テクニカルサポートとは?仕事のやりがいや厳しさ、必要な能力について紹介
本記事ではテクニカルサポートの業務内容と、どのような能力、経験、資格があると仕事に活かせるかを紹介します。
本記事ではテクニカルサポートの業務内容と、どのような能力、経験、資格があると仕事に活かせるかを紹介します。
キャリア
2023/03/02 UP
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IT製品に関する技術的な問い合わせに対応するのが、テクニカルサポートです。テクニカルサポートの業務において、どのような点でやりがいや厳しさを感じるのでしょうか。また業務を行なうにはどのようなスキルが求められるでしょうか。
本記事ではテクニカルサポートの業務内容と、どのような能力、経験、資格があると仕事に活かせるかを紹介します。
テクニカルサポートとは
テクニカルサポートの業務内容について紹介します。また業務内容が似ているヘルプデスクとの違いについても説明しましょう。
テクニカルサポートの仕事内容
テクニカルサポートとは、おもにIT製品の操作方法や故障などに関する問い合わせを受け付ける仕事。サポート対象の製品やシステムに関して、技術的な知識を活かして顧客の問い合わせに対応します。顧客だけでなく、自社の社員からの問い合わせに対応する場合もあります。
顧客の問い合わせには電話やメールでの対応が基本。しかしハードウェアの故障など、実際の製品を確かめなければ解決できない製品トラブルもあるでしょう。電話やメールでの解決が困難であれば、顧客の現場に出張して対応する場合もあります。
ヘルプデスクとの違い
ヘルプデスクは製品の操作方法から障害対応まで、顧客のさまざまな問い合わせを受け付けます。顧客からの問い合わせに対し、一次対応を行なう窓口の役割。問い合わせのなかでも、特に技術的な知識がないと解決が困難な問題はテクニカルサポートに対応を依頼します。
テクニカルサポートは技術的な観点から対応を行なうため、ヘルプデスクよりも専門的知識を要する業務。一方で、問い合わせの一次対応を担当するヘルプデスクは、顧客から適切にヒアリングを行なうための傾聴力やコミュニケーションスキルが要求されます。ただし企業によっては、ヘルプデスクとテクニカルサポートの役割が明確に分かれていない場合もあるでしょう。
ヘルプデスクについての詳細は、以下の記事をご覧ください。
ヘルプデスクとは?社内と社外、似た職種との具体的な違いと求められるスキル
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサポートは、商品を購入した顧客からの問い合わせやクレーム対応にあたる仕事です。技術的な知識をともなわない、一般的な問い合わせに対応します。カスタマーサポートは商品のアフターフォローを目的としているため、おもに既存顧客を対象としています。また、企業によってはカスタマーサポートが新たなサービスの提案などの営業活動を行なうこともあります。
テクニカルサポートとカスタマーサポートの大きな違いは、技術的な知識を要求される問い合わせに対応するかどうかという点です。カスタマーサポートはおもに技術的な知識をともなわない一般的な問い合わせに対応し、テクニカルサポートは製品に関するトラブルを解決するなど、技術力と商品知識が求められる問い合わせに対応する職種という点が異なります。
テクニカルサポートの将来性
日々新しいIT製品やサービスが登場しており、テクニカルサポートのニーズも高まっています。
多機能で便利な製品は、扱いが複雑なものも多く、使いこなすまでに時間がかかります。購入者が製品を十分に活用できなければ、製品の利用をやめてしまったり、評価を大きく下げてしまう原因にもなりかねません。そのような事態を回避するためにも、製品の導入サポートやトラブルに対処するテクニカルサポートは欠かすことのできない存在といえるでしょう。
高い需要のあるテクニカルサポートですが、第一線で活躍し続けるためには、常に新しい知識や技術に関する知識を学び続ける必要があります。IT業界は技術の進歩が速いため、一度身に付けたスキルを活かして長く働きたいという方にはあまり向かない仕事かもしれません。
テクニカルサポートのやりがいと厳しさ
テクニカルサポートの業務でやりがいを感じる場面、反対に厳しさや大変さを感じる場面について紹介します。
テクニカルサポートのやりがい
自社の製品やシステムを使用する顧客に直接対応する業務であるため、人の役に立てるという実感があります。開発業務など、その他の技術職では顧客の生の声を直接聞く機会は少ないでしょう。自分が担当した仕事で顧客から喜ばれる経験ができることは大きなやりがいになるはずです。
