SAPを導入!メリットやデメリットおよび成功のポイントを解説
SAPに関する基礎知識や仕組みへの理解、明確な目的が必要な理由を具体的に解説していきますので、SAPを導入する際の参考にしてください。
SAPに関する基礎知識や仕組みへの理解、明確な目的が必要な理由を具体的に解説していきますので、SAPを導入する際の参考にしてください。
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2021/07/20 UP
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世界中の企業から信頼を寄せられている業務効率化システム「SAP」は、企業が抱える業務上の負担を軽減すべく、各部門の垣根を越えた業務効率化を実現します。
しかし、SAPの仕組みや導入する目的が明確ではない場合、導入成果を得られないシステムが追加されてしまうなど、リスクがあるのも事実です。
この記事では、SAPに関する基礎知識や仕組みへの理解、明確な目的が必要な理由を具体的に解説していきますので、SAPを導入する際の参考にしてください。
SAPを導入する前の基礎知識
そもそも、SAPが何のことなのかご存じでしょうか。SAPの導入を検討するにあたり、システムに対する予備知識が必要です。
ここでは、まずSAPとは何なのか、どのようなシステムなのかを解説します。
SAPは、SAP社が開発したERPパッケージ
SAPを理解するためには、まずERPについての理解を深めましょう。
社内の基幹業務を一元管理する概念「経営資源計画」をERP(Enterprise Resource Planning)といいます。
会社全体を1つのシステムで管理するには、システム自体を自社で開発しなければなりません。そのシステム開発を効率的に行なうために提供されているのが、ERPシステムやERPパッケージと呼ばれる製品です。
SAPは、このERPの一つです。ヨーロッパ最大級といわれるソフトウェア会社「SAP SE社」が提供しています。
SAPは4つのモジュールで構成されており、業務に対して必要なモジュールを導入できるのが特徴です。
会計モジュール
会計モジュールは、財務会計や管理会計といったものを管理するモジュールで、外部会計と内部会計に担当が分けられています。
財務会計は、おもに会計処理業務を管理しており、仕入れ先別の債務管理や固定資産管理など、企業で発生する会計取引全般を担当する機能です。内部統制を考慮した会計方針を提案するため、クライアントにとっての理想的な効率化を実現するでしょう。
管理会計は生産や販売、購買などから損益情報を収集し、社内の収益性が高いものを分析しながら原価管理を行なう機能です。費用と収益から原価差額を分析し、最適な原価策定方法を提案します。
ロジスティックモジュール
ロジスティックモジュールは、おもに販売管理や在庫管理を担当する機能です。販売管理の売上データや在庫管理で扱う在庫量などのデータは、財務会計モジュールに転送される仕組みになっています。
販売管理では、販売データが各部門へ自動で引き継がれるため、手動でデータ入力を行なう必要がありません。また、在庫管理は販売管理と連動しており、スムーズな現状把握につながるため、棚卸業務の効率化を実現します。
人事モジュール
人事モジュールは、人事管理のみを担当する機能です。
人事管理のみとはいえ、簡単に処理できる内容というわけではありません。採用から退職、部署や役職の変更、さらには勤怠管理といったすべての人事を一元管理する機能を担っています。
これらを人力のみで管理する場合、担当者を数名確保する必要がありますが、システムのサポートがあれば最小限の人員による管理が可能です。
その他
これまで紹介したモジュール以外にも、プロジェクト管理や品質管理、生産管理といった機能があり、モジュールごとに実現できる最適化や効率化の提案を行ないます。
クライアントの要望を汲みとった提案も可能で、柔軟性に富んだカスタマイズを実現できるのが、SAPの良さであり、世界中から支持を得ている理由の一つかもしれません。
SAPを導入して得られるメリットとは何か
SAPの概要について解説してきましたが、実際に感じられる変化を想像するのは難しいかもしれません。そこでここからは、SAPの導入によって得られる変化やメリットを具体的に解説していきます。
将来を見据えたコスト削減が可能
データの一元管理が可能になれば、業務データをリアルタイムで抽出しつつ情報分析できるため、経営戦略の意思決定がスムーズに行なえます。
これまではデータ入力や承認、反映によるデータの引き継ぎなど、段階的作業による大幅な時間ロスが発生していました。しかし、SAPを導入すれば、各部門のデータが連携され、取得するデータの不整合が起こる心配もありません。
SAPパッケージは、一つの業務プロセスとして形成されているため、部門ごとに管理担当者を置く必要がなくなります。
将来を見据えて考えた場合、作業効率化による人件費の大幅な削減が期待できるでしょう。
不審な動作を見逃さない
業務プロセスにおいて、業務の遅延やミス、不正などが発生すれば、企業にとって重大な問題になりかねません。問題が発生した際、誰がどのような業務をいつ行なったのか、これがわからなければ迅速な解決を図るのは困難です。
SAPでは、データ変更をともなうような作業において、ユーザーIDと作業履歴が紐づけられた状態で残るように設計されています。
万が一不正行為が行なわれたとしても、可視化された作業履歴により、迅速な対応や真相の究明を可能にするでしょう。
導入により社会的信頼性が高まる
SAPは多言語に対応していることもあり、全世界で扱われている非常にシェア率の高いシステムです。そのため、製品に対する信頼性や認知度への心配は必要ないでしょう。
