クラウド時代のネットワークエンジニア−クラウドエンジニアとネットワークエンジニアの違いも解説
従来のネットワークのインフラを担ってきたネットワークエンジニアとクラウドエンジニアの違いに触れつつ、クラウド時代のネットワークエンジニアのあり方について解説します。
従来のネットワークのインフラを担ってきたネットワークエンジニアとクラウドエンジニアの違いに触れつつ、クラウド時代のネットワークエンジニアのあり方について解説します。
知識・情報
2021/06/23 UP
- ネットワークエンジニア
- クラウド
- SE資格・スキル
インターネットの普及により、さまざまなデータがインターネット上でやりとりされるようになったクラウド時代。時代変化の影響により、以前のようなオンプレミス(自社サーバー)を主体としたネットワークエンジニアのポジションは減りつつあります。
こうした変化のなかでネットワークエンジニアは、今後のクラウド時代にどのように生き残っていけばよいのでしょうか。
今回は、従来のネットワークのインフラを担ってきたネットワークエンジニアとクラウドエンジニアの違いに触れつつ、クラウド時代のネットワークエンジニアのあり方について解説します。
ネットワークエンジニア
まずは、比較のためネットワークエンジニアについてあらためて見ていきましょう。
ネットワークエンジニアとは?
ネットワークエンジニアは、自社のコンピューターネットワークのシステム設計や構築、運用、保守管理などを行なう技術者です。社内にある個々のコンピューターをつなげるために必要な『ネットワークシステム』を専門に取り扱います。
ネットワークエンジニアの仕事内容
ネットワークエンジニアの仕事内容は、自社やクライアントが使用するネットワーク環境を最適な状態にすることです。
仕事内容を分けると、大きく『設計』『構築』『運用』『保守』の4つに分けられます。
設計
設計はクライアントの要望を聴取して、クライアントが求めるネットワーク環境を構築するフェーズです。必要となる機器の選定やネットワークが構築されるまでのスケジュール、必要なコストなどを検討します。
構築
構築は設計した予定に基づいて、実際にネットワーク環境を構築していくフェーズです。
クライアントの要望に応えながら、後続の運用保守やセキュリティ面にも配慮して構築します。
運用
運用は構築したネットワークがとどこおりなく、機能するように調整や変更を行なう仕事です。
保守
最後に保守は、ネットワークにトラブルが生じた際にトラブルの原因を特定・対応し、最適なネットワーク環境を維持する仕事です。
ネットワーク環境を整える際は、実際にコンピューターや電子機器同士をルーターやLANケーブルなどの機器を用いてつなぐことになります。このように実際に手を動かして作業する点は、他のエンジニア職ではあまり見られないネットワークエンジニア特有の特徴といえます。
クラウドエンジニアとは
続いて、クラウドの台頭にともなって新しく生み出されたクラウドエンジニアについて詳しく見ていきましょう。
クラウドエンジニアの特徴
クラウドエンジニアは、クラウド製品をもとにしたシステム設計や構築、運用などを担当する技術者です。
クラウドを利用したサービスが増加していることから、近年、クラウドエンジニアの需要が伸びています。
以前からの自社でサーバーをかまえるオンプレミスでは、ネットワークエンジニアが行なっている、設計、構築、運用、保守のすべてを自社で賄う必要があります。しかし、クラウドであれば、これらの多くをクラウドサービスにまかせることができます。
そのため、特に導入時のコストがオンプレミスよりも低く、準備期間も最小限に抑えられる特徴があります。
このようなメリットがあることから、クラウドサービスが広がるとともに、クラウドエンジニアの需要も増加しています。
クラウドエンジニアの仕事内容
クラウドエンジニアの仕事内容は、クラウド上でネットワークの設計や構築、運用を行なうことだとお伝えしました。そのため、ネットワークの設計や構築、運用をする、ネットワークエンジニアと仕事内容が似ていると感じるかもしれません。
しかし、クラウドエンジニアはクライアントが導入しているクラウド上で作業を行なうことが主体となります。ケーブリングやラッキングなど、ハードウェアの管理をする必要がないため、ネットワークエンジニアよりも多くの時間をネットワークの設定や管理に費やすことになります。
ネットワークエンジニアとクラウドエンジニアの業務の違い
ネットワークエンジニアとクラウドエンジニア、それぞれの仕事内容を踏まえたうえで、ここでは具体的な業務の違いを解説します。
ネットワークエンジニアの場合
ネットワークエンジニアは、オンプレミスで構築されるシステムのインフラを整えていくエンジニアです。クラウドエンジニアのようにインターネット上だけではなく、サーバー同士を接続する配線作業といった実際に手を動かす作業があります。さらに、ネットワークや送受信の経路選択を行なうルーティングなども欠かせない仕事になります。
クラウドエンジニアの場合