また問題解決のスキルが身につくこともメリット。問題の内容や発生状況について顧客からヒアリングする方法、問題の原因の切り分けを進めていく方法などは、現場トラブルを経験するからこそ得られるスキルです。問題解決のためにはITに関する専門的知識も必要であり、技術者としてのスキルアップにつながるでしょう。
テクニカルサポートの厳しさ
トラブルの内容によっては、一刻も早く解決しないと大きな損害に発展する場合もあります。そのため問い合わせをしてくる顧客の対応に苦労する場面もあるはず。気持ちに余裕がないために、強い口調で高圧的な物言いをされたり、理不尽なクレームを受けたりすることもあります。
またトラブル対応では、トラブル内容について顧客からヒアリングを行なったり、対応を指示したりと、顧客と協力して進めていきます。しかしITや製品に関する知識量は顧客によってバラバラであり、相手のスキルや知識に合わせて説明を行なうよう注意しなければなりません。
トラブル内容も多岐にわたるため、すぐには解決までの道筋が見えないこともあるでしょう。内容によっては当初の想定よりずっと長期化することも。時間がかかるほど顧客にとっても損害が大きくなるため、早急に対応しなければならないというプレッシャーがあります。
テクニカルサポートに求められる能力
テクニカルサポートの業務を行なうにはどのような能力が求められるのでしょうか。ここでは大きく3つのスキルについて紹介します。
ITの専門知識
技術的な観点でトラブルに対応するテクニカルサポートにはITの専門知識が必須です。サポート業務で扱う製品やシステムの操作方法はもちろん、製品仕様についても理解していなければなりません。
またパソコンのハードウェアやOS、アプリケーション、ネットワークなどのITの幅広い知識も必要です。思わぬ箇所がトラブルの原因となることもあるため、製品やシステムの構成要素に関して一通り理解しておくと、役に立つ場面もあるでしょう。トラブル対応を実際に経験すれば机上の勉強よりも理解が深まるはずです。
問題解決能力
お客様の問い合わせ内容を理解し、IT知識を活かして故障箇所の特定および解決を行なうのがテクニカルサポートのおもな業務となります。そのため発生したトラブルに対して、どのように原因を切り分けし、故障箇所の特定を進めていくかという問題解決能力も必須。ログ解析やテスト用の専用ツールを駆使しなければならない場合もあるでしょう。
原因が特定できれば、今度は対処方法を検討して解決まで導きます。現状のトラブルに対して臨時的に行なう暫定対策や、今後トラブルを再発させないための恒久対策を考えます。対策検討では、システム開発や運用、保守などの業務におけるトラブル対応の経験があると有利でしょう。
コミュニケーションスキル
トラブルの内容や問題発生時の状況などを顧客から的確にヒアリングすることが、テクニカルサポート業務の第一歩。最初に必要な情報が得られていないと、的確な対応ができず、無駄な作業を行なうことになりかねません。顧客と正確な意思疎通を行なうためのコミュニケーションスキルも重要です。
トラブル原因を突き止めるためには、電話やメールなどで操作手順を顧客に指示する必要があります。顧客への情報や指示の伝え方も注意しなければなりません。特にテクニカルサポートでは技術的で難解な内容について顧客に説明する場合があります。顧客が必ずしもIT知識豊富であるとは限らないため、顧客の理解レベルに合わせてかみ砕いて説明することが大事です。
テクニカルサポートに求められる経験
テクニカルサポートの業務に就きたい場合、どのような経験があると有利でしょうか。また実際の業務内容に役立つのはどのような知識やスキルでしょうか。
社内SE、システムエンジニア、インフラエンジニア
技術的な内容を扱うテクニカルサポートでは、問い合わせ対応に必要なIT関連の専門知識があると有利です。実際にエンジニアとして製品やシステムに携わった経験があると、サポート業務でも重宝するでしょう。
テクニカルサポートに問い合わせがくるようなトラブルは、エンジニアの設計・開発業務で発生するトラブルと近い場合もあります。ITに関して業務範囲の広いシステムエンジニア、ネットワークやサーバーに詳しいインフラエンジニアなどは特に知識やスキルを活かしやすいでしょう。
カスタマーサポート、販売、接客
お客様の問い合わせに対応するカスタマーサポート業務の経験者も有利です。問い合わせへの対応スキルなどは、テクニカルサポートの業務でも役立ちます。
同様に、お客様と接する販売業や接客業の経験も役立つでしょう。実際に販売業や接客業の経験者で、テクニカルサポートやヘルプデスクに転職する方もいます。ただし、テクニカルサポート業務に必要な専門知識は勉強して身につけておく必要があります。
テクニカルサポート業務に役立つ資格
テクニカルサポートの業務を行なうために、取得しておくと良い資格について紹介します。業務を行なうのに資格が必須というわけではありませんが、業務に必要な基礎知識を身につけるために役立つでしょう。
