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スマートシティとは?注目される理由や国内・海外の事例を簡単に解説

スマートシティの定義や、注目を集めている理由のほか、日本国内と海外で実際に行なわれている取り組みについて紹介します。

スマートシティとは?注目される理由や国内・海外の事例を簡単に解説

スマートシティの定義や、注目を集めている理由のほか、日本国内と海外で実際に行なわれている取り組みについて紹介します。

知識・情報

2020/12/22 UP

近年テレビやニュースで都市開発の話題に触れる際、スマートシティという言葉を目にする機会が増えてきました。

スマートシティとは、どのような街なのでしょうか。

ここではスマートシティの定義や、注目を集めている理由のほか、日本国内と海外で実際に行なわれている取り組みについて紹介します。

スマートシティとは? - 取り組みがスタートした背景

スマートシティ(Smart City)は、2000年頃から使われていた言葉です。もともとは地球温暖化などの環境問題や、エネルギー産業の振興に関する取り組みとしてスタートした考え方でした。

国土交通省はスマートシティを「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行なわれ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義しています。

つまりスマートシティ化とは、IoTなどの先進的技術を活用して環境に配慮しながら地域のサービスを効率化し、課題解決を図るとともに、利便性を含め新たな価値を生み出すことを目的とした取り組みのことを指します。

IoTの詳細については以下記事をご参照ください。
IoTの意味とは?IoTの活用事例と将来性について

スマートシティはなぜ注目されるのか?

スマートシティの取り組みは世界各国で推進されています。その理由は、将来の人口増加と都市部への人口集中があります。

世界の人口は、現在の77億人から2050年には97億人に増加する見込みといわれています。今後30年で20億人もの人口が増加した場合、その分エネルギーの消費も劇的に増えることが予想されます。エネルギーをいかに効率的に、無駄なく供給するかが大きな課題となっているのです。

日本においては、人口減少と超高齢社会、都市部への人口集中も深刻な問題です。こうした問題に対して、日々進歩する技術をまちづくりに取り込み、人々の生活を支えるサービスが整った持続可能な地域構造が求められています。

スマートシティ化とは先端技術を用いて、都市や地域の抱える課題を、人と環境の両方に配慮しつつ解決する取り組みなのです。

【国内】スマートシティの3つの事例

このように注目されているスマートシティですが、日本国内では、スマートシティの実現に向けどのような取り組みがなされているのでしょうか。ここでは3つの事例をご紹介します。

1.北海道札幌市:DATA-SMART CITY SAPPORO

札幌市はスマートシティに向けた取り組みとして、ICT活用戦略を策定しています。

ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術のことです。札幌市ではオープンデータを活用し、生活・経済・教育・行政などの生産性と質を向上させ、暮らしの利便性向上と経済の活性化を目指す取り組みが行なわれました。

ICT活用戦略の一環としてDATA-SMART CITY SAPPOROを開設し、オープンデータ活用の普及と促進を図っています。これは地域で発生したデータの活用を促進することにより、データの地産地消を目指す取り組みです。

札幌市はスマートシティ化への取り組みを通し、マネジメント基盤の構築や運営ノウハウを全国へ発信することを目的としており、地域全体の価値の創造も期待されています。

2.福島県会津若松市:会津若松スマートシティ計画

会津若松市の取り組みは、2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興支援から始まりました。住民の生活を立て直すための手段として、スマートシティ化による地方創生が推進されたのです。

会津若松市は、ICTを活用した地方創生のモデル都市となり、他の地域に展開可能なモデルとなることを目指しています。スマートシティ計画は、地域経済の活性化、安心して快適に生活できるまちづくり、まちの見える化の実現という3つの視点をもとに推進されています。

地域経済の活性化に向けて、首都圏などのICT関連企業が移転する際の受け皿となるサテライトオフィスや、ICTオフィスであるスマートシティAiCTを開設しています。若者がやりがいを感じる仕事を増やすことで、首都圏への人材流出を抑制する目的もあります。

また地域情報ポータルサイトの開設や母子手帳の電子化、防災情報のオープンデータなど、住民の生活に密着した取り組みを多く進めることで、住民が納得感をもってスマートシティ計画に参加することができています。

3.福岡県北九州市:北九州スマートコミュニティ創造事業

北九州市は、経済産業省が次世代エネルギー・社会システム実証地域として2010年に選定した地域の一つです。

北九州市は低炭素社会の実現を目指し、地域のエネルギーと需要に応じた役割をデザインしたまちづくりを推進しました。

スマートグリッドを経済成長のための新たな産業とし、新しい交通システムの構築やライフスタイルの変革など、市民生活の向上や地域の課題解決に向けた取り組みが行なわれました。

地域のエネルギーを地域で無駄なく使い切るための実証では、10%程度の省エネを実現しています。

【海外】スマートシティの3つの事例

ここまで国内の事例を紹介してきましたが、スマートシティ化の取り組みは、海外でも盛んです。ここでは3つの事例をご紹介します。

1.アメリカ・シカゴ:Array of Things (AoT)

2015年にスタートしたAoTは、全米で初めてIoTの都市環境への導入によるスマートシティ化を推進しました。

AoTとは、シカゴ市内の街灯に設置されたセンサー・モジュールのことです。これは温度、気圧、光、振動、大気の質、交通量などの環境情報やインフラに関するデータを集めることができる装置です。収集した大量のデータは、研究者や一般市民に無償で提供されます。

多くの人がこのデータを活用して、地域や環境に関する新たな研究やビジネスを始めることができます。さまざまな取り組みが集まることで、シカゴをより住み良いまちにすることがAoTの目的なのです。

2.エストニア:電子政府と仮想住民

エストニアは電子政府や電子国家とも呼ばれ、行政サービスの99%がデジタル化されています。すべての国民が電子身分証明書を所持しており、慎重な判断をともなう結婚・離婚・不動産売買以外はすべてオンラインで手続きが可能です。

行政サービスのデジタル化は普及が進んでおり、国民もサービスを受け入れて活用しています。国民が行政手続きの多くをデジタルで行なうことで、手続きに対応する職員もスムーズに業務を行なうことができるのです。

2014年にはe-Residency(仮想住民)という取り組みもスタートしました。申請が通ればエストニアの仮想住民になることができるというもので、パスポートと顔写真、手数料の100ユーロがあれば申請が可能です。仮想住民になると、世界のどこにいてもエストニアで会社の設立や銀行口座の開設ができるようになります。

3.中国・杭州市:ET都市ブレイン

杭州市はアリババが開発したAIプラットフォームが導入しました。リアルタイムの都市データを収集・活用し、都市の課題解決や環境問題を解決する取り組みを行なっています。AIがリアルタイムに情報を分析することで、状況に最適な対応を自動で行なうことができるのです。

杭州市は渋滞などの交通問題を抱えていました。そこでAIがライブカメラの映像をリアルタイムで分析し、都市全体の信号機を操作して全体的な渋滞を緩和することに成功しています。さらに救急車などの緊急対応車両が現場に急行できるよう、信号機を調整することも可能です。

持続可能な社会の実現に向けたスマートシティの取り組み

持続可能な社会の実現に向けたスマートシティの取り組み

スマートシティ化とは、人口の集中している都市部、若い世代の人口流出が起きている地方、それぞれの課題をAIやIoTなどの最先端技術を用いて解決するための取り組みです。

暮らしに深く関わる問題だからこそ、地域住民をいかにプロジェクトに組み込むことができるかが、取り組みの成功を左右するといえるでしょう。