シンクライアントとは何か?メリット・デメリットと種類を紹介
この記事では特徴や種類なども含め、シンクライアントについて多方面から解説します。
この記事では特徴や種類なども含め、シンクライアントについて多方面から解説します。
知識・情報
2022/09/08 UP
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いま、シンクライアントが注目されています。パソコンと比べて制約の多い端末ですが、業務で活用するという観点では有効です。業務形態に合わせて、適した方法や端末を選べることもメリットに挙げられます。
シンクライアントを使うことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。この記事では特徴や種類なども含め、シンクライアントについて多方面から解説します。
シンクライアントとは何か?
まずシンクライアントの概要について、3つの観点から確認していきましょう。
入出力機能を中心とした端末
シンクライアントは、入出力機能を中心とした端末です。「シンクラ」とも呼ばれており、以下の特徴を持っています。
・ネットワークを経由してサーバーにつなぎ、ソフトやデータの操作を行なう
・端末側にはデータを保存しない
・業務に必要なアプリケーションをインストールしない
なおシンクライアントの動作に必要な最低限のストレージは、搭載している機器が多くなっています。
シンクライアントに使われるOSは?
シンクライアントには以下のとおり、さまざまなOSが使われます。
・Windows
・Linux
・メーカー独自のOS
各社の事情に応じて最適なOSを選べることは、特徴的といえるでしょう。
パソコンやゼロクライアントとの相違点
シンクライアントは、パソコンやゼロクライアントと異なる端末です。パソコンは豊富なストレージを持ち、多種多様なアプリケーションをインストールして使う場合が多いです。一方でシンクライアントでは、このような使い方はしません。
ゼロクライアントはOSやストレージを搭載せず、リムーバブルストレージも使えない端末です。シンクライアントはOSや最低限のストレージを備える点で、ゼロクライアントとは異なります。
シンクライアントが選ばれる3つの背景
機能が限られたシンクライアントは、なぜビジネスの現場で活用されるのでしょうか。3つの観点から、選ばれる背景を確認していきましょう。
企業には高いセキュリティの確保が求められている
デジタル化の流れは、すべての業界において急速に進行しています。企業のサーバーやストレージを守ることが必須の時代となり、高いセキュリティの確保が求められています。
以下の取り組みは、情報漏洩やウイルス感染などの「セキュリティリスク」を下げるうえで有効です。
・端末でアプリケーションを動かさない
・端末にデータを保存しない
・外部の媒体にデータを保存させない
シンクライアントは業務を円滑に進めつつ、上記の要件を満たす端末であることは、選ばれやすくなった理由の一つです。
ネットワークの高速化
21世紀に入ってからの技術革新により、LAN・WANともに通信速度の飛躍的な向上が実現されました。いまやネットワークを介した処理でも、通信速度はパソコンの操作と同程度の使用感を得られるレベルまで向上しています。スムーズな使い勝手の実現も、シンクライアントの活用を後押しする要因といえるでしょう。
テレワークの普及
テレワークの普及も、シンクライアントの活用を後押しする要因です。従業員は自宅において、必ずしもスペックの高いパソコンを使っているとは限りません。一方で業務をスムーズに行なえるパソコンの支給は、コストがかさみます。
シンクライアントは処理をサーバーで行なうため、必要以上のスペックを端末に求める必要がありません。そのため、自宅のパソコンでもスペックを気にせず接続し、業務に使えます。利便性とコストの削減、セキュリティの確保を満たす手段として、選ばれやすくなっています。
シンクライアントを使う4つのメリット
シンクライアントが注目され広く使われるようになった背景には、4つのメリットを持つことが挙げられます。どのようなメリットが得られるか、順に確認していきましょう。
高いセキュリティを確保できる
