パソナについて
記事検索

適応型人工知能は従来のAIとどう違う?特徴やメリット、期待される分野も紹介

適応型人工知能の特徴や活用するメリット、期待される分野について詳しく解説します。注目される技術の内容をしっかり確認していきましょう。

適応型人工知能は従来のAIとどう違う?特徴やメリット、期待される分野も紹介

適応型人工知能の特徴や活用するメリット、期待される分野について詳しく解説します。注目される技術の内容をしっかり確認していきましょう。

知識・情報

2023/01/26 UP

適応型人工知能は、英語で「Adaptive AI」とも呼ばれています。Gartner社は、2023年のトレンドとなる10の技術の一つに取り上げました。今後おおいに注目を浴びることが期待されます。

一方で世の中には、すでにさまざまな形で人工知能(AI)が活用されています。適応型人工知能は、現行の人工知能とどのような違いがあるのでしょうか。相違点を知ることは、人工知能の適切な活用とさらなる普及に役立つ重要なポイントです。

この記事では適応型人工知能の特徴や活用するメリット、期待される分野について詳しく解説します。注目される技術の内容をしっかり確認していきましょう。

適応型人工知能とはなにか?

そもそも適応型人工知能とは、どのような特徴を持つものでしょうか。まずは概要を確認していきましょう。

トレーニングで学ばなかった情報も知識として活用できるAI

適応型人工知能は、トレーニングで学ばなかった未知の情報も知識として活用し、以後の判断に活かせます。判断を下しながら学習を進められることは、おもな特徴に挙げられます。従来の人工知能では備えていない機能であるとともに、私たち人間により近い学習方法です。

過去に入力された情報すべてをもとに、より適切な判断を下せることは適応型人工知能の強みです。経験を積むたびに、より賢くなっていくことでしょう。激しい変化への対応が求められる時代において、求められる技術の一つです。

適応型人工知能における3つの原則

適応型人工知能には、以下に挙げる3つの原則があります。

・堅牢性(高いアルゴリズムの精度を達成する能力)

・効率性(リソースの使用率を低く抑える能力)

・俊敏性(要求に応じて運用状況を柔軟に変更する能力。アジリティとも呼ばれる)

これらの原則により従来のAIよりも良い機能を提供し、より良い社会を実現するきっかけとなります。

従来型の人工知能が持つ3つの弱点

従来型の人工知能が持つ3つの弱点 クリックして拡大

適応型人工知能が注目されている背景には、従来型の人工知能にいくつかの弱点があるためです。このなかには、AIの普及を妨げかねない項目も含まれることは見逃せません。どのような弱点があるか、確認していきましょう。

あらかじめ学習した範囲外の状況に対応できない場合がある

従来型の人工知能では、トレーニングと本稼働後のフェーズが別々になっています。人工知能の学習はトレーニングのフェーズに限られ、本稼働後は入力されたデータの判定や将来の予測に特化します。

この特徴は、変化の激しい状況に置かれた際に不都合な状況を招きます。知識をアップデートしなければ、すぐに陳腐化するリスクが高いためです。未知の状況に対応できず、適切なアウトプットを出せない状況も増えることでしょう。苦労してトレーニングしても、すぐに使い物にならなくなるリスクがあることに注意が必要です。

運用開始後に得られた知識から学習できない

トレーニングと本稼働後のフェーズが別になっていることは、運用開始後に得られた知識から学べないという問題も引き起こします。従来型の人工知能の場合、新しい知識を覚えさせる際にはトレーニングを再度実施し直さなければなりません。

あまり変化がない状況であれば、この方法でも良いでしょう。しかし変化の激しい分野で人工知能を用いる場合は、頻繁にトレーニングし直す手間がかかることに注意しなければなりません。その都度トレーニングの時間を確保しなければならないことは、デメリットの一つに挙げられます。

学ぶジャンルが変わると過去に学んだ内容が失われる

従来的の人工知能における学習では、「破局的忘却」と呼ばれる現象が起こることも注意しておきたいポイントです。破局的忘却とは、学ぶ対象が変わると過去に学んだ内容が失われることを指します。例えば自転車について学んだあと新たに自動車だけを学んだ場合、はじめに学んだ自転車の内容は失われます。

過去に学んだ内容を積み上げることができない点は、注目すべきデメリットといえるでしょう。適応型人工知能であれば継続的な学習ができるため、このような不都合は起こりません。これまで得た知識を積み重ね、より良い判断に活かすことが可能です。