SAPは国際会計基準にも対応しており、日本国内に限らず、越境ビジネスを行なう企業としても安心して導入できるシステムです。海外拠点の業務や取引を一元管理すれば、専門の人員を雇う経費を抑え、かつ適切な業務遂行を実現できます。
ビジネスにおける障害を防ぎ、企業の信頼構築や、認知度向上に向けた事業展開を行なうためには、SAPを導入した業務管理が効果的といえるでしょう。
SAPの導入前に理解すべきデメリットとは
世界中の企業が信頼を寄せているSAPですが、すべての企業に対してメリットになるとは限りません。デメリットになりうる要素を無視せず、必要性を理解したうえで導入を検討してください。
初期費用が高額で導入へのハードルが高い
SAPを導入した場合、将来的には大幅なコスト削減につながりますが、導入にはライセンス料やサーバー費用、システム構築料などの初期費用がかかります。
さらに、自社業務に合わせた付加機能が必要な場合は、付加機能の開発費が発生することを忘れてはなりません。
オンプレミス型もクラウド型も、初期費用は最低でも約1,000万円は見積もる必要があります。業務効率化やコスト最適化のためとはいえ、中小企業としては導入へのハードルが高く感じられるでしょう。
また、SAPのライセンス料は従量課金制のため、利用するユーザー数が多いほど金額が高くなります。ユーザー数を最小限にすることで費用を抑えられますが、システム管理者は必要です。無理な人員削減を行なえば、かえってSAP導入の失敗につながりかねません。全体のバランスを考えた管理者の配置は、削減が難しい要素といえるでしょう。
SAPへの理解が浅く導入に失敗する
SAPはあくまで業務効率化を図るためのパッケージ製品であり、導入するだけですべての業務をこなしてくれるわけではありません。導入完了後のシステムを適切に活用するには、SAPを扱うための知識が不可欠です。
また、SAPを運用していくうえで重要なのが、適任といえるプロジェクトリーダーの選定です。企業という組織に所属している場合、組織内の上長が選出される可能性が高くなりますが、その判断が適しているとは限りません。
適切な判断でSAPの性能を発揮させるには、SAPに対し理解がある人員を選定することが重要といえるでしょう。
SAPにはABAPが不可欠
SAPのシステム開発には、ABAP(Advanced Business Application Programming)という、SAPでのみ使用されるプログラミング言語の知識が不可欠です。
SAPを扱うには、ABAPの知識を持っている人材が必要ですが、Javaのような有名言語とは異なり、扱えるエンジニアはそれほど多くありません。また、ABAPを扱えるエンジニアの数は少ないにもかかわらず、ABAPへのニーズは高まっているため、付加価値がついています。
費用を抑えるのであれば、ABAPに強い社員を育てるという方法も視野に入れておく必要がありそうです。
SAP導入を成功させるポイント
世界的なシェア率が高いとはいえ、自社にとって必要な理由を理解できなければ、適切な機能の実装を行なえません。
ここでは、導入を成功に導くポイントを解説します。
導入目的の明確化
SAPを導入する際、「どのような設計にするかを明確にする要件定義」を行ないますが、目的や課題が明確になっていなければ、適切な要件定義を行なえません。
適切な要件定義を行なうには、部門単位のみならず社内全体の課題を洗い出し、課題を解決する目的を明確にします。
さらに、重要度が高いものから解決できるように、それぞれの課題にプライオリティを設定するのが有効といえるでしょう。
目的に合った製品や機能の選定
目的に合った製品や機能を実装すれば、限られた予算内で効果を発揮し、理想とする費用対効果を得られる可能性が高まります。
そのためには、実装すべき機能の選定と得られる効果への理解が必要です。また、業務内容によっては付加機能の開発が必要になりますが、高額な費用がかかるため、本当に必要な機能が何なのかを判断しなければなりません。
SAPというシステムがサポートする領域と、人が判断すべき領域の違いを理解し、必要に応じた付加機能のみの開発が理想的な導入スタイルといえるでしょう。
既存機能との不整合をどのように解消するか
要件定義を行なう際、企業だけではなくSAPベンダーも参加して要件を整理します。その際にベンダーが考える要素の一つが「ユーザー要件のフィットとギャップ」です。
SAPはパッケージ製品のため、ユーザー要件にフィットしない“ギャップの要素”いわゆる不整合部分については、何らかの対処が必要になります。
ギャップ要素の解消に向けて明確にするのは、SAPをベースとして既存の業務を変更するのか、既存の業務を変更せずにアドオン(付加機能開発)で対応するかです。
この判断を適切に行なえば、不要なものに高額な費用をかけるといった事態を回避できます。
付加機能が必要となった場合、ABAPの知識を持ったベンダー側が開発に着手しますが、導入後に扱うのはあくまでも企業側です。
ABAPを社員に学ばせるには時間を要するため、導入を決めた時点でエンジニアを雇うのが賢明な判断の一つといえるでしょう。
SAPの導入には適切な判断や知識が重要
SAPは非常に利便性が高く信頼を寄せられているERPパッケージですが、企業それぞれの業務内容すべてに適しているとは限りません。
しかし、将来を見据えて考えた場合、業務の効率化だけでなく、コスト削減にもつながります。自社業務に適した導入を前向きに考える企業は少なくないでしょう。
SAPの導入を成功に導くためには、自社が取り入れるべき機能を明確にし、導入後の扱いを適切に行なえる人員を選定しておくことが重要です。
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