一方のクラウドエンジニアは、提供されるクラウドをベースにシステムのインフラを整えていくエンジニアです。そのため、作業はすべてクラウド上で行なわれます。クラウド上ですべての作業が完結されるため、クラウドに関する深い知識が求められるでしょう。
ネットワークエンジニアとクラウドエンジニアで求められるスキルや知識の違い
ここまで紹介したように、ネットワークエンジニアとクラウドエンジニアの業務には違いがあります。ここからは、それぞれの職種で求められるスキルや知識の違いについても詳しく見ていきましょう。
ネットワークエンジニアは、コンピューター・電子機器などの物理的なスキルや知識が重要
ネットワークエンジニアは、ルーターやスイッチ、サーバー、回線など、クラウドエンジニアよりも多くのハードウェアの知識が求められます。また、ルーティング、サーバーの設定、回線の設定、監視ネットワークの構築など、ソフトウェアの知識も求められます。
このようにネットワークエンジニアには、ネットワークのソフト面とハード面、両者のスキルや知識が重要です。また、クラウドと違い、実際に配線をすることもあるため、ケーブリングやラッキングなどの作業スキルが求められる場合もあります。
クラウドエンジニアは、クラウドサービスに関するスキルや知識が重要
クラウドエンジニアは、クラウドサービスに関する作業を担当するため、当然のことながらクラウドサービスに関するスキルや知識が欠かせません。
特に多くの企業が導入しているクラウドサービスについては、より詳しいスキルや知識が求められるでしょう。主要なクラウドサービスとしては、Amazonの『AWS』やMicrosoftの『Azure』、Googleの『GCP』などがあり、これらのスキルや知識は、特に重要です。
また、クラウドエンジニアはクラウド上での仕事が主体ですが、クラウド以外のオンプレミスのスキルや知識も欠かせません。その理由は、オンプレミスからクラウドへ移行する仕事が多いからです。
これまでオンプレミスのネットワーク環境であった企業も、クラウドへ移行する企業が増えています。このオンプレミスからクラウドへの移行の際に、オンプレミスに関するスキルや知識が求められるのです。
このように、クラウドエンジニアはクラウドに関する知識やスキルが特に重要ですが、その他のインターネットに関する幅広い知識も求められるでしょう。
クラウド時代のネットワークエンジニア
オンプレミスの環境からクラウドサービスを利用したクラウド時代となった今、これまでオンプレミス環境で働いていたネットワークエンジニアは、どのようにしてクラウド時代を生き抜いていけばよいのでしょうか。
ここでは、クラウド時代を生き抜くために、ネットワークエンジニアに求められることを解説していきます。
クラウド時代にネットワークエンジニアは不要?
結論から述べると、クラウド時代になってもネットワークエンジニアは必要です。
ただし、業務内容のすべてがこれまでと同じというわけではありません。今までの物理的なネットワーク機器の調達や設定などの実際に手を動かしていく作業は、オンプレミスからクラウドに移行していくなかで次第に減ってくる可能性があります。
一方でクラウドの案件は増加するため、クラウド上での作業を求められる機会が増えることが考えられます。そのため、ネットワークエンジニアは今後、クラウド上でのネットワークの構築や管理なども担っていく可能性が高いでしょう。
ネットワークエンジニアはクラウド時代になっても必要ですが、既存の知識に加えてクラウドのスキルや知識を追加していく必要があると考えられます。
クラウド時代に求められるネットワークエンジニア
クラウド時代のネットワークで重要なポイントが、仮想化技術の知識です。
仮想化とは、例えば複数台のサーバーをまとめて大きな一つのサーバーとして運用したり、逆に1台のサーバーを複数台のサーバーとして運用したり、といったことが可能になる技術です。
クラウドの裏側ではこの仮想化の技術を使っています。そのため、オンプレミスでは購入、設置、ネットワークの設定をして初めて動かせるサーバーが、クラウドサービスの管理画面上で動的に作成、削除できるのです。
クラウド時代のネットワークエンジニアは、この仮想化技術の知識を持ち、クラウドの裏側の仕組みを理解しながら、クラウド上でネットワークの設計、構築を行ない、最終的に運用、保守まで行なえることが求められると考えられます。
今後ネットワークエンジニアにもクラウドの知識が必要になる
今回はクラウドエンジニアとネットワークエンジニア、それぞれの特徴を比較しながら、クラウド時代のネットワークエンジニアのあり方について解説しました。
技術の進歩にともない、オンプレミスからクラウド化への流れが顕著です。そのため、今後はネットワークエンジニアもクラウドに関する知識が必要となる可能性が高いと予想されます。
今後エンジニア業界で評価されるためには、クラウドに関するスキルや知識の習得は欠かせません。現在ネットワークエンジニアの方はクラウドに関するスキルや知識を習得し、クラウドも対応可能にしていくことをおすすめします。