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クラウドAIとは?導入のメリットや活用事例、開発時の課題について解説

本記事ではクラウドAIの概要や導入のメリット、活用事例、開発時の課題などについて解説します。

クラウドAIとは?導入のメリットや活用事例、開発時の課題について解説

本記事ではクラウドAIの概要や導入のメリット、活用事例、開発時の課題などについて解説します。

知識・情報

2022/06/22 UP

AI(人工知能)技術はさまざまな分野で活用されています。クラウド上に集めた大量データで学習したモデルを使用する、クラウドAIも広く周知されています。本記事ではクラウドAIの概要や導入のメリット、活用事例、開発時の課題などについて解説します。

クラウドAIとは

はじめにクラウドAIの概要について説明しましょう。またクラウドAIに関連したAIとして、エッジAIと呼ばれるものがあります。クラウドAIとエッジAIの特徴の違いについても説明します。

クラウドAIの概要

クラウドAIとは、クラウド上にて提供されるAIのこと。クラウド上に蓄えられた大量のデータをもとに学習したモデルを使用できます。AIに関する専門知識がなくとも、自分が試したい機能を活用したサービスを構築できる仕組みが整っています。

サーバーやデータベース、開発環境などがまとめて提供されるため、ユーザーは高度なAIを安価で利用可能。おもなクラウドAIサービスとして、Google Cloud、AWS、 Microsoft Azure、 IBM Watsonなどがあります。このほかにもクラウドAIサービスを提供する企業は増えているため、機能や価格に応じて選択するとよいでしょう。

クラウドAIとエッジAIについて

エッジAIとは、端末側であるパソコンやスマートフォン、産業機器、IoT機器で使用されるAIのこと。各端末にセンサーやCPUが搭載されており、センサーで読み取ったデータをそのまま端末内のCPUで処理します。

クラウドAIの場合は、データをクラウド上に吸い上げてから処理を行なうため、データ量が多くなるとネットワークに負荷がかかります。生データをクラウド上に保管することから、セキュリティリスクも考慮しなければなりません。エッジAIの場合はデータを読み取った端末で処理するため、リアルタイム性が高いことが特徴。またデータ処理の負荷も各端末に分散されるため、通信の遅延が起こりにくいこともメリットです。

なお、エッジAIについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
エッジAIとは?IoT普及に欠かせない機能性や今後の活用法を解説

クラウドAIのメリット

クラウドAIのメリット

クラウドAIにはどのようなメリットがあるでしょうか。おもなメリットを3つ紹介します。

大量のデータによる学習済みデータを利用できる

AIシステムを新しく導入する際に、大きな問題になるのは大量の学習データの入手です。データ量が多いほどAIの性能は向上しますが、信頼性のあるデータを一から集めるのは容易ではありません。またデータ量が膨大で処理が複雑になると、汎用的なパソコン程度の性能では処理に時間がかかってしまいます。

クラウドAIを活用すると、すでに大量のデータで学習された高精度なAIモデルを使用できます。データ収集やAIモデルの開発を自ら行なう必要がなく、ノウハウを持たないユーザーでも活用しやすいでしょう。また複雑なデータ処理もクラウド上で対応可能です。

自社のサーバーやエッジ端末に負荷をかけない

クラウドAIにて計算処理を行なうコンピュータはAIサービス提供側が用意します。データセンターのCPUやGPUを利用できるため、自社で高性能なサーバーを用意する必要はありません。ユーザー側の機器に対する負荷が小さくて済むというメリットがあります。

エッジAIの場合は端末側で計算処理を行なうため、端末の負荷が大きく、コストや消費電力が問題になります。クラウドAIを活用すれば、高性能な端末は必要ありません。ただしオフラインでも使用が可能なエッジAIと異なり、クラウドAIではネットワークにつないでデータ送信を行なう必要があります。

スモールスタートに適している

AIシステムを導入する際に、コストや労力を抑えたスモールスタートができる点もクラウドAIのメリットです。大量のデータで学習済みのAIモデルをすぐに利用できるため、データ収集の手間が省け、AI開発を行なう人材へのコストも縮小できます。興味のある機能を手軽に試し、活用できるかどうかの判断がすぐにできるため、工数削減につながります。

エッジ側のサーバーや産業機器、IoT機器は性能を抑えた安価なマシンでも問題ありません。端末にかかる導入コストが少なく、クラウド上でデータ保管や学習を行なうため、エッジAIより管理や運用が容易になります。初めてAIを活用しようと考えているユーザーにとっては、スモールスタートしやすいクラウドAIのほうがエッジAIより導入しやすいでしょう。

