エッジAIとは?IoT普及に欠かせない機能性や今後の活用法を解説
エッジAIは、どのような場面で活躍する技術なのでしょうか。性能や活用される場面を具体的に解説します。
エッジAIは、どのような場面で活躍する技術なのでしょうか。性能や活用される場面を具体的に解説します。
知識・情報
2021/10/28 UP
- AI
- IoT
IoTの普及にともない、AI技術のニーズが高まっています。すでに多くの企業が取り入れているクラウドAIも、IoTの普及に貢献するAI技術といえるでしょう。一方で、デバイスの多様化により、クラウドAIでは対応しきれない状況が発生しています。
このような状況を解消すべく、IoTデバイスの多様化にともない注目を集めているのが「エッジAI」です。
この記事では、エッジAIの有効性やIT業界における必要性について解説します。エッジAIとクラウドAIの違い、IoTとの関係性に理解を深めましょう。
エッジAIとは?
エッジAIは、どのような場面で活躍する技術なのでしょうか。性能や活用される場面を具体的に解説します。
また、クラウドAIの特徴も解説しますので、エッジAIとの違いや、それぞれが持っている長所について理解しましょう。
エッジAIはデータ発生元の近くに搭載される人工知能
ネットワークに接続されている末端装置をエッジデバイスといいますが、そのエッジデバイスに搭載されたAIをエッジAIといいます。
エッジAIの特徴は、データの発生元の近くに搭載することで、スピーディなデータ処理が可能になることです。エッジAIが活躍する代表的な場面として、工場の製造ロボットや設備の保全管理、自動運転技術が挙げられます。
工場での活用目的は、稼働している機器類の監視により、劣化箇所などの事前修理および製造ラインにおける生産性の維持です。また、自動運転技術においては、信号、歩行者、車などを自律的に認識し、瞬時な判断による車両の制御が求められます。タイムラグが許されない技術を要するため、エッジAIの瞬時の判断力が重要といえるでしょう。
エッジAIと対照的な存在「クラウドAI」とは
エッジAIと対になる「クラウドAI」は、エッジAIのような末端装置ではなく、外部にあるデータセンターなどのクラウド環境に実装するAIです。
AIによる機械学習には、蓄積された膨大な量のデータを分析し、学習モデルの作成を高速処理できる環境が必要です。クラウドAIを利用すれば、パワフルなGPUやCPUを利用できるため、大量な学習データの収集や高速処理を実現します。また、複雑な処理やビッグデータの分析なども可能なことから、効率的な機械学習モデルの作成が可能です。
クラウドAIを利用した代表的なサービスには、クラウドコンピューティングによるAIプラットフォームサービスが挙げられます。
エッジAIが注目される背景にはIoTの急成長が関係している
近年、急成長を遂げているIoT(Internet of Things)技術には、データを円滑にやり取りするエッジAIの技術が不可欠です。また、エッジAIとIoTデバイス間では、膨大な量のデータがやり取りされるため、高レベルなデータ処理能力も求められるでしょう。
ここでは、エッジAIがIoTの普及で活躍する理由や、エッジAIが直面した課題、改善策について解説します。
IoTの普及にともないエッジAIの機能性が必要
IoTは、モノがインターネットを通じてクラウドなどと情報交換する仕組みを意味します。IoTデバイスの増加により、データをリアルタイムで処理する必要性が高まったことで、エッジAIが注目を集めるようになりました。
インターネットを通じた処理の場合、物理的距離や通信障害などの影響を受ける可能性があります。インターネット通信を利用するクラウドAIでは、データの送受信に要する時間や、電波状況の影響を考慮しなければなりません。
収集したデータを瞬時に処理し、タイムラグの発生を解消するには、エッジデバイスそのものにAIを搭載するのが効果的です。通信環境に左右されず、瞬時に高度な処理を行なうには、エッジAIが有効といえるでしょう。
エッジAIとIoTは日々進化を遂げている
IoT時代で普及が拡大しているエッジAIですが、いくつかの課題を抱えていました。
例えば、物理的な理由やコスト削減の目的から、多くのエッジデバイスは、リソースが少なめに設計されています。また、AIを組み込んだエッジデバイスを大量に管理する必要があります。
さらに、一度デバイスに組み込んだAIを簡単に修正したりすることができないという問題もあります。
このような課題に対し、近年ではAIモデルをエッジデバイス向けに変換するエンジンの開発や、効率的な処理を可能にするデバイスが登場しています。処理の選択肢が増えたことから、エッジAIが抱える課題は徐々に解消しているといえるでしょう。