適応型人工知能を選ぶ3つのメリット

適応型人工知能は、従来のAIが持つ課題を克服する特徴を持っています。より良いビジネスや社会の実現にもつながることでしょう。ここからは適応型人工知能を選ぶことで得られる3つのメリットを取り上げ、解説していきます。

社会の変化にも適応できる

適応型人工知能は社会の変化にも素早く対応し、いつでも適切な情報を提供します。これはリアルタイムで新しい知識を得ながら判断できる、適応型人工知能ならではのメリットです。

適応型人工知能は継続的な学習により、どのように判断すべきかという点について常に改善を続けています。本稼働後に起こった変化に対しても、迅速に対応できるわけです。新しい情報により方針の大幅な変更が必要となった場合でも、適切な対応が可能です。

積み上げ型の学習が可能

適応型人工知能は継続的な学習手法が考慮されているため、積み上げ型の学習が可能です。重要な知識は忘れないまま、新しい知識を学べるよう工夫されています。もちろん過去に得た知識をもとに、新しい知識を得ることも可能です。

いちいち一から十まで学び直す必要がなく、運用しながら知識を増やせることは大きな強みです。「破局的忘却」のリスクがある従来型の人工知能と比べたメリットは、一目瞭然といえるでしょう。

利用者や顧客の満足度向上につながる

適応型人工知能により、利用者や顧客の満足度、顧客体験の向上につながることも見逃せないメリットに挙げられます。今まさに直面している状況に合わせたアドバイスや情報を提供でき、課題の解決に役立つためです。

利用者や顧客は貴社の商品やサービスを使うことで、より良い結果を得られるでしょう。顧客満足度の向上により継続率がアップするほか、良い口コミの情報など社外での評価が上がることも期待できます。

適応型人工知能の活用が期待される4つの分野

適応型人工知能の活用が期待される4つの分野 クリックして拡大

適応型人工知能は、さまざまな分野での活用が期待されています。国外はもちろん、日本国内でも活用への取り組みがみられます。代表的な4つの分野について、取り組みやメリットを確認していきましょう。

その1:チャットボット

チャットボットはAIを活用し、従業員の代わりに顧客と対話するサービスです。AIのなかには、決まりきった内容の回答しかできないものもあります。しかし適応型人工知能は以下の特徴を持つため、より優れた応答を実現します。

・顧客のニーズを把握し、適切な回答を提示できる

・人間の話し方や言葉にならって会話できる

・最新の情報に速やかに対応し、回答に組み込める

このため、顧客の信頼度も高まることでしょう。運用時間の延長など、利便性をアップしながらコストを削減できる効果も得られます。

その2:One to One マーケティング

One to Oneマーケティングも、適応型人工知能を活かせる分野の一つです。時々刻々と変化する顧客情報にも適時適切に対応可能。また顧客情報を細かく分析してパーソナライズを行ない、一人ひとりにマッチした施策を実施できます。変化への対応ときめ細やかなサービスの提供を実現できるわけです。

その結果、より良い顧客体験の提供が可能となります。適応型人工知能は、より良いマーケティングの実現を後押しする技術といえるでしょう。

その3:エッジコンピューティング

適応型人工知能は、コンピューターが求めるリソースを動的に調整します。より低いスペックの機器でシステムを動かせるほか、ユーザーの近くでアプリケーションを動かす「エッジコンピューティング」にも対応します。IoT機器など低いスペックの機器でシステムを動かせることが、その理由です。

このため機器の構成を変えることなく、より高性能のシステムを使えることが期待できます。

その4:患者の重症化リスクを判定

適応型人工知能は、医療における活用も期待されています。例えば、国内初めてとなる「アダプティブAI」としての医療機器承認を目指している企業がいます。これは、以下のデータをもとに、患者のリスクスコアを数値化して提示することが特徴です。

・基礎疾患

・血中酸素濃度や皮膚温など、患者に関するデータ

・機器の使用履歴

リスクスコアの活用により患者の重症化リスクを客観的に把握でき、適切な医療機関への振り分けや治療の実施につなげることが可能です。

適応型人工知能は社会におけるAIの活用を後押しする技術

適応型人工知能は、より人の思考に近いシステムです。人間の役割を代替するシーンも、増加することでしょう。長時間労働や人手不足などの解決も期待できるなど、社会におけるAIの活用を後押しする技術です。

実際にIT業界はもちろん、他の業界でも適応型人工知能がクローズアップされ、実用化を目指した活動が進められています。適応型人工知能は低コストで高品質な顧客対応やサービスを実現する、期待の持てる技術といえるでしょう。