MedTechとは?導入のメリットや将来の可能性について紹介
MedTechの意味や得られるメリット、今後の可能性などについて解説します。
MedTechの意味や得られるメリット、今後の可能性などについて解説します。
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2021/03/17 UP
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- 将来性
- メリット
IT技術の進展は、あらゆるビジネスに大きな変革をもたらしました。医療の分野もこの例外ではなく、さまざまなIT技術が活用されています。電子カルテは、代表的な例の一つです。
いま、MedTech(メドテック)を活用した技術やサービスが新たな注目を集めています。医療のさまざまな面で、さらなる進化が期待されることでしょう。
本記事ではMedTechの意味や得られるメリット、今後の可能性などについて解説します。
MedTechとはなにか
MedTechとは、Medical(医療)とTechnology(技術)からできた造語です。IoTやAI、VRなどのIT技術を、医療の分野に活用する取り組みを指します。
MedTechは、単に業務を効率化するだけではありません。これまで実現が難しかった手法を活用でき、診療や診断に活かせるようになったことは大きなメリットです。また医療従事者・患者双方の負担を軽くできることも、メリットに挙げられます。
MedTechは医療の質を向上させ、イノベーションをもたらすものといえるでしょう。
ヘルステックとの違い
MedTechと似た言葉に、HealthTech(ヘルステック)があります。HealthTechとは、『HealthCare(ヘルスケア)』と『Technology』を組み合わせた造語です。
HealthCareには『健康増進』や『病気の予防』などの意味があります。また、医療従事者の関与を要さないサービスも含まれます。病気の予防や健康増進、診療後のアフターケアは、HealthCareの例に挙げられます。
MedTechを活用したサービスは、さまざまなものが実用化されている
MedTechは医療現場のテクノロジー化をはじめ、幅広いサービスが展開されています。このうち診断に関する例には、以下のものが挙げられます。
・AIを活用した画像診断
・手術支援ロボットを活用した手術
・がんなど、病気の早期発見
・センサーを活用して、認知症の早期発見につなげる
また診療や治療に関する例には、以下のものが挙げられます。
・VRを活用して、腕や足を切断したあとの痛みを緩和する
・新薬の開発
・オンライン診療サービス
・患者向け健康管理アプリ
・医療従事者どうし、医療従事者・患者間のコミュニケーションツール
MedTechは医療におけるさまざまな分野で活用されており、医療従事者はもちろん、患者にとっても多くのメリットをもたらす技術です。
MedTechを活用する2つのメリット
MedTechを導入すると、どのようなメリットが得られるかは気になるところです。ここでは2つのメリットを取り上げ、詳しく解説していきます。
医療従事者の負担を軽減でき、地方でも充実した医療を受けられる。医療費の抑制にもつながる
以下に挙げる理由により、医療従事者の負担は増加しています。
・高齢化により、医療機関を受診する方が増加
・医師や看護師に代表される、医療職の人員不足
・医療の高度化や専門化
MedTechを活用することで、以下のことが可能となります。
・正確な診断を迅速に行なえる
・遠隔でも、医師の診療を受けられる
・病院間、また医師と専門医との連携が可能
・セルフメディケーションにも役立てる
地方でも充実した医療が受けられれば、都市部の限られた医療機関に患者が集中することがなくなり、医師の負担を軽減されることが可能です。また医療へのアクセスが容易になることは早期発見・早期治療につながり、結果として入院や医療費の抑制につながることが期待できます。
このようにMedTechは医療従事者の負担軽減をはじめ、さまざまなメリットをもたらす技術です。
新薬の開発期間を短縮し、費用の削減にも役立つ
新薬の開発には9年から17年といった長い年月と、多額の費用が必要です。しかも新薬の候補となった物質のほとんどが薬にならずに終わるのが現実です。
MedTechを用いることで、有効な成分を見つけやすくなります。IoTで集められた診療データや人体データも、役立つことでしょう。これらビッグデータを分析することで、有効性の高い成分を速く見つけることができ、新薬を開発する期間の短縮と、費用の削減が期待できます。
MedTechに期待される3つの可能性