シンクライアントでは原則として、端末内部に業務に関わるデータを保管しません。端末を紛失しても、情報漏洩のリスクが少ないことは特徴的です。
またシンクライアントでは、利用者によるアプリケーションのインストールもできません。業務に不要なソフトのインストールを防ぎ、パッチ適用を怠ったことによるリスクも避けられます。高いセキュリティを確保でき、安全・安心な環境で業務を遂行してもらえることは大きなメリットといえるでしょう。
端末を集中管理でき、運用管理コストを下げられる
シンクライアントでは、端末を集中管理できます。業務に必要な環境設定やメンテナンスも現場に出向くことなく行なえるため、運用管理に関わるコストや時間を大きく削減できます。
加えてシンクライアントは高いスペックを持つ必要がないため、端末のコストも下げられます。外出が多いオフィスでは在席状況に合わせて端末の数を絞り、さらなる運用管理コストの低減を狙うことも可能です。
端末の環境を統一できる
各端末の環境を統一できることも、シンクライアントを選ぶ大きなメリットに挙げられます。パソコンの場合はインストールしているソフトが人により異なるため、既存ソフトとの相性により動作しない事態が起こり、解決に苦労しがちです。シンクライアントでは環境を統一できるため、相性による問題は起こりにくくなります。
被災してもサーバーが無事ならば速やかな業務再開が可能
シンクライアントは、災害対策にも有効です。端末が被災してもサーバーさえ無事ならば、アプリケーションやデータは守られます。以下の対応により、速やかに業務を再開できるでしょう。
・別の拠点からアクセスする
・従業員が持つ端末(パソコンなど)からアクセスする
・新規調達など、別のシンクライアント端末を用意する
被災後の復旧を迅速に行なうことで他社よりも優位な立場に立てることも、見逃せないメリットに挙げられます。
シンクライアントを使う3つのデメリット
シンクライアントの活用は、メリットばかりではありません。これから解説する3つのデメリットもよく把握したうえで、選ぶことが重要です。
高いスペックのサーバーが必要
シンクライアントではCPUやメモリ、記憶領域など、クライアント端末の動作に必要なリソースもサーバーに搭載しなければなりません。シンクライアントが接続する数も、サーバーを選ぶ大きな要素となります。スムーズかつスピーディーな動作を実現させるためにも、高いスペックのサーバーを用意する必要があります。
ネットワーク環境につないでいないと使えない
シンクライアントはOSや記憶領域を持つものの、基本的にはサーバーとやり取りするための入出力機能が中心です。重要なアプリケーションやデータはサーバーにあるため、ネットワークにつながっていない状態では業務を行なえません。
シンクライアントはネットワークの通信量も多くなりがちであるため、高速かつ安定した通信環境の確保が必要です。
初期導入コストが高くなる可能性がある
シンクライアントはサーバーと端末の購入に加えて、デスクトップ仮想化ソリューションの導入も求められます。導入費用は、安価とはいえません。加えて、貴社が業務で活用する業務ソフトのコストもかかります。
単にサーバーとパソコンを導入する場合と比べて、初期導入コストがアップする可能性があることには注意が必要です。本稼働後の保守費用なども含めて、コストをよく比較検討することが求められます。
シンクライアント実行環境は4種類に分かれる
シンクライアントの実行環境は4種類あり、大きく「画面転送型」と「ネットブート型」の2種類に分かれています。それぞれの特徴はなにか、確認していきましょう。
画面転送型は3種類
画面転送型はサーバーで処理した結果をシンクライアントの画面に表示する方式で、以下の3種類に分かれます。
・ブレードPC型
・サーバーベース型
・デスクトップ仮想化型
シンクライアントはキーボードやマウス等による入力と、画面への出力機能を担うことが特徴です。それぞれの特徴を確認していきましょう。
・ブレードPC型
ブレードPC型は、シンクライアント1台に対して1台のブレードPCを割り当てる方法です。ブレードPCは小型であることが特徴で、動作に必要なCPUやメモリなどを搭載しています。ブレードPCは他のシンクライアントと共用されないため、高いスペックが必要な処理でも円滑に行なえることはメリットに挙げられます。