エッジAIに期待される機能性
これまでのIoT技術にはクラウドAIが活用される場面もありましたが、クラウドAIには解決しきれない問題も発生します。
エッジAIの能力があれば、クラウドAIが解消できない問題の解決が可能です。ここでは、IoT技術を支えるエッジAIの機能性について解説します。
機密情報などを漏洩リスクから守る
膨大な量のデータを処理できるクラウドAIは、データの発生元が遠い場合でも、スケーラブルなデータ収集や蓄積が可能です。
しかし、外部ネットワークを利用したデータ通信には、ウイルス感染や不正アクセス、情報漏洩といったセキュリティ面の課題が生じます。そのため、データのアップロードには細心の注意を払わなければなりません。
一方で、エッジAIは、外部通信を利用せずデータを端末内で処理するため、サイバー攻撃を受ける可能性は極めて低いといえます。クラウド上へのアップロードが必要な場合は、端末内で処理した情報のみを送信し、機密情報などは端末内にとどめておくとよいでしょう。
リアルタイム性の高い反応速度
IoT技術の導入が本格化しているものには、自動運転技術を利用した車や、スマート農機が挙げられます。これらの共通点は、どちらも瞬時の判断を要することです。
これまでの機械学習では、データ処理の負荷が重いため、クラウドを利用した処理が一般的でした。クラウドAIを利用する場合、AIはクラウド側にあるため、エッジデバイスで取得したデータを一度クラウドに転送して処理を行ない、結果を返す必要があります。
しかし、この方法では通信のやり取りに時間を要し、瞬時の判断が求められる場面での活用は難しいでしょう。
しかしエッジAIのように端末内でデータ処理を行なえば、通信によるタイムラグが解消され、リアルタイム性が高まります。
通信コストの削減
クラウドAIを利用すれば、膨大な量のデータ通信や、蓄積データによる分析や学習も可能です。しかし、データ量に比例し、通信コストも大きくなります。
管理するデバイスの量が多いほど通信データ量も増えるため、通信障害などといったトラブルが起こらないよう、通信インフラを整えるのも重要です。
また、従量課金制サービスが一般的なクラウドAIでは、実際に使用した通信料の把握が難しく、請求金額が想定よりも大きくなる可能性があります。
エッジAIを利用する場合は、クラウドへの送信が必要と判断したデータのみをやり取りすれば、通信費の削減が可能です。効率的なコスト削減のために、送信すべきデータをあらかじめ決めておくとよいでしょう。
エッジAIとクラウドAIの組み合わせ
エッジAIについて理解を深めてきましたが、今後のIoT技術がより発展することを考えれば、エッジAIとクラウドAIを組み合わせた技術が不可欠です。
ここからは、エッジAIとクラウドAIの組み合わせによるIoT技術への有効性について解説します。
エッジAIとクラウドAIの協調処理
エッジ側のリソースでは、増え続ける学習データの保存に向いているとはいえません。
そこで、エッジ側が収集したデータを一次処理し、クラウド側へ送信しましょう。データを受け取ったクラウド側では、データの分析や可視化、予測の実行を行ないます。判別モデルの更新が完了したら、エッジ側に実装するという流れです。
この一連の流れにより、精度に磨きをかけたリアルタイム制御が可能になるでしょう。
今後のIoTには、エッジAIが得意とする予測や判定機能と、クラウドAIが得意とする学習機能というように、それぞれの特徴を活かした協調処理が有効です。
膨大なデータの最適化
エッジ側が収集したデータをすべてクラウド側に送信するとなれば、通信量の増加やセキュリティ上の不安が残ります。また、収集するデータには、瞬時の判断に必要なデータと、機械学習の分析に必要なデータがあり、適切なデータの分別を行なう必要があるでしょう。
瞬時の判断に必要なデータは、エッジ側で処理および管理するのが賢明です。瞬時の判断を必要としない、あるいは学習モデルの分析に必要なデータはクラウド側に送信します。
このように、それぞれ異なる扱いを要するデータ管理の最適化が、今後のIoT技術の発展を後押しするでしょう。
エッジAIは高品質な日常生活を実現するために不可欠な存在
エッジAIの機能性は、今後のIoT技術にとって不可欠な存在であり、それぞれの需要はより一層拡大するでしょう。
技術の需要にともない、専門知識を持ったエンジニアの市場価値も上昇すると考えられます。
特に、注目を集めているエッジAIには、より高度な専門知識が必要といえるでしょう。
需要が高まる一方で、IT業界の人材不足が懸念されます。今後、より一層成長を見込める分野のため、さまざまな企業がエッジAIに対応できるエンジニアを求めるでしょう。