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アンガーマネジメントとは?基本の3ステップ・6つのメリットについて

この記事では、アンガーマネジメントの概要や、注目される背景、基本の3つのステップ、アンガーマネジメントのスキルを身に付けるメリットについて解説します。

アンガーマネジメントとは?基本の3ステップ・6つのメリットについて

この記事では、アンガーマネジメントの概要や、注目される背景、基本の3つのステップ、アンガーマネジメントのスキルを身に付けるメリットについて解説します。

知識・情報

2022/09/15 UP

人間には喜怒哀楽をはじめさまざまな感情が存在します。集団生活を送るなかで「怒り」の感情がうまく制御できず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

近年、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」という手法が注目されています。

アンガーマネジメントは、自分の感情だけでなく、他者の感情を理解するうえでも有効な手法です。職場の人間関係の問題を解決し、生産性の向上を図るため、ビジネスでの活用も期待されています。

この記事では、アンガーマネジメントの概要や、注目される背景、基本の3つのステップ、アンガーマネジメントのスキルを身に付けるメリットについて解説します。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、自分の置かれている状況を客観的にとらえ、怒りの感情を整理することで、強い感情を適切にコントロールするための手法です。また、怒りの感情に対して、その場にふさわしい方法で問題解決を図ることを目指すための心理トレーニングを指す場合もあります。

アメリカでは、1970年代から心理教育としてアンガーマネジメントが実践されてきました。現在、日本でも教育分野やビジネス、スポーツ、カウンセリングなど、さまざまな分野でアンガーマネジメントが取り入れられています。

アンガーマネジメントでは、怒りなどの強い感情のメカニズムを理解する必要があります。そのため、自分自身だけでなく、他者の感情を理解するうえでも非常に有効な手法といえるでしょう。

近年、アンガーマネジメントは職場の人間関係の問題を解決する方法の一つとして、ビジネス分野での活用も期待されています。

アンガーマネジメントが注目される背景

アンガーマネジメントが注目される背景

アンガーマネジメントの注目が高まっている理由には、社会全体がセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどのハラスメント防止に注力し始めたことが挙げられます。

近年、日本でも価値観やライフスタイルの多様化が進み、自分と異なる価値観の人と接する機会が増えています。そのため、自分の価値観から外れたものを受け入れられない人は、怒りの感情を溜め込みやすくなっています。

企業では、社員同士の価値観の違いによって、人材教育や部下のマネジメントに関する課題が増えています。例えば、かつて自分が先輩や上司にされたように部下や後輩を指導したつもりが、パワーハラスメントとみなされることもあります。

怒りや悲しみなどの負の感情が過度に高まると、仕事のパフォーマンスにも影響をおよぼしてしまいます。社内の人間関係を円滑にし、生産性の高い職場を実現するため、企業がアンガーマネジメントの研修を取り入れるケースもあります。

怒りのメカニズムについて

怒りのメカニズムについて

そもそも、人間はなぜ怒りの感情を抱くのでしょうか。アンガーマネジメントを理解するうえで重要となる怒りのメカニズムについて見ていきましょう。

怒りの仕組み

人間はいきなり怒りの感情を抱くわけではありません。怒りの感情が発生する前に、悲しい、悔しい、つらい、寂しい、不安、苦しいなどの一次感情を抱くという特徴があります。

これらの一次感情が蓄積していくと、やがて感情の許容範囲を超えます。許容範囲を超えた感情が「怒り」として発生するのです。

怒りを理解する際は、怒りの原因となる一次感情を理解・把握することが重要です。一次感情を理解できれば、ネガティブな感情を蓄積しないよう心がけることができ、怒りの感情のコントロールにも役立つでしょう。

人間にはさまざま感情があり、怒りも生きるうえで大切な感情です。怒りを悪いものだと思い込み、無理に感情を抑制すると、かえってストレスとなり心身に悪影響をおよぼす可能性もあります。重要なのは、怒りを周囲にぶつけるのではなく、適切にコントロールすることなのです。

怒りの性質

怒りは「高いところから低いところへ流れる」という性質があります。例えば、上司から部下、先輩から後輩などがこれにあたります。また、身近な相手であるほど期待値が高まりやすいため「身近な人ほど怒りが強くなる」という性質があります。

怒りの感情と上手に付き合うためには、自分の感情をコントロールするだけでなく、自分が怒りをぶつけられた際にそれを周囲に連鎖させないことが大切です。

人間の感情は「周囲に伝播しやすい」という性質があります。特に怒りの感情は強いエネルギーがあり、ほかの感情よりも伝播しやすいといわれています。

怒りの感情を抱くこと自体は悪いことではありません。怒りの大きなエネルギーが行動の起爆剤として作用し、モチベーションにつながるケースもあります。怒りは適切にコントロールすることで、ポジティブなエネルギーとして活用することもできるのです。

アンガーマネジメントの3ステップ

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アンガーマネジメントは、衝動・思考・行動をそれぞれコントロールすることで怒りの感情を適切に処理する手法です。この章では、アンガーマネジメントを実践するうえで基本となる3つのステップについて解説します。