一方でシンクライアントが増えると新たなブレードPCも用意しなければならないことは、デメリットに挙げられます。
・サーバーベース型
サーバーベース型は、サーバーで稼働中のデスクトップ環境を複数のシンクライアントで共用する方法です。シンクライアントごとにデスクトップ環境を持たなくて済むぶん、サーバーに求められるリソースは下がります。
一方でひとたびトラブルが起こると、多くのユーザーが影響を受けます。加えて「個々の利用者ごとに使えるアプリケーションを変える」といった、柔軟な対応が難しいことはデメリットに挙げられます。
・デスクトップ仮想化型
デスクトップ仮想化型はサーバー上に仮想デスクトップを複数作成し、シンクライアントは別々の仮想デスクトップに接続する方法です。この方法では、あるユーザーがトラブルを起こしても別のユーザーに影響をおよぼしません。またシンクライアントが増えたからといって、ブレードPCを用意する必要がないこともメリットに挙げられます。
一方でスペックの高いサーバーや仮想化ソフトのライセンスを要すること、仮想環境を管理する手間がかかることはデメリットに挙げられます。
ネットブート型
ネットブート型はシンクライアントの起動時に、サーバー上にあるOSイメージをダウンロードすることが特徴です。起動後はシンクライアントのCPUやメモリを使ってアプリケーションを実行します。他の端末の影響を受けることなく、パソコンと同じ感覚で使えることはメリットに挙げられます。
一方で起動時を中心として、大容量の通信が必須となることには注意しなければなりません。特に従量制の回線や、月間に使える容量が限られる回線を使う方には不向きです。
シンクライアント端末は4種類から選べる
シンクライアント端末は形態により、以下の4種類に分かれます。
・デスクトップ型
・モバイル型
・USBデバイス型
・ソフトウェアインストール型
スペースや利用形態に合わせた選択ができることは、メリットといえるでしょう。それぞれについて、詳しく解説していきます。
デスクトップ型
デスクトップ型は見た目がデスクトップパソコンに類似している端末で、ディスプレイを別に用意できることが特徴です。シンクライアントの内部は、専用のOSが使われています。省スペース型の端末が多いこと、ディスプレイ一体型の端末を選べることも特徴に挙げられます。
デスクトップ端末の置き換えとして導入するケースや、お手持ちのディスプレイを有効活用したいケースに適しています。
モバイル型
モバイル型はノートパソコンに似た見た目となっており、以下の特徴を持っています。
・薄型・軽量であり、持ち運びやすい端末が多い
・4G LTEなど、携帯電話回線を通じた通信が可能な機種も選べる
・静脈認証や指紋認証に対応した機種もある
毎日のように外出する方でも、セキュアな環境を保ちながら操作できることが魅力です。
USBデバイス型
USBデバイス型は、動作に必要な機能を専用のUSBに詰め込んだ機器です。パソコンなどの端末やディスプレイは、別途用意しなければなりません。一方で既存のパソコンを流用しつつ、セキュリティを上げられます。USB端末を持ち運ぶだけで済むため移動先でも使えること、管理の手間が省けることはメリットに挙げられます。
USBデバイス型を選ぶ際には既存のパソコンからでは中身を読めない、複製や改変を防ぐなど、セキュリティに配慮した製品の選択が求められます。
ソフトウェアインストール型
ソフトウェアインストール型はこれまでの方法と異なり、ソフトウェアでシンクライアント化を実現する方法です。パソコンなどお持ちの端末を流用でき、新たなハードウェア投資がいらないことはメリットといえるでしょう。
一方で、事前にシンクライアント化ソフトウェアとの相性を確認する必要があります。そもそも余っている端末がない場合は、この方法を選べません。
シンクライアントの活用で利便性と安全性を両立できる
シンクライアントの導入には十分な検討を要し、ある程度の初期費用も必要です。安定かつ高速なネットワーク回線も求められるでしょう。一方で導入により高いセキュリティが確保され、利便性と安全性を両立できます。災害対策にも有効です。
「情報はわが社の生命線」と考える企業にとって、シンクライアントはおすすめです。この機会に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。