パソナについて
記事検索

クリティカルシンキングとは?前提条件を疑うための手順や鍛え方を解説

本記事ではクリティカルシンキングとは何か、考え方の手順や思考法を身に付けるには何をすべきかについて解説します。

クリティカルシンキングとは?前提条件を疑うための手順や鍛え方を解説

本記事ではクリティカルシンキングとは何か、考え方の手順や思考法を身に付けるには何をすべきかについて解説します。

スキルアップ

2022/08/26 UP

ビジネスパーソンに求められるスキルとして、クリティカルシンキングがあります。自分の考えの前提条件を疑いながら論理的に思考する方法のことで、ビジネスのみでなく日常生活でも活用できます。本記事ではクリティカルシンキングとは何か、考え方の手順や思考法を身に付けるには何をすべきかについて解説します。

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは

はじめに、クリティカルシンキングの概要について説明します。クリティカルシンキングは「批判的思考」と訳されるため、相手を非難する考え方であるというイメージがありますが、これが誤りである理由も解説します。

クリティカルシンキングの概要

クリティカルシンキングとは、自分の考えを論理的に吟味しながら目標達成に向けて思考することです。特に、自分の考えの前提に誤りがないかを振り返ることを重視します。

クリティカルシンキングの考え方を知っていると、テレビやインターネットなどのメディアから入手した情報を鵜呑みにせず、自力で思考・判断ができるようになるでしょう。他にも、他者との会話や文章作成、プレゼンテーションなどで、正しい情報が発信されているか検討する場面でも役立ちます。ビジネスの場面のみでなく、家族や友人とのコミュニケーションなど、日常でも幅広い場面で活用できるスキルです。

批判的思考=「相手を非難すること」ではない

クリティカルシンキング(critical thinking)は、日本語では「批判的思考」と訳されます。英語の「critical」には、たしかに「批判的な」という意味もありますが、他には「批評的な」という意味もあり、こちらのほうがクリティカルシンキングの本来の意味合いに近いといえます。

クリティカルシンキングは相手の意見を否定・非難するようなネガティブな考え方ではありません。相手を非難するという認識でいるとコミュニケーションにおいて逆効果です。お互いが取り組んでいる課題を明確にし、主張内容と根拠を正確に把握して論理が成り立つかを検討します。「非難」ではなく「批評」しながら考えを深め、共通の目標を達成するという意識が必要です。

クリティカルシンキングの方法

ある課題に対してクリティカルシンキングを進めるための手順について説明します。自分一人で考えるのではなく、他者と議論しながら考えを深めると自分自身の思い込みや矛盾に気付ける場合もあるでしょう。

取り組む課題を明確にする

最初のステップは、今取り組んでいる課題を明確にすることです。そして検討している課題に関する主張と根拠、最終的に達成すべき目的を正しくとらえなければいけません。今何に取り組んでいるのかを明確にし、複数人で取り組むなら互いの認識のずれがないことを確認します。

考察を進めるうちに当初の課題から話題が外れてしまったり、最終的な目的がわからなくなったりしがちです。取り組む課題と、それに対する主張と根拠、最終目的といった、思考のための各要素を明確にします。

根拠の確からしさを検討

主張を支える根拠が確かなものであるか、幅広い視点から確認します。このとき重要なのは、根拠の背景にある前提条件を疑うことです。自身の経験則や固定観念を根拠にしてはいないでしょうか。また、人やニュース、データなど根拠のもとになった情報は本当に正しいものでしょうか。

自分の経験によるもの、あるいは他人から聞いた話であれば、裏付けがあるのか確認すべきです。ニュースの情報についても同様に裏付けは必要で、複数の情報源を確認するなどの手間を惜しんではいけません。たとえデータが提示されていても、それを鵜呑みにするのではなく、データの取得方法に問題はないかを確認します。

課題、主張、根拠のつながりを検討

課題と主張、主張と根拠はそれぞれ正しく対応したものになっており、論理の飛躍がないことを確かめます。よくありがちなミスは、目的達成のために自分で都合の良い主張や根拠を用意してしまうことです。意図的ではなくても、自分一人で考えていると都合よく考えてしまいがちなので注意しましょう。

他者に自分の考えを聞いてもらい議論するなどして、第三者を入れることで自分の思い込みを排除できます。課題、主張、根拠のつながりが論理的に成り立つと確認できれば、実際に課題解決のための行動に移します。検討した内容に誤りがあると途中で気付くこともありますが、そのたびに修正を加えれば自分の主張や根拠がより強固なものになるでしょう。

ロジカルシンキングとの違い

ロジカルシンキングとの違い

ビジネスパーソンのスキルとして、クリティカルシンキングと似た意味の言葉に「ロジカルシンキング」があります。ロジカルシンキングも物事を論理的に考えるためのスキルの一つですが、クリティカルシンキングとの違いについて解説します。

ロジカルシンキングは論理的整合性を重視

ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し、矛盾のない筋道を立てながら結論を導く思考法のことです。ロジックツリーやピラミッドストラクチャー、MECEなど論理的に考えることを手助けするフレームワークも豊富に用意されています。

ロジカルシンキングはクリティカルシンキングと近い思考法ですが、特に論理的整合性に着目している点がロジカルシンキングの特徴です。たとえ論理的には正しくても、課題の前提が間違っていれば誤った結論を導いてしまいます。現実に即さない結論や、机上の空論ともいえる解決策を出したところで、ビジネスの課題解決につながらないことは明白でしょう。

