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従業員エンゲージメントとはどういう意味?重視される背景や高める施策を紹介

本記事では、従業員エンゲージメントが重視される背景やエンゲージメントを高めるための施策について紹介します。

従業員エンゲージメントとはどういう意味?重視される背景や高める施策を紹介

本記事では、従業員エンゲージメントが重視される背景やエンゲージメントを高めるための施策について紹介します。

知識・情報

2022/12/26 UP

従業員が企業を信頼し、愛着心を持つことを従業員エンゲージメントと呼びます。日本企業は世界のなかでもエンゲージメントが低く、近年は向上への取り組みが求められるようになりました。本記事では、従業員エンゲージメントが重視される背景やエンゲージメントを高めるための施策について紹介します。

エンゲージメントとは

本記事では、企業の人事に関する用語としてのエンゲージメントを取り上げます。はじめに従業員エンゲージメントの意味や、従業員満足度との違いを解説します。

従業員エンゲージメントの意味

エンゲージメント(engagement)のもともとの意味は、「従事していること」「婚約や結婚の約束」「言質、誓約」などがあります。企業と従業員の関係を表すエンゲージメントとは、個人の成長や働きがいと企業の成長が互いに結びつき、高めあう状態を指しています。特に従業員が企業に対して抱く思い入れを「従業員エンゲージメント」と呼ばれています。

・従業員が企業を信頼し、企業の成長のため自らの成長に取り組む

・その結果、企業の業績が上がり従業員の満足度も上がる

このように企業と従業員が結びつきを強くすることで互いの成長に貢献しあうことが理想です。従業員エンゲージメントが高い状態を実現するには企業側も努力し、従業員側に働きかける必要があるでしょう。

従業員満足度との違い

従業員エンゲージメントと近い言葉に「従業員満足度」があり、おもに待遇や報酬、職場環境に対する従業員の満足度を指します。待遇に代表されるように、企業から従業員に一方的に提供する内容が中心です。

一方で、従業員エンゲージメントは企業のビジョンへの共感、やりがいを実現できる場としての信頼や愛着などを含んだ言葉です。企業から一方的に与えられるものではなく、企業と従業員が互いに結びつきを強くすることを意味します。また従業員満足度を高めても業績とは結び付きにくいのですが、エンゲージメントの向上は業績に直結しやすいことが特徴です。

従業員エンゲージメントが重視される背景

従業員エンゲージメントが重視される背景

近年、人材育成の取り組みとして従業員エンゲージメントが重視されるようになりました。その背景について解説します。

労働環境の変化

「失われた30年」という言葉もあるように、日本の経済成長が鈍化した状態が続いていることから、多くの企業で終身雇用制度が保てなくなっています。またIT業界をはじめとするさまざまな業界で市場の移り変わりが激しくなっており、日本だけでなく国外でも企業の平均存続年数は年々下がっている状況です。

あらゆる業界や企業において長期的な人材育成が困難になり、短期での業績向上が求められるようになりました。そのうえ少子高齢化による人手不足もあり、社員の定着率の向上や生産性向上を重視した人事制度へと変化が生まれています。

労働者の価値観の変化

医療技術の発達によって人々の寿命が延びたため、人が社会で活躍する期間が長期化しており、人生100年時代と呼ばれるようになりました。また個人のキャリア意識が向上し、1つの会社で定年まで添い遂げるという過去の価値観が薄れています。別の企業への転職や、再び大学に戻って学び直しをするなど、キャリア向上のために勤めていた企業を退職する人もいます。

企業の人事制度も年功序列から成果主義に代わってきており、待遇を重視して転職することも珍しくありません。特に優秀な人材は他企業からも引く手あまたです。企業としては、優秀な従業員のエンゲージメントを高めて流出させないことが大事になりました。

従業員エンゲージメントの実情

従業員エンゲージメントの実情

日本企業における従業員エンゲージメントの実情を解説します。日本の社員は勤勉かつ真面目であり、企業のためによく働くというイメージがありますが、実際はイメージと異なるようです。

日本は世界でも最低水準

米国の調査会社ギャラップが発表した調査結果によると、日本においてエンゲージメントが高い社員は全体の5%しかおらず、129ヵ国中128位という低さです。世界平均は21%で、1位の米国・カナダは33%にもなります。

日本は近隣の東アジアの国と比べても低く、中国は18%、韓国は12%、台湾は10%、香港は6%です。日本人は世界のなかでも突出して仕事に対するエンゲージメントが低いとわかります。従業員エンゲージメントの低さは特定の企業だけの問題ではなく、日本社会全体の問題ともいえるでしょう。

嫌だけど辞められない社員が多い

実際のところ、現在の勤務先で継続して働きたいと考える日本人の割合も少数です。パーソル総合研究所が、2019年に実施したAPAC就業実態・成長意識調査の結果によると、現在の勤務先で継続して働きたいという日本人の割合は全体の52%です。これは調査対象であるアジア太平洋地域14ヵ国中の最下位の数字となっています。

一方で、他の会社に転職したい日本人の割合は25.1%で最下位。会社を辞めて独立・起業したい日本人の割合も15.5%で最下位です。日本人が転職に抱くイメージは悪く、エンゲージメントが低いのに嫌々ながらも働き続ける社員が多いのです。ちなみにインドやベトナム、中国では現在の勤務先で継続して働きたい人の割合が80%を超え、日本の次に低いインドネシアでさえ64%となっています。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めるメリット クリックして拡大

