分散型エンタプライズとはなにか?メリットや注意点も解説
この記事では分散型エンタプライズとはなにか、またメリットや注意点を取り上げ、解説していきます。ITソリューションを提供するエンジニアやシステムの企画・管理に携わる方は、ぜひお読みください。
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知識・情報
2022/09/22 UP
- テレワーク
- 働き方
- 管理
近年「分散型エンタプライズ」という言葉が聞かれるようになりました。分散型エンタプライズは、なぜ重要な用語とされているのでしょうか。また特定の技術と関係はあるのでしょうか。
この記事では分散型エンタプライズとはなにか、またメリットや注意点を取り上げ、解説していきます。ITソリューションを提供するエンジニアやシステムの企画・管理に携わる方は、ぜひお読みください。
そもそも「分散型エンタプライズ」とは
分散型エンタプライズは、本社とリモートサイト(支社や支店)を持つ組織を指します。大企業をはじめ、多くの企業に当てはまることでしょう。すべての従業員が一箇所に集まって働く組織とは、対極の概念です。近年では、リモートワークを実施する組織を含める場合もあります。
分散型エンタプライズはITに関する用語の一つですが、特定の技術とリンクした用語ではありません。働き方改革や感染症、自然災害へ対応しやすい組織であることから、注目されている用語です。ガートナージャパンでは、2022年における「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の一つに挙げています。
分散型エンタプライズが求められる背景
企業で分散型エンタプライズが求められる背景には、社会の変化に対応するという側面があります。ここではおもな3つの理由を取り上げ、どのような背景があるか解説します。
非接触のニーズが増えた
新型コロナウイルスの流行にともない、非接触のニーズが増えたことはおもな理由の一つです。パソコンやスマートフォンなどを使った購買やサービスの利用が増加したことは、代表的な例に挙げられます。インターネット通販は代表的なものといえるでしょう。
インターネット通販では注文から商品の到着までのタイムラグが大きくなると、顧客の不満につながります。在庫を1箇所で集中管理する体制では、どうしても時間がかかる配送先が発生しがち。地方ごとに複数の拠点を用意し発送する体制が優れています。迅速な配送を実現でき、顧客のニーズにこたえることが可能です。
リモートワークなど労働環境の変化
新型コロナウイルスは、仕事の進め方にも影響を与えています。政府の後押しもあり、多くの企業がリモートワークを推進。Web会議システムやビジネスチャットがよく活用されるようになりました。これからの時代はオフィスに集まって仕事を行なう方法から、離れた場所にいても組織として仕事を進められる企業改革が求められています。
ところでリモートワーク(テレワーク)は「柔軟な働き方」の一つとして、働き方改革での推進項目に挙げられています。多様な働き方を認めより良い働き方を追求する点も、注目される背景に含まれる一因です。
災害発生後の業務継続も重要
毎年のようにどこかで災害が発生している日本。どこにオフィスを構えていたとしても、以下の状況に遭遇する可能性はあります。
・地震や水害で被災し、オフィスが使えない
・停電や通信の断絶が発生した
・交通機関が途絶し、従業員が出勤できない
・感染症の流行によりオフィスが閉鎖された
このようなシビアな状況に直面した場合でも、顧客のニーズにこたえられる体制を構築しておかなければなりません。災害に遭った場合でも業務を継続できることは、企業に求められる要件の一つとなっています。
分散型エンタプライズで得られる3つのメリット
企業は分散型エンタプライズを活用することで、一極集中型や全員が一箇所のオフィスに集まる企業にはないメリットが得られます。代表的な3つのメリットについて、確認していきましょう。
幅広い地域に住む人材を雇用できる
幅広い地域に住む人材を雇用できることは、分散型エンタプライズがもたらす主要なメリットに挙げられます。「オフィスに通勤できる範囲」という制約が外れることが大きな理由です。リモートワークを前提とする企業であれば地方に住む優秀な応募者も採用でき、貴社の事業強化につながることでしょう。
