今注目のローコード開発とは?メリットやデメリットについて解説
変化に迅速に対応する観点で、『ローコード開発』という手法が世界的に注目を浴びています。本記事ではこの意味や導入のメリット・デメリットなどについて紹介します。
変化に迅速に対応する観点で、『ローコード開発』という手法が世界的に注目を浴びています。本記事ではこの意味や導入のメリット・デメリットなどについて紹介します。
知識・情報
2021/03/16 UP
- メリット
- 技術
令和の時代に入り、社会の変化はますます激しくなっています。変化に対して柔軟に対応する経営は、どの企業にも必須の課題です。加えてリモートワークなど、新しい働き方への対応も求められています。企業の発展は、新しいビジネススタイルを確立できるかどうかにかかっているといえるでしょう。
変化に迅速に対応する観点で、『ローコード開発』という手法が世界的に注目を浴びています。本記事ではこの意味や導入のメリット・デメリットなどについて紹介します。
ローコード開発とはなにか
ローコード開発はマウスなどを利用し、ビジュアル的な操作でシステム開発を行なう手法です。2014年にアメリカのフォレスター・リサーチ社が、コーディングの量を大きく削減する開発手法として紹介したことから広まりました。日本では『超高速開発』とも呼ばれています。
ローコード開発は、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で開発できることが特徴です。このため、プログラミングスキルが高くない方でも開発しやすいことが挙げられます。
ノーコード開発との違い
ローコードと関連する用語に、『ノーコード』があります。それぞれの違いについて、解説していきましょう。
・ローコード
ローコードは画面操作を多用するものの、まったくソースコードを書かないわけではありません。画面操作で対応できない部分は、ソースコードを書く必要があります。
一方でAPIを活用した機能の拡張や他システムとの連携が可能な点は、メリットに挙げられます。大規模なシステムにも向く開発手法といえるでしょう。
・ノーコード
ノーコード開発は、ローコードの『画面上の操作でシステム開発を行なう』方向性を徹底した手法です。開発はソースコードを書かずに行なわれますから、プログラミング言語を知る必要はありません。
一方で機能が限定され、拡張性も高くないことには注意が必要です。他システムと連携しない、小規模な開発に適しているといえるでしょう。このため導入前には、何ができるか機能を確認することが重要です。
ローコード開発が注目されるようになった3つの背景
ローコード開発が注目を集めるようになった背景には、いくつかの要因があります。ここでは主な3つの要因を取り上げ、それぞれの背景を見ていきましょう。
社会環境や顧客の要望の変化に、迅速に対応する必要がある
顧客の要望は多種多様となり、社会の変化も激しい時代になりました。コロナ禍は、変化が極端に現れた例といえるでしょう。
事業を継続し利益を上げ続けるためには社会の変化に対応しながら、顧客の要望に対して的確に対応しなければなりません。一方でIT企業にシステム開発を依頼すると、本稼働まで数ヵ月から1年以上かかる場合もあります。これでは変化に対して迅速に対応できず、ビジネスチャンスも逃すおそれがあります。
ローコード開発は、これらの課題を解決する有効な手段です。ツールの活用により短期間での開発が実現でき、顧客の要望の変化にも迅速な対応が可能です。的確にチャンスをとらえ、売上と利益の向上につながる手法といえるでしょう。
IT業界における慢性的な人材不足
デジタル化の進展にともない、システム開発の需要は増加しています。一方で少子化による労働人口の減少などを原因とした、IT人材の不足は深刻です。加えてコロナ禍により、デジタル化の需要はますます増大しています。このため開発を依頼しようとしても、IT企業から断られる場合も少なくありません。
「業務をよく知る人はいるが、システム開発できる人材がいない」という状況であれば、ローコード開発ツールの導入で解決が可能です。ローコード開発ツールは、システム開発の専門的なスキルがない方でも、必要なシステムを組めることが魅力。SEやプログラマーがいない職場でも、システム構築を進められることはメリットに挙げられます。
DXの推進を迫られる
経済産業省が2018年に提唱した『2025年の崖』にもあるとおり、システムの老朽化と新しい技術への対応にはDXへの対応も急務です。社会や顧客のニーズに対応するには、できるだけ開発部門と現場が近いことも重要なポイントの一つです。
ローコード開発は、これらの課題を解決する手段として有効です。エンジニア経験が豊富でない方でも、スピーディーで柔軟なシステム開発が可能。人員の確保がしやすくなる点は魅力です。
また自社でシステム開発を行なう『内製化』により、現場とのコミュニケーションを密に取れることもポイントの一つ。顧客のニーズに合うものを迅速に提供し、競合に勝てる点は経営面のメリットにもつながります。
ローコード開発によるメリットとデメリット
他の開発手法と同じく、ローコード開発にもメリットとデメリットがあります。それぞれ3つずつ取り上げ、解説していきましょう。
メリット
ローコード開発のメリットは、以下の3点にまとめられます。
・開発期間を短縮でき、スピーディーにシステムを提供できる
・コストの削減が可能
・人員が確保しやすい
それぞれについて、順番に見ていきます。
・開発期間を短縮でき、スピーディーにシステムを提供できる
