといえるでしょう。
事務処理をスピーディーに行なえる
事務処理の迅速化も、デジタルガバメントがもたらすメリットに挙げられます。例えば消費税や所得税の還付申告は、書面よりもe-taxで提出したほうが1週間以上早く処理されます。
迅速な事務処理により、ビジネスチャンスを逃しにくくなることも見逃せないメリットです。企業はベストなタイミングで申請できるため、企業の競争力強化を支援する効果も期待できます。
行政コストの削減と住民にフィットしたサービスを両立できる
人口減少社会では、税収が減少します。一方で社会の多様化により、住民が求めるサービスはますます増えることでしょう。相反する要求も、デジタルガバメントならば実現できます。
デジタル化や業務効率化により、無理なく行政コストを下げることが可能です。またデジタル技術の活用により、手軽に住民の要望を得られます。本当に支援が必要な方へ、手続きなく給付できるメリットも見逃せません。かゆいところに手が届く施策を打てるため、行政への信頼も高まることでしょう。
デジタルガバメントの推進における4つの課題
デジタルガバメントの推進には、クリアすべき課題もあります。ここでは実現を大きく左右する4つの項目を取り上げます。どのように進めるべきか考えていきましょう。
プライバシーやセキュリティの確保は大前提
デジタルガバメントの実現には、以下の項目を満たすことが必須です。
・国民から信頼される政府
・住民から信頼される行政
上記のとおり、何よりも信頼されることが第一です。プライバシーやセキュリティを確保したうえで、情報の利活用について利用者の同意を取ることが求められます。
行政には変革を恐れない姿勢が求められる
行政に従事する方は、とかく「前例踏襲主義」「完璧」を求めがちです。なるべく影響を少なくすべく、今の仕組みを変えないままデジタルに置き換えることは一つの方法ですが、これではデジタルガバメントを実現できません。
なぜならデジタルガバメントは仕組みや役割を変革し、住民のニーズや時代に合ったサービスの提供も求めているためです。この実現には、変革を恐れない姿勢が欠かせません。不要な手続きを削る、ペーパーレスを推進することなどは、最も基本的な取り組みに挙げられます。
マイナンバーカードの普及も重要
デジタルガバメントの実現には、マイナンバーの活用が欠かせません。銀行口座と紐づける「公金受取口座」や健康保険証、運転免許証などとの統合により、事務処理の効率化や迅速化、公平・公正な行政を実現できます。この点でマイナンバーカードの普及とともに、国民がマイナンバーに関わる手続きを円滑に行なうことも重要なポイントです。
なおマイナンバーカードを発行しなくても、マイナンバーはすでに付与されています。このため「個人番号をつけられたくないのでマイナンバーカードを作らない」ことに意味はありません。
電子申請を必須とする手続きが増えている
一般市民や企業の側にも、デジタルガバメントに関する課題があります。インターネットの普及により、電子申請のみ受け付ける手続きが増えていることはその一例です。さきに解説した確定申告のように、電子による申請でインセンティブが得られる場合もあります。
電子申請が求められる手続きは、ますます増えることでしょう。時代に乗り遅れないためにも最新情報をチェックし、電子申請の活用が求められます。
デジタルガバメントの動向に注目し適切に対応しよう
日本では今後、行政のIT化が飛躍的に進むものと見込まれます。さまざまな新しいサービスが登場することでしょう。私たちは最新の情報をチェックし、適切に対応しなければなりません。またデジタルガバメントの進展にともない、利用者自身もデジタルへの対応が必要です。
これからの時代は政府や地方自治体の動向や各種メディアが発する情報に注目し、時代の要請に合った行動を取ることが求められます。