加えてグローバル企業ならば、採用を日本国内に限定する必要もありません。全世界から応募を受け付けることが可能です。優秀な外国人を採用できれば、貴社の発展に結びつくことでしょう。
オフィスのコストを節減できる
オフィスのコストを節約できることも、大きなメリットに挙げられます。企業は東京都心など、利便性の高い場所に集まる傾向があります。これらの場所は、オフィスの賃料が高くなりがちなことは難点です。
分散型エンタプライズならば、多くの従業員が大都市圏ではなく、地方のオフィスで働けるようになります。オフィスの賃料も下がり、ランニングコストを節約できます。
在宅勤務の推進はさらに効果的です。出社人数そのものが減るため、オフィスの専有面積も減らせます。柔軟な働き方の推進だけでなく、コスト削減にも有効です。
特定のエリアが業務停止しても事業継続が可能
拠点が被災しても他の拠点で事業を継続できることは、分散型エンタプライズの強みに挙げられます。あらかじめ本社機能を代替する準備を行なっていた場合は、本社が被災しても事業を続行可能です。全社にわたる事業停止を防止でき、ダメージを最小限に抑えられます。
「本社や工場が被災したら、会社をたたむしかない」という不安から解放されることは、大きなメリットといえるでしょう。被災後も顧客のニーズにこたえられることは、貴社の信用アップにもつながります。また従業員の雇用を継続できることも、見逃せないメリットに挙げられます。
分散型エンタプライズで注意すべき3つのポイント
分散型エンタプライズを有効に活用するためには、注意すべきポイントが3つあります。内容や理由を理解したうえで、事業運営とシステム企画・管理に役立てることがおすすめです。それぞれのポイントを確認していきましょう。
セキュリティを確保する
分散型エンタプライズでは一極集中型と比べて、IT機器を扱う拠点数が多くなります。そのぶん、悪意のある者から攻撃されるリスクはアップします。専任のシステム担当者がいない拠点では管理の目が行き届かない場合もあり、さらにリスクは高まるでしょう。在宅勤務を実施する企業では、従業員宅のセキュリティにも目を光らせなければなりません。
セキュリティの集中管理やクラウドの活用は、代表的な対策に挙げられます。加えて、ネットワークを経由しない脅威があることも忘れてはなりません。紙の処分方法や外部媒体の使用ルールを決めるなどの対策も併せて実施しましょう。
「ゼロトラスト」の考え方は安全の確保に重要
今の時代、守るべき情報資産は企業内だけでなく、企業の外部にもあることを認識する必要があります。そもそもパブリッククラウドを活用する場合は、社内から社外のリソースにアクセスするわけです。同様に社外からアクセスする方も、外部の方ばかりとは限りません。リモートワークの拡大により、従業員が社外からアクセスするケースもあります。
分散型エンタプライズでは、「ゼロトラスト」の考え方が有効です。重要な情報にアクセスする者は社内外を問わず、安全性を検証した後にアクセスを許可します。漏れなくチェックを行なうことは、システムの安全確保に重要です。
ネットワークや機器の状況を集中管理する
ネットワークや拠点の機器を集中管理することも、注意すべきポイントに挙げられます。各拠点に専任のシステム管理者を置けない場合でも、本社と同じレベルで十分な管理を行わなければなりません。セキュリティに甘さがあると、悪意ある者の攻撃を許してしまいます。
1箇所での集中管理は拠点ごとのばらつきを防ぐとともに、セキュリティの甘さを突かれるリスクも下がります。コンプライアンスの点でも重要です。セキュリティ専門企業のサービスを選ぶことも、良い選択肢に挙げられます。
分散型エンタプライズはこれからの企業に有効な手法
柔軟な働き方への対応や災害時の事業継続、世のなかの変化に対し、分散型エンタプライズは有効です。優秀な従業員を獲得でき、変化に対応できる組織を実現できるでしょう。競合他社より優位に立つことも可能。これからの企業に有効な手法です。
分散型エンタプライズでは、セキュリティの確保が重要です。「社内からのアクセスだから」と油断せず、愚直にチェックする姿勢が情報資産を守ります。時代に合った考え方を適用し、事業拡大につなげましょう。