VPN接続の仕組みとは?知っておくべきメリットとデメリットも併せて解説
この記事では、VPNの概要からメリット・デメリットと併せて、VPNの仕組みについて解説します。
この記事では、VPNの概要からメリット・デメリットと併せて、VPNの仕組みについて解説します。
知識・情報
2022/05/25 UP
- 技術
- ネットワークエンジニア
コロナ禍でテレワークが普及し、VPNを利用する企業が増えています。しかし、具体的にVPNがどのような仕組みで動いているのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。VPNを正しく使うためにも、その仕組みについては覚えておいたほうがよいでしょう。
そこでこの記事では、VPNの概要からメリット・デメリットと併せて、VPNの仕組みについて解説します。
VPNとは
VPN(Virtual Private Network)は、拠点間を仮想的な専用線でつなげる技術です。日本語では“仮想専用線”とも呼ばれます。VPNを用いることで、インターネット上にも仮想的な専用線を構築することができ、安全な通信経路を確保できます。
VPNが登場する前から、拠点間を物理的なケーブルで接続する専用線は存在していました。しかし、物理的な専用線はコストの問題などもあり、より環境構成が柔軟で低コストなVPNに注目が集まっています。
テレワークは自宅などの外部ネットワークから社内ネットワークに接続することで実現しており、安全な通信経路を確保するためにVPNを利用する企業が増えています。
VPNの仕組み
ここからはVPNの仕組みとして4つの種類と安全な通信経路を実現するための技術について見ていきましょう。
VPNの4つの接続種類
VPNは大きく“インターネットVPN”と“クローズドVPN”に分けられます。さらに、クローズドVPNのなかに3つの種類があり、大別すると4つの接続種類が存在します。
インターネットVPN | インターネット上に仮想的な専用線を構築 | |
クローズドVPN | エントリーVPN | 通信事業者の閉域網に仮想専用線を構築。アクセスポイントまでは安価な光回線・ブロードバンド回線を使用 |
IP-VPN | 通信事業者の閉域網に仮想専用線を構築。すべての通信に閉域網を使用 | |
広域イーサネット | 通信事業者の閉域網に仮想専用線を構築。自由度が高く、多数の拠点を結ぶことが可能 |
最も手軽に利用できるVPNとしては、既存のオープンネットワークであるインターネットを利用できるインターネットVPNが挙げられます。比較的安価で構築できますが、セキュリティの問題や通信品質などが課題です。
クローズドVPNの3種類は通信事業者が提供する閉じられたネットワークである閉域網を利用するため、インターネットVPNと比べてセキュリティが高く、通信品質も良くなります。
IP-VPNを基準とすると、エントリーVPNのセキュリティ・通信品質は劣りますが、低コストで導入できます。VPNをより広範囲で1つのネットワークのように扱いたい場合には広域イーサネットが選ばれますが、コストや環境構築に専門知識が必要になる点は注意が必要です。
VPNを支える4つの技術
VPNは次の4つの技術によって安全な通信経路を実現しています。
・トンネリング:拠点間を仮想的な専用線として実現するためのトンネルを構築
・カプセル化:データの内容をパッケージ化し、性質や状態を隠す
・認証:仮想的な専用線を利用するユーザーを認証し、利用者を制限する
・暗号化:送受信するデータを暗号化し、情報漏えいを防ぐ
トンネリングによって構築した仮想的な専用線内を、カプセル化したデータで送受信し、VPNを利用するユーザーを認証することで安全性を担保しています。加えて、仮に認証が突破されたりしたとしても、暗号化技術によって情報漏えいを防ぐ仕組みです。
特にインターネットVPNを利用する場合には、誰もが利用するインターネットを活用することからセキュリティのためにも欠かせない技術となっています。
VPNのメリット
テレワークを実現するにあたり、VPNは必須ではありません。しかし、VPNがもたらすメリットは安全なテレワークの実現以外にも存在します。