従業員エンゲージメントを高めると、従業員と企業の双方にメリットがあります。代表的なメリットを4つ紹介します。

組織の活性化

エンゲージメントの向上により従業員と企業の価値観が一致するようになれば、従業員の働きが企業の利益向上につながります。従業員と企業の双方が互いに成長しあう風土が構築され、組織の活性化が期待できるでしょう。

従業員エンゲージメント向上に成功している某企業では、マニュアルがなくとも従業員自身が業務の改善や、お客様の満足度を高める方法を考えるようになったそうです。また従業員同士で改善に向けて意見交換する環境も定着しています。

従業員のモチベーションの向上

従業員が企業での働きを通して成長していくと、自分の望むスタイルで仕事するなどの自己実現ができるようになります。企業のビジョンへの共感や働きがいのある仕事など、企業で働く理由となる、さまざまな価値を見出せるでしょう。

自らの働きが企業内での評価や業績、満足度につながるためモチベーションの向上にもつながります。上司から言われてやるのではなく、従業員が自発的に業務に取り組むことで高い成果を上げやすくなります。

生産性、業績の向上

従業員から企業への愛着心が高まると、企業が抱える課題解決にも積極的に取り組むようになります。こうした結果、全体の生産性が高まれば、従業員の成長や職場環境の改善だけでなく、企業の業績向上にもつながるでしょう。

国内企業を対象とした調査において、従業員エンゲージメントのスコアが営業利益率や労働生産性との間に相関関係があると示されています。従業員の成長および積極的な働きが企業の利益に反映され、互いに成長し合う良い関係を築けるのです。

離職率の低下

従業員エンゲージメントを高める取り組みは、離職率の低下につながると明らかになっています。米国のコンサルティング会社CEBの調査によると、従業員エンゲージメントが高い人は離職率が低く、生産性が高いという結果が得られました。

エンゲージメントが高ければ、企業で仕事をするモチベーションがあるため、離職率が低いと考えられます。またエンゲージメントの向上した企業は他社の社員にとっても魅力があるため、優秀な転職者の確保にもつながるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上のために

従業員エンゲージメントの向上のために

従業員エンゲージメントを向上させるためにできることを紹介します。従業員のエンゲージメントの可視化、能力に応じた適切な人材配置、多様な働き方の推進の3つが重要です。

従業員エンゲージメントの可視化

まずやるべきは従業員エンゲージメントをスコアとして可視化し、現在のエンゲージメントを把握することです。従業員エンゲージメントを測る手法として、エンゲージメントサーベイやパルスサーベイと呼ばれるアンケート調査が知られています。従業員に対して一定の頻度で調査を実施し、心理状況や職場に対する貢献意欲、満足度を確認します。

さまざまな施策を行なっても、実際に効果があったかどうか不明であれば改善につながりません。世間一般には効果があると言われている施策でも、適切な方法を取っていなかったり、業務の進め方とマッチしていなかったりすれば効果は薄いでしょう。施策を行ないつつ適切な頻度で効果測定を行ない、効果のある施策を継続することが大事です。

タレントマネジメントの活用

タレントマネジメントとは、従業員の能力やスキルを可視化して人材配置や育成に役立てることです。能力や職務経験だけでなく、行動特性や価値観など、これまで可視化されてこなかった要素も含めて多角的に検討します。タレントマネジメントの結果をもとに、各従業員の能力を活かせる業務の割り振りや、従業員に不足しているスキルを補う教育の実施などが可能です。

タレントマネジメントは従業員側にもメリットがあります。自分の能力や価値観を企業に理解してもらうことで、適切なポジションで働ける可能性が高まるでしょう。また業務上必要なスキルを習得することでより業務が行ないやすくなったり、高度なスキルが身についたりといったメリットもあります。タレントマネジメントは従業員のモチベーションを向上させ、離職率を下げるために有効な手段です。

多様な働き方の推進

多様な状況にある人々が互いの価値観を受け入れ、皆が活躍できる組織作りが求められています。結婚や育児、介護など個人の事情はさまざまであり、意欲はあるのに仕事中心の働き方ができない人もいます。一方で、給与やスキルの向上のため本業とは別に副業や複業に取り組みたいと考える人もいるでしょう。

さまざまな価値観を持つ人々が、各々の望むキャリアや人生設計を実現できる環境の整備が望まれます。互いの状況や価値観を理解しつつ、協力し合いながら業務を進められるとよいでしょう。多様な働き方の推進により、従業員が退職せざるを得ない状況を防ぎ、従業員エンゲージメントの向上につながります。

エンゲージメントの向上で働きがいのある職場環境を実現

従業員エンゲージメントとは、個人と企業の成長が互いに結びつき高め合う状態のことです。終身雇用の崩壊や人手不足により、エンゲージメントを高めて社員の定着率を向上させたいというニーズが増加し、多くの企業が注目するようになりました。

日本人のエンゲージメントの低さは世界でも突出していますが、一方で離職率も低く、嫌々働いている人が多い状況です。従業員の能力やスキルを人材配置に活かすタレントマネジメント、多様な働き方の推進によって、従業員エンゲージメントを高める施策を実施するとよいでしょう。従業員のモチベーションを高めるだけでなく、離職率の低下や業績の向上など企業側のメリットも期待できます。