1.衝動のコントロール

衝動をコントロールする代表的な手法が「6秒ルール」です。

人間は怒りを感じてから、理性を司る大脳新皮質の前頭葉で感情をコントロールできるまでに、およそ6秒かかるといわれています。

6秒ルールの実践方法は、まず怒りを感じた際に頭のなかで1から6までの数字をカウントし、怒りの感情から意識をそらします。

怒りの衝動をすぐに発露させず、6秒待つことで衝動を落ち着かせることができるのです。

2.思考のコントロール

怒りの感情は、悲壮感、不安感、虚しさなどさまざまな一時感情によって引き起こされます。これらの一時感情は、自分が抱いている「~するべき」という価値観が裏切られることで生じる特徴があります。

つまり、自分の怒りにつながる「~するべき」を把握して客観的にとらえることで、怒りをコントロールすることが可能となります。

人によって「~するべき」と感じることは異なっています。それを理解し、価値観に許容範囲を広げることで、怒りを感じる機会を減らすこともできるのです。

3.行動のコントロール

怒りの感情から「怒る」という行動を起こすことが、本当に適した行動であるかを考えます。

「怒ることは問題の解決に有効なのか」「怒ることで相手の意識が変化するのか」など、冷静に状況を分析しましょう。

怒るという行動によって状況が変化・改善しないことを理解できれば、別の「変えられるもの」に目を向けられるようになります。こうした考え方ができれば、怒る以外の言動に切り替えることができるのです。

アンガーマネジメントの6つのメリット

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怒りの感情をコントロールし適切に処理することができれば、さまざまな場面で対人関係を円滑にすることができます。アンガーマネジメントを身に付ける6つのメリットについて、具体的に見ていきましょう。

1.自己分析ができるようになる

アンガーマネジメントを身に付けることで、自分がどのような場面で怒りを感じるかを把握できるようになります。

自分の感情を客観的にとらえることは、自分の長所や短所、価値観などを理解するうえで非常に有効です。また、自己分析によって自身の抱える課題を見つけることができれば、課題解決のために最適な手段を検討することもできるようになります。

2.ストレスが軽減する

怒りの感情には強いエネルギーがあります。怒るという行動は、自分と相手に強いストレスを与え、人間関係を悪化させる要因にもなり得ます。

怒りの感情をコントロールできれば、対人関係のストレスを軽減することができ、良好な人間関係の構築を目指すこともできるのです。

3.円滑なコミュニケーションができるようになる

怒りの感情を表出しやすい人は、周囲にとってコミュニケーションを取りにくいと感じる存在です。

アンガーマネジメントは、怒りという感情を衝動のまま噴出させるのではなく、言葉で適切に意思を伝えることを目指します。怒りの感情の扱いに悩んでいる方は、アンガーマネジメントによって円滑なコミュニケーションを実現することも可能です。

4.価値観の違いを受け止めやすくなる

アンガーマネジメントの考え方を身に付けることは、価値観が多様化する社会においても重要です。

怒りの感情は、自分の価値観や期待が否定されることで大きくなります。アンガーマネジメントをとおして自分の価値観が絶対的なものではないと理解することができれば、柔軟に物事を考えられるようになるでしょう。

また、視野が広がることで、価値観や考え方の違いを受け入れやすくなります。他者に対して寛容になることができれば、職場や家庭などさまざまな場でより良い人間関係を築くことも可能です。

5.パワーハラスメントの防止になる

ビジネスシーンにおいて、指導者が感情を適切にコントロールすることは、適切な指導を行なううえで重要なスキルといえるでしょう。

怒りの感情が発生している理由を客観的にとらえることができれば、怒るという行動ではなく、問題を解決するために必要な言動を選択することが可能となります。

また、アンガーマネジメントを身に付けることは、自分の怒りだけでなく、周囲の人の怒りに対処する際にも役立ちます。

6.仕事の生産性向上につながる

怒りの感情は冷静な判断を妨げ、職場の人間関係を悪化させる原因となります。

職場の人間関係に問題があると、円滑なコミュニケーションが妨げられてしまいます。その結果、スムーズな業務遂行ができなかったり、ミスが頻発したりすることも考えられます。

アンガーマネジメントで怒りの感情を適切に対処できるようなれば、良好な人間関係を構築することができ、従業員同士の連携もスムーズになるでしょう。感情を適切に処理することは、業務効率・生産性の向上といった観点からも重要といえます。

アンガーマネジメントは円滑な人間関係の構築・生産性向上に有効な手法

近年、さまざまなハラスメントが問題となっています。なかでもパワーハラスメントは怒りの感情が影響しやすく、アンガーマネジメントを身に付けることはハラスメント防止にも役立ちます。

「怒り」はネガティブな印象の強い感情です。しかし、怒りも人間が生きるうえで大切な感情であり、無理に感情を抑圧すると大きなストレスとなってしまいます。

アンガーマネジメントは、ただ単に怒りの感情を抑え込むものではありません。怒りの感情を無理に抑圧するのではなく、自分の状況を客観視することによって、怒りの感情をコントロールするための手法です。

怒りの感情をコントロールすることができれば、対人関係が円滑になるだけではなく、自身についての理解を深めることにもつながります。自己分析力が向上すれば、自分が抱える課題や、課題の解決方法についても、より適切に検討できるようになるでしょう。