ニアショア開発のメリット・注意点とは?開発を成功させるためのポイントを解説
この記事では、ニアショア開発の概要やメリットのほか、オフショア開発との違いについて解説します。
この記事では、ニアショア開発の概要やメリットのほか、オフショア開発との違いについて解説します。
知識・情報
2022/06/02 UP
- 開発
- システムエンジニア
日本ではITエンジニア不足が続いており、優秀なエンジニアの人件費は高騰しています。そのため都市部では開発費用が高額になることも珍しくありません。
そこで、コスト削減を目的に、より人件費の安い地域のエンジニアに開発を依頼する「ニアショア開発」が注目を集めています。
ニアショア開発とよく似た言葉に「オフショア開発」があります。どちらも「人件費の安い地域に開発を委託する」という開発手法ですが、それぞれの違いやメリットがわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ニアショア開発の概要やメリットのほか、オフショア開発との違いについて解説します。
なお、似たような言葉である「オフショア開発」については、こちらの記事をご覧ください。
オフショア開発とは?海外のエンジニアに委託するメリットや注意点について
ニアショア開発について
そもそも、ニアショア開発とはどのような開発手法なのでしょうか。
ニアショア開発とは?
ニアショア開発とは、都市部の企業がITシステムの開発や運用・保守などの仕事を、人件費の安い地方の企業・エンジニアに依頼する開発手法です。
ITエンジニアの人材不足や、開発コスト削減など、システム開発のさまざまな課題を解決する手段の一つとして注目されています。
ニアショア開発の例としては、東京・神奈川・大阪など都市部に存在する企業が、北海道・東北・上越・九州などの企業にシステム開発・運用を依頼する、などが挙げられます。
ニアショア開発とオフショア開発の違い
オフショア開発は、日本より人件費の安い「海外」の企業・エンジニアに委託する開発手法です。オフショア開発の委託先は、中国、インド、ベトナム、フィリピンなどが選ばれることが多い傾向にあります。
オフショア開発には開発コストを抑えやすいというメリットがありますが、異なる言語や文化を持つスタッフとの連携が必要となります。そのため意思の疎通や進捗管理が難しく、スムーズに開発が進まない可能性もあります。
一方で、ニアショア開発は国内で開発を行なうことができるため、時差や言語、文化の壁がありません。納品物も高い品質を維持しやすいというメリットがあります。
ニアショア開発のメリット
ニアショア開発では、さまざまなメリットが存在します。ニアショア開発によって得られるメリットについて、詳しくみていきましょう。
開発コストの削減
システム開発の費用のうち、大部分は人件費が占めています。そのため、人件費を抑えることは、総コストの削減のために非常に有効な手段といえます。
ニアショア開発は、地方の企業に開発業務を委託することで、人件費が高騰する都市部の企業へ委託するよりも人件費を抑えることが可能といわれています。
しかし、日本国内は総じてIT人材が不足しているため、地方であっても優秀なエンジニアは単価が高いこともあります。そのため、期待したよりもコスト削減効果が得られない可能性もあります。
ITエンジニア不足の解消
都市部は案件が集中しやすく、ITエンジニアの確保が難しい状態にあります。
地方は都市部と比べて人材を確保しやすいため、IT人材の不足を補う目的でニアショア開発を取り入れるケースもあります。
しかし、人口が少ない地域では、そもそもエンジニアの数が多くありません。そのため高度なIT技術を要する開発案件は、ニアショア開発ではエンジニアの確保が難しいといえるでしょう。
円滑なコミュニケーションが可能
ニアショア開発は、国内でシステム開発を進めます。そのため、オフショア開発と比較して、時差や言語の違いによるコミュニケーションの問題が発生しないというメリットがあります。
また、オフショア開発とは異なり、ブリッジエンジニア(通訳)を介する必要がありません。やり取りに時間や手間がかからず、比較的スムーズに開発を進めることが可能です。
昨今はオンライン会議が普及したため、物理的な距離があってもコミュニケーション不足はあまり問題とならなくなりました。従来と比べても、ニアショア開発を導入しやすい環境になりつつあるといえるでしょう。
災害時のリスクを分散できる
日本は自然災害の影響を受けやすく、災害発生時は企業活動が停止してしまう可能性もあります。
ニアショア開発を導入し、複数の拠点でシステム開発・運用を行なうことで、災害時に企業活動を停止するリスクを分散させられるというメリットもあります。
ただし、ニアショア開発の関連企業の距離が近い場合は、災害時のリスク分散効果はあまり得られないでしょう。災害対策でニアショア開発を検討している場合は、委託先を遠方にするなどの工夫が必要です。
カントリーリスクがない
ニアショア開発は、オフショア開発と比べて国際情勢の影響を受けにくいというメリットもあります。
オフショア開発では、為替の変動、デモやクーデターの発生、国家間の関係悪化など、国の問題が開発業務に大きな影響を与える可能性があります。
ニアショア開発は、日本国内でシステム開発を行なうため、予測不能なカントリーリスクを回避することができるのです。
ニアショア開発のデメリット・注意点
さまざまなメリットのあるニアショア開発ですが、デメリットや注意点もあります。ニアショア開発を導入する前に、メリットとデメリットの双方を把握し、開発手法をよく検討することが大切です。
優秀なエンジニアの確保が難しい場合がある
ニアショア開発は、都市部に比べてエンジニアの確保がしやすいという特徴があります。しかし人口が少ない地方では、そもそもエンジニアの数が少なく、想定している人数を確保できないケースもあります。
特に優秀なエンジニアは、都市部より地方の方が確保するのが困難な場合もあります。エンジニアのスキル不足や、開発に必要なプログラミング言語を扱えるエンジニアがいないなど、案件によってはニアショア開発が適さない可能性もあります。
また、優秀なエンジニアは地方であっても単価が高いため、思うようにコスト削減効果が得られないことも考えられます。
委託先の企業の選定が難しい
近年、ニアショア開発の需要が高まってきており、委託先の企業がなかなか見つからないという声も増えています。
また、地方のエンジニアのスキル不足により、そもそもニアショア開発ができないという可能性もあります。人気のある地方企業はすでに複数の案件を抱えている場合が多く、ニアショア開発をしたくても委託先が見つからないということも少なくありません。
ニアショア開発を検討している場合は、事前に委託先の候補となる企業を複数挙げておくとよいでしょう。
ニアショア開発を成功させるポイント
ニアショア開発を実施する際は、委託先の候補となる企業をよく比較し、十分に検討することが大切です。
コスト削減ばかりを意識して委託先を選んでしまうと、納品物の品質が担保できなかったり、修正が重なったりして、納期遅れが発生する可能性もあります。
開発業務を委託する際は、要件定義を詳細にし、必要な部分の開発だけを依頼できるようにしておくとよいでしょう。また、進捗管理をこまめに行ない、プロジェクトが円滑に進むよう工夫することも重要です。
もし大幅なコスト削減効果を求める場合は、より人件費削減効果が見込めるオフショア開発を検討するのもおすすめです。
ニアショア開発は人材不足解消や災害リスク回避に有効な開発手法
ニアショア開発は、コスト削減効果や人材確保など、システム開発におけるさまざまな課題を解決するのに有効な開発手法です。
日本は自然災害も多いため、事業停止のリスクを分散させられるという点でも、ニアショア開発の導入は大きなメリットがあります。
ニアショア開発を導入する際は、どのような目的でニアショア開発を導入するのかを明確にすることが大切です。目的達成のためにニアショア開発が最適なのか、期待する効果が本当に得られるのかを事前によく検討するとよいでしょう。