ローコード開発ではコンポーネントをドラッグ&ドロップする操作により、ソースコードを自動で生成できます。このためコードを書く時間を最低限に減らすことができます。
加えてローコード開発ツールのなかにはテストの自動化や、ドキュメントを自動生成できるツールもあります。これらの機能を活用することで作業を大きく効率化でき、開発期間の短縮とタイムリーなシステムの提供が可能となります。
・コストの削減が可能
ローコード開発ツールなら、短期間での開発が可能です。これにより人件費が抑えられ、開発コストの削減につながります。
コスト削減の効果が最も発揮されるケースに、「今までシステム開発を外注していたけれど、ローコード開発を機に社内で開発するようになった」というケースが挙げられます。外注した場合の開発費用は高くなりがちですが、自社で開発することで大きくコストを削減でき、浮いた費用を経営の強化にあてられます。
・人員を確保しやすい
ローコード開発はプログラミング初心者や非IT部門で勤務する方など、システム開発の知識が少ない方でも活用できます。このことは、開発に携わる社内の人員を確保しやすいことを意味します。システム開発が必要なタイミングで、開発体制を迅速に整えられることはメリットの一つといえるでしょう。
デメリット
ローコード開発のデメリットは、以下の3点にまとめられます。
・システム開発の自由度が低い
・ある程度のプログラミングスキルは必要
・ITエンジニアのモチベーション低下を招く可能性もある
それぞれについて、内容を確認していきましょう。
・システム開発の自由度が低い
ローコード開発は、開発に用いるツールによって自由度が制約されます。したがって汎用的なプログラミング言語を用いる場合のように、さまざまな要望に対応できるとは限りません。特に以下に挙げるサービスの場合は、自由度の低さが障害となる場合もあります。
・オリジナリティの高いサービス
・特殊な用途に用いるシステム
・大規模なシステムや、複雑な機能が求められる場合
上記に該当する場合は費用と時間をかけても、ITエンジニアによるシステム開発を依頼したほうが良い場合もあります。ローコード開発は万能でないことに留意しましょう。
・ある程度のプログラミングスキルは必要
ローコード開発では少ないとはいえ、コードの読み書きをする業務が発生します。ドラッグ&ドロップで構築できないプログラムを組むケースは、代表的な一例です。
加えてトラブルが発生した場合はどこで問題が起きているか、コードを見て原因を探る必要もあります。どこをどう修正すべきか判別するためにも、ある程度のプログラミングスキルは求められます。
・ITエンジニアのモチベーション低下を招く可能性もある
世のなかには自らのプログラミングスキルを活かし、より良いプログラムを作りたいという方も一定数います。あるいはテクノロジーを駆使してクリエイティブな仕事をしたい方もいることでしょう。
このような方にとってローコード開発が採用されることは、望ましいとはいえません。なぜなら自らのスキルを活かせないためです。自ら書くコードが少なくなるうえに、開発できるサービスやアプリケーションに制限がかかるならば、モチベーションを低下させかねません。
ローコード開発を活用した2つの事例を紹介
ローコード開発は、どのように活用されているのでしょうか。ここからは2つの事例を取り上げ、ローコード開発をどのように活かして開発を進めたのか紹介していきます。
竣工データ管理システム
1つ目の事例として、建築会社での導入例が挙げられます。この企業では過去の新築やリニューアル、メンテナンスの経験をナレッジとしてまとめ、今後のビジネスに活用する『竣工データ管理システム』の開発に活用しました。
以前のシステムは、Excelによる日報入力が基本。Accessを導入したこともありましたが、動作が遅いこと、データが破損するなど、うまくいきませんでした。
ローコード開発では、まず物件の竣工図書とプロフィールを一元管理するシステムを開発。文書保管や日報、Google Mapなどの外部システムと連携する仕様であったにも関わらず、3名が3ヵ月開発しただけで本稼働を実現させました。短期間での開発が可能で、外部システムとの連携が柔軟なローコード開発の特徴を発揮できた事例といえるでしょう。
検査業務の効率化・省力化を目的としたシステム
もう1つの例として、ガス機器の検査を行なう団体が挙げられます。以前に活用していたシステムでは、以下に挙げる課題がありました。
・手書きの情報をExcelに転記。データごとに3回のチェックが必要
・法令改正の都度、ベンダーに費用を払って修正してもらう必要がある
・できれば自社でメンテナンスしたいが、適切なパッケージシステムが存在しない
ローコード開発の導入により、必要なシステムを短期間で開発できるようになりました。法令改正への対応もユーザーで対応可能。ペーパーレスが実現でき、チェック作業を効率化できたこともメリットに挙げられます。
ローコード開発は、必要なシステムをスピーディーに開発できる力強い選択肢
ローコード開発により、これまでは期間と費用をかけてIT企業に依頼するほかなかったシステムを、自社の要員でスピーディーに開発できるようになりました。開発費用を抑えられることはもちろん、世間の要望にスピーディーに対応できる点は、『売りどきを逃さずにすむ』点で極めて重要なポイントです。
もっともローコード開発も、万能ではありません。複雑なシステムなどは、従来どおりIT企業に依頼したほうが良いケースもあります。しかしシステム開発を検討するうえで強力かつ有効な選択肢が増えたことは、間違いないでしょう。激しい競争に勝つためには、ローコード開発を適切に活用することが重要です。