クリティカルシンキングは前提を疑う

一方で、クリティカルシンキングは課題の前提を疑い、情報の漏れや自分の考えの誤りがないか検証する思考法です。特に課題の前提を疑うという点がロジカルシンキングとの大きな違いです。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングはどちらかを選択するようなものではなく、意識して両方使えるとよいでしょう。クリティカルシンキングで課題の前提を明確にし、ロジカルシンキングで論理的整合性を確認すれば、より質の高い解決策を導き出せます。

なぜクリティカルシンキングが求められるのか

なぜクリティカルシンキングが求められるのか

クリティカルシンキングはビジネスから日常生活まで、幅広い場面で活用できるスキルです。なぜクリティカルシンキングのスキルが求められるのか、どのように役立つのか解説します。

最初の判断を間違うと手戻りが大きい

クリティカルシンキングを行なう目的の一つは、取り組むべき課題を考察し、今後の行動を決定することです。課題解決までの道筋がはっきり見えるようになれば、コストをかけて取り組むべきものが明確になり、自信を持って業務を遂行できるようになるでしょう。

最初の判断を間違えれば、その後の行動の多くが無駄になってしまいます。報告書やプレゼンテーションの資料の完成まで漕ぎ着けたとしても、伝えるべきメッセージが不明確になり、上司や責任者の理解が得られないこともあるでしょう。特に大きなプロジェクトの検討の場面では、人的・物的コストの莫大な損失につながる恐れもあります。

未知、未経験の分野について考察する

近年、IT技術の発展にともない私たちの生活や仕事は大きく変化しました。AIやビッグデータ、IoT、メタバース、FinTechなど新たな分野が多く登場し、あらゆるビジネスのあり方を変えています。過去のビジネスのやり方が通用しなくなり、世のなかの流れに応じたビジネスへ適合することが求められています。

過去の経験や学生時代に学んだ専門知識のみでは、新しい分野についてビジネスを広げることは厳しいでしょう。しかし、クリティカルシンキングを用いた論理的な検討手法は未知、未経験の分野について考察するときも役立ちます。正しい情報を集めて方針を検討し、課題解決までの論理が正しいか判断するスキルは、分野に依らずあらゆる場面で活用できます。

他者を説得しやすい

クリティカルシンキングを用いると、自分の主張を他者に理解してもらい説得しやすくなります。ビジネスの場面のみでなく、日常生活において家族や友人と話をする場面でも役立つでしょう。根拠のない主観的な主張は、他者から理解を得ることが困難です。自分勝手に主張していると判断されてしまうと、理解を得るどころか、聞く耳を持ってもらえなくなることもあります。

明確な根拠に基づく客観性のある主張であれば、相手に納得されやすいはずです。ただし他者を説得するには相手の立場を考え、相手に響くような内容であるか考えなければなりません。例えば、話す相手が経営者か技術者かによって説得するポイントは変わります。また自分の家族相手にビジネスライクな説得を試みても失敗するでしょう。クリティカルシンキングを活用するときは相手の立場という観点を忘れてはいけません。

クリティカルシンキングの鍛え方

クリティカルシンキングの鍛え方

クリティカルシンキングを身に付けて活用できるようにするには、どのように鍛えれば良いのか解説します。前提を疑うことがクリティカルシンキングの大きな特徴ですが、自分一人で考えても限界があるため、第三者を巻き込むことがポイントです。

前提を疑い、思考の誤りに気付く

検討する課題や自分の主張の根拠について、その前提が正しいか疑う癖をつけましょう。自分の考えが間違っていないか疑問に思うことが大事です。そう考えられるようになって初めて、自分以外のさまざまな考え方を受け入れられるようになります。

自分のなかでは常識で、当然成り立つと考えていることもあえて疑ってみましょう。自分が信じている事柄の根拠を実際に探してみることもおすすめです。根拠が見つからなければ、自分の思い込みに過ぎないとわかるでしょう。根拠が見つかったとしても、その事柄に関する新しい発見があったり、課題解決のための思わぬアイデアが生まれたりすることもあります。

経験や固定観念ではなく、正しい情報を集める

人は自分自身の経験や固定観念をもとに判断しがちですが、実際は間違っている場合も多くあります。信頼のおける根拠はあるのか、何か見落としていることはないのかなど確認しましょう。

特にテレビのニュースやインターネットの記事から得た情報は注意が必要です。メディアなどの第三者を介して得た情報は、発信者の判断で加工されていることがあります。データとして数値やグラフがあると信用しがちですが、なるべくデータの作成元から一次データを取得し、自分の根拠の裏付けとして適切であるかを確認します。

他者からフィードバックを受ける

自分自身の思考の誤りは、自分でいくら考えても気付きにくいものです。自分の考えについて他者に説明し、議論してフィードバックを受けることで適切な判断ができるようになります。考えの誤りを相手から指摘されることもあれば、考えを言葉にするうちに自分自身で誤りや根拠の薄い部分に気付くこともあるでしょう。

他者と話しをするときは、たとえ自分と対立する意見や考え方があっても、すぐに反論せず傾聴する姿勢が大事です。特定の相手と議論するのみでなく、さまざまな立場の人と議論を重ねてみましょう。すると複数の立場の視点が含まれることで、より強固な意見を構築できます。

前提を疑うことから目標達成につなげるスキル

クリティカルシンキングとは、自分の考えを論理的に吟味しながら目標達成に向けて思考するスキルです。取り組む課題が明確か、自分の主張や根拠が正しく論理的につながるか検討します。特に重視すべきは前提を疑うことであり、前提が間違っていることにあとから気づけば手戻りが大きくなるでしょう。

クリティカルシンキングは未知、未経験の分野の考察や他者を説得することにも役立ちます。前提を疑いながら正しい情報を集め、他者と議論しフィードバックを受けることで自分の思考の仕方を鍛えられます。