安全な通信経路の確保
VPNを活用する最大のメリットは、安全な通信経路を確保できることです。前述のとおり、VPNはトンネリングや暗号化などの技術によって安全な通信経路を実現します。
テレワークではオフィス外から社内ネットワークに接続することになるため、セキュリティ面は特に注意しなければならない点です。不正アクセスやデータの盗聴・改ざん、情報漏えいは企業に大きな損失をもたらしかねません。
VPNによってこれらのリスクを軽減できることから、昨今のテレワークの普及と併せて利用される機会が増えています。
低コストで導入できる
安全なテレワークを実現したいと思っても、コストの問題で導入できないと考えている企業担当者の方も少なくないでしょう。
しかし、VPNのなかでもインターネットVPNやエントリーVPNは低コストで導入可能です。VPNを簡単に導入するためのソリューションも多く存在しますが、専門知識があればほとんどコストをかけることなく構築できます。
OpenVPNなどのオープンソースを活用してVPN環境を構築することができるため、低コストで安全な通信経路を確保できる点はメリットの一つです。
BCP対策になる
VPNはBCP(事業継続計画)対策としても利用できます。コロナ禍でテレワークの普及と併せてVPNが利用される機会が増えているとおり、パンデミックや災害時でも業務を継続できる安全な環境が構築できます。
働く場所や時間の自由度が高いテレワークの実現は、BCP対策として有効です。また、通常時においても柔軟な働き方を実現するための手段としても活用できます。
VPNのデメリット
多くのメリットをもたらす反面、VPNを利用する際には知っておくべきデメリットも存在します。
セキュリティリスクの存在
VPNは安全な通信経路を確保するための技術ですが、VPNさえ利用していれば必ず安全というものではありません。実際に2020年8月には、VPNを利用している企業が不正アクセスを受けた事例が報告されています。
VPNはあくまでも拠点間の通信経路を安全なものにする技術であり、悪意を持った人物がVPNにアクセスできる状態ではセキュリティリスクを防げません。例えば、VPNの認証情報が漏れてしまうと、社内ネットワークに不正アクセスされて情報を盗み出されたり、業務サーバーが停止されたりするリスクが考えられます。
また、マルウェアに感染した正規ユーザーのアクセスに対しても、VPN単体では防ぎきれません。VPNだけでセキュリティ対策を網羅することはできないため、VPNでできることとできないことを理解し、包括的なセキュリティ対策を施す必要があります。
通信速度の低下
VPN通信は暗号化されているため、通常の通信と比べると通信速度は低下する傾向にあります。また、コロナ禍で急遽VPNを導入した企業のなかには、アクセスが集中しすぎて「遅い」「つながらない」という事例も多く見られました。
VPNはVPNルーターやVPNサーバーなどを利用して仮想的な専用線を構築していますが、機器の性能やトラフィック量・データの種類などが通信品質に大きく影響します。
VPNにおけるメリットを最大限に活かすためには、VPNを利用するユーザー数やトラフィック量などを事前に把握したうえで、しっかりとネットワーク設計を行ない、ユーザーが快適に利用できる環境を構築することが重要です。
VPNを活用してテレワークやBCP対策を!
VPNは拠点間を仮想的な専用線でつなげる技術です。トンネリング・カプセル化・認証・暗号化の4つの技術によって、安全な通信経路を確保できます。
VPNの種類としてはインターネットVPN・エントリーVPN・IP-VPN・広域イーサネットが挙げられ、それぞれにコスト・セキュリティ・通信品質などが異なるため、自社の環境に合ったものを選択する必要があります。
VPNは多くのメリットをもたらす反面、セキュリティリスクの存在や通信速度が低下しやすい点は覚えておきましょう。
正しく活用すれば、テレワークの実現だけでなくBCP対策や従業員の働く環境の改善にも役立てられるため、ぜひVPNを有効活用してみてはいかがでしょうか。