クラウドAIの活用事例

クラウドAIの活用事例

クラウドAIを実際に活用した事例を3つ紹介します。それぞれGoogle Cloud、AWS、Microsoft Azureの活用事例です。

ゲーム販売のECサイトにおけるレコメンデーション機能

ゲーム販売を行なうECサイトの事例です。オンラインゲームやPCパッケージゲーム、ゲーム内で利用するアイテムなどを販売しています。取り扱うゲームタイトルが増えるにつれて、処理するデータ量も膨大になったことから、データの分析の仕組みを求めてGoogle Cloudへ移行することを決定しました。

移行にともない、顧客におすすめのゲームを紹介するレコメンデーション機能を新たに開発しました。オンラインゲームとPCパッケージゲームのそれぞれのビジネスモデルに合わせていることが特徴。効果的なレコメンドのため、Google CloudのAI PlatformやRecommendations AIの機能を活用し、ユーザー分析を行ないます。クラウドAIの活用で少ない工数で開発でき、クリック率やコンバージョン率、売上などに高い効果が確認できました。

粗大ごみの写真を送ると手数料を回答するシステム

横浜市における事例です。人口約375万人の横浜市では、家庭からの粗大ごみが多く、常に受付センターが混みあっている状態でした。問い合わせ件数は電話で月に10~12万件、インターネットで月に4~5万件もあり、オペレータの負担が大きくなっていました。

課題解決に向けて、横浜市は粗大ごみの写真を送るだけで画像認識AIが自動的に判別し、手数料を教えてくれるチャットボットを導入しました。採用したシステムはAmazon SageMaker。画像認識AIがAPI経由で利用できるため、アプリケーション化が容易です。297品目のごみの種類を認識可能であり、市民や受付センターのオペレータからの反応も良好です。

ビル空調システムの不具合検知システム

ビル空調システムの事例です。大規模ビルなどで採用されるVAV(可変風量)空調システムは、故障すると居住者の快適性や省エネ性に悪影響をおよぼします。通常は天井裏などに設置されるため、何か異常があった場合に技術者が現地で確認していました。これには人手がかかりますし、なにより熟練した技術者のスキルも必要となります。

Microsoft Azureの機能を採用し、VAV空調システムの可動データをもとに学習モデルを構築しました。システムの導入により、故障発生前の異常検知や不具合の要因特定が可能となります。人手不足や技術継承の課題についても、AIの活用により属人化を防ぐことにつながっています。

クラウドAIサービス開発の課題

クラウドAIサービスを開発する場合に、何が課題になるのか説明しましょう。

適切なデータの収集

AI開発プロセスの大部分はデータ関連の作業です。他社のAIシステムやデータセットを活用しようとしても、目的に合致したものがなければ自身で収集する必要があります。データの量や品質、収集コスト、収集時間を考慮しなければならず、この段階で難航する場合もあるでしょう。

AIシステムの出力結果は、モデルの学習用のデータに大きく依存。データの中身が偏ったものであると、結果の正確性や公平性に影響をおよぼします。またWebサイトから勝手にデータを集めてくるわけにはいかず、著作権や個人情報保護法などの法令には従わなければなりません。

AI開発特有の課題

AIシステムの開発では、工数削減のためにオープンソースのフレームワークやライブラリを用いることが多いでしょう。仮にオープンソースにバグがあったためにトラブルが生じても、利用者側の責任となるため注意してください。開発者に対して損害賠償を請求することはできません。

またAIは出力結果が一定ではないため、品質管理や品質保証が難しいことも課題です。AIの精度については、正確率や適合率、再現率など複数の指標を用いて評価を行なう必要があるでしょう。AIシステムをターゲットとした攻撃も発生しており、AI特有のセキュリティ対策を講じなければなりません。

運用や保守における課題

AIシステムに入力するデータが変化したり、追加学習を行なったりすると出力結果に変化が生じることも。結果については常にモニタリングしなければなりません。出力精度に問題があれば、データの傾向の変化や過学習、モデルの変数不足といった要因に留意して分析します。

AIの問題は明確に障害という形で現れなくとも、出力結果の偏りによって不都合が生じる場合もあります。利用者からの苦情や問い合わせなども分析し、モデル修正などの改善検討を適宜進める必要があるでしょう。ただしシステムの運用中にモデル修正などを行なうと、利用者側の作業に影響し、負担が増える可能性があることに留意してください。

クラウドAIは多くの企業ですでに活躍している!

クラウドAIとはクラウドで提供されるAIのこと。クラウド上の大量データをもとに学習したモデルを利用できます。

他にも、自社のサーバーやエッジ端末に負荷をかけない、スモールスタートに適しているというメリットも。クラウドAIは多くの企業で活用されており、業務効率化に役立っています。

ただし、適切なデータの収集が困難、AI開発特有の課題がある、運用時に出力精度が変わる可能性がある、といった点には注意が必要です。