MedTechは、今後の医療に期待されている技術の一つです。医療の世界をどのように変えるのかは、気になるところ。ここではMedTechの可能性を3つ取り上げ、解説していきます。
がんの早期発見
1つ目の可能性として、がんの早期発見が挙げられます。ディープラーニング(深層学習)の活用により、X線画像診断の精度を高めることが可能となりました。専門医でも見逃す可能性のある小さいがんも、発見できるようになっています。
大手IT企業が開発した乳がんの診断システムでは、専門医よりも高い確率でがんを識別できたとのことです。加えて、受診時の痛みや心理的な負担を軽減できる検査機器が開発されたことも、朗報といえるでしょう。
今後がんの兆候まで発見できるようになれば、がんの脅威も大きく下がることが期待できます。
糖尿病網膜症の早期発見
糖尿病の重大な合併症の一つに、糖尿病網膜症があります。早期発見が重要ですが、初期の段階では診断が難しいことが課題です。加えて多忙な医療現場では、画像の読み取りも負担の一つ。AIの活用により医師の負担を軽減しつつ、早期発見を可能とする効果が期待されています。
糖尿病網膜症を検出するAI機器は、2018年に初めてアメリカで承認されました。この機器はアメリカの企業が開発しました。特別なカメラで撮影した画像をサーバーにアップロードすることで、糖尿病網膜症かどうかをAIが検出する機能を備えています。
これらのAI機器は、日本でも実用化に向けた開発が進んでいます。実用化や導入が進むことで現場の負担が減り、患者にとってより良い医療が提供される弾みとなることでしょう。
AIロボットによる、介護職の負担軽減
介護職は、人手不足が顕著な職種の一つ。少子高齢化の進行により生産年齢人口が減少し続けることから、介護職は今後も深刻な人手不足が予想されます。職員が集まらないためにサービスが低下する事態は、ぜひとも避けたいもの。このため、AIロボットの活用に向けた取り組みが進んでいます。
例えば高齢者と会話し、認知症を予防する目的のロボットはすでに実用化されています。なかには、高齢者の生活の質が向上したという成果を上げた介護施設もあります。また施設内で物を運ぶなどの仕事ができるロボットは、複数の企業で研究が進められています。
AIロボットの進化が進めば、高齢者の介護を担える可能性があります。大きな期待が寄せられている分野の一つといえるでしょう。
MedTechで注目される事例を紹介
ここからは、日本やアメリカで注目されているMedTech企業を2社取り上げます。それぞれが行なっている事業の目的や特徴について、詳しく解説していきましょう。
日本発・乳房用画像診断装置を開発するベンチャー企業
日本には、乳がんの新しい診断装置を開発したベンチャー企業があります。この企業では『リング型超音波振動子を使用した乳房用画像診断装置』の開発により、以下のメリットを提供しています。
・ベッドの穴に乳房を入れるだけで良いため、検診の際の心理的負担を軽減できる
・超音波を使っているため痛みを感じず、被ばくの心配もない
・日本人女性の約4割が該当する『高濃度乳房』の方に対しても、乳がんを判別しやすい
・乳房を圧迫せずに検査が行なえるため、自然な形で撮影できる
乳房用画像診断装置の活用により検診の受診率が向上し、乳がんの早期発見・早期治療に結びつくことが期待されます。
アメリカの医療システムの改革
アメリカにはGoogleの元幹部が立ち上げた、『快適でスマートな医療を提供する、アップルストアのような医療施設』を事業目的としたサービスがあります。これにより、旧態依然としたアメリカの医療システムの改革を目指しています。
アメリカの多くの医療機関では、診療に応じて収入が得られるもの。このため、診療回数を増やそうというインセンティブが働きがちです。一方で新しく立ち上げたサービスは会員制かつ毎月149ドルの費用がかかる代わりに、このサービスが運営する医療機関ならば追加料金がかからず、24時間いつでも質問できることがメリットに挙げられます。
病気を未然に防ぐ予防医療も万全。病気にならない人を増やすサービスという点も、特筆すべきポイントです。
MedTechは医療業界の未来を良い方向に変えていく
MedTechはこれまで医療で行ないにくかったことも実現できる、画期的な技術といえるでしょう。例えば『速さ』と『正確さ』は相反するものですが、MedTechの活用により両立することが可能です。医療従事者・患者ともにさまざまな恩恵が受けられることは、見逃せないポイントです。
今後とも、MedTechはますます成長することが期待されます。医療業界の未来を良い方向に変える技術であり、今後はなくてはならない存在になることが見込まれます。