基礎的なIT全般の資格
IT全般を幅広く扱う資格として、ITパスポートや基本情報技術者試験がおすすめです。これらは情報処理技術者試験という国家資格のうちの一つ。情報処理技術者はレベル別に4段階あり、ITパスポートがレベル1、基本情報技術者試験がレベル2に相当します。コンピュータの基礎からOS、ネットワーク、セキュリティなど幅広い分野の基礎知識を網羅できます。
業務の資料作成でOffice製品を扱う人にはマイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)の資格がおすすめです。顧客からの問い合わせ内容の報告書や顧客への説明資料などで、Word、Excel、Power PointといったOffice製品を扱う機会があるでしょう。MOSの資格の知識があれば業務の効率化や生産性向上につながります。
顧客対応向けの資格
ITILファンデーション認定資格は、ITサービスのマネジメントや運用管理に関する資格です。企業によってはITサービス関連業務に従事する人は資格取得が必須とされている場合も。特定のベンダーに依らないため汎用性が高く、ITサービス分野のなかでも取得しやすい資格です。
コンタクトセンター検定試験は、顧客対応力のスキルを認定する資格。実際の顧客対応業務の現場において、高い成果を上げるための行動特性を体系化した内容です。学生や新社会人向けのレベルから、管理職向けのプロフェッショナルレベルまで網羅し、各段階におけるスキルの証明になります。
ベンダー資格(LinuC、シスコ技術者認定)
業務で扱う製品やサービスによっては、ベンダー資格の取得も有効です。LinuCはLinuxのシステムを扱う場合に必要な技術を網羅。Linuxサーバーの構築・運用に関するレベル1、Linuxシステムやネットワークの設計・構築に関するレベル2、高い技術力を持つ専門家であることの証明となるレベル3という区分があります。
ネットワーク機器大手のシスコ社の製品を扱うなら、シスコ技術者認定がおすすめです。シスコ社の認定資格は、分野別にエントリーレベルからエキスパートレベルまでの4段階。ネットワークの基礎となるCCNAや、各分野のプロフェッショナルレベルであるCCNPの知識が役立つでしょう。
テクニカルサポートのキャリアパス
テクニカルサポート業務を経験することで、今後はどのようなキャリアパスが目指せるでしょうか。ここでは2つの方向性を示します。
エンジニア職
業務を通して身につけたIT知識を活かし、より高い専門性が求められるエンジニアを目指すというキャリアパスです。実際に顧客の現場で発生したトラブルに対応した経験は、エンジニアの業務でも役立ちます。
具体的には社内SE、サーバーエンジニア、ネットワークエンジニアなどがあります。ただし、いきなり高度な知識を求められるような業務を行なうことは厳しいはず。まずは未経験者歓迎の求人を探し、実務を通して知識を学びながら専門性を高めていきましょう。
マネジメント職
テクニカルサポート業務で経験を積み、キャリアアップしていくことでマネジメント職を目指すというキャリアパスです。サポート業務で培った傾聴力や、相手の理解レベルに合わせて説明する力は、マネジメントにも活かせるスキルです。
コンタクトセンター検定試験のオペレーションマネジメント資格は、責任者や管理者向けの内容。運営のオペレーションや人材マネジメントの分野が中心であり、マネジメント業務の基礎を学ぶのに役立つでしょう。
テクニカルサポートになるには
テクニカルサポートは未経験者を歓迎する求人が多く、異業種・異職種からの転職でも比較的チャレンジしやすい職種といえます。
製品知識は、入社後に研修やマニュアルなどで知識を深めていけば問題ないでしょう。顧客対応もマニュアルが用意されている場合が多く、マニュアルに沿った対応ができる人であれば務めることが可能です。
エンジニア経験者は、スキルや経験をアピールすることで転職を有利にすることができます。IT業界未経験の場合は、「ITパスポート試験」や「基本情報処理技術者試験」などの基礎的なIT資格を取得しておくと、転職の際に武器になります。
テクニカルサポートの業務では、トラブルやクレームに対処することも少なくありません。冷静さを欠いている相手にも、落ち着いてコミュニケーションをとれる忍耐強さのある人に向いている仕事といえます。
テクニカルサポートは知識だけでなくコミュニケーションスキルも重要
テクニカルサポートはIT製品の操作方法や故障など、専門的知識が必要な問い合わせを受け付ける仕事です。
知識だけではなく、顧客からヒアリングを行なったり、顧客に指示を出したりするコミュニケーションスキルも重要。テクニカルサポート業務の経験を積むことで、IT知識を活かしてエンジニア職を目指す、対人スキルを活かしてマネジメント職を目指すなどのキャリアパスが考えられます。