エンベデッドシステムスペシャリストとは?取得するメリットや難易度
エンベッドシステム開発を行う際に役立つ資格「エンベッドシステムスペシャリスト」について解説します。
エンベッドシステム開発を行う際に役立つ資格「エンベッドシステムスペシャリスト」について解説します。
キャリア
2020/03/11 UP
- キャリアパス
- SE資格・スキル
- メリット
IoT開発などが増える中で、エンベッドシステム(組み込みシステム)開発ができるエンジニアの需要は高まっています。ここでは、このエンベッドシステム開発を行う際に役立つ資格「エンベッドシステムスペシャリスト」について解説します。
組込みエンジニアを目指している方、あるいは、技術を磨いて広範囲で活躍したいと考えている現役の組込みエンジニアの方にとって、エンベデッドシステムスペシャリストは取得するメリットが多い資格となります。
難易度は高めですが、取得すれば高度な知識とスキルを証明できるので、転職の成功や仕事の質向上に役立つはずです。試験の受験を検討している方は、ぜひ今回の記事内容を参考にしてみてください。
エンベデッドシステムスペシャリストとは
まずは、エンベッドシステムスペシャリストとはどういうものなのかみていきましょう。
エンベッドシステムスペシャリストは組込みシステムの専門家であり、IPAが実施する国家資格
エンベデットシステムは、私たちが日常で利用する家電や車などのあらゆる機器に組み込まれているシステムです。エンベデッドシステムスペシャリストは、エンベデッドシステムの専門家であり、「ES」とも呼ばれ、組込み系のスペシャリストを意味します。
エンベデッドシステムスペシャリストはシステムエンジニアの一種であり、そのなかでも広範囲の専門知識と発想力、さらにプロジェクトチームを管理する能力まで求められます。これらの能力を認定する資格が「エンベデッドシステムスペシャリスト資格」です。
※以降、この記事ではエンベデッドシステムスペシャリスト資格をES資格と記載します。
ES資格は、IoTを含む組込みシステムの開発基盤の構築力や、システム全体の設計・構築・製造・評価能力などを認定する資格です。高度な専門知識が問われる国家資格であり、ソフトウェアとハードウェアのそれぞれの要求を適切に分解し、最適な組込みシステムを実現するための知識や技術スキルを求められます。
組込みエンジニアやIoT系エンジニアにおすすめの資格
ES資格の受験者には、組込み系システムの開発に携わっている人はもちろんのこと、企業の業務システムを含む大規模なエンタープライズ系システムなどの開発に携わっている人も多いといわれています。
---引用---
高度IT人材として確立した専門分野を持ち、IoTを含む組込みシステムの開発に関係する広い知識や技能を活用し、最適な組込みシステム開発基盤の構築や組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行う者
出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:エンベデッドシステムスペシャリスト試験
上記の通り、既存の組込みシステムだけでなく、IoTに関する知識やスキルも必要であることがわかります。さらに、組込みシステムの設計〜製造までを主導的におこなう者として、技術的なスキルだけでなく下位者を指導する役割も担うことを求められています。
組込みエンジニアやIoT系エンジニアになりたい人、また現在それらの職種で活躍している人で、さらに技術を磨き、広範囲で活躍したいという人にこそ、ES資格はおすすめできる資格です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の概要
では、ES資格の詳細について見ていきましょう。ES資格の難易度は、令和2年の実績を見ると合格率が16.4%であり、かなり難しい試験であることがわかります。
ES資格の出題範囲として、求められる知識やスキルは大まかに次の6つです。
1.組込みシステムの機能要件把握
2.組込みシステムの設計・開発
3.組込みシステムのソフトウェア設計・製造
4.組込みシステムのハードウェア設計・製造
5.システム評価
6.保守
それぞれの項目で求められる知識やスキルは、「IoT」「AI」「ビッグデータ」といった先進技術から、「OS」「知的財産権などの法律」「セキュリティ」など、非常に広範囲で多岐にわたることがわかります。
あわせて、ここ数年でES資格試験の問題に登場したシステムの一部をご紹介します。
・ドローン
・自動運転
・スマート工場
・カメラ付き防犯灯
・スマートグリッド
・駐輪場管理システム
上記のように開発対象システムが非常に広範囲であることも、難易度が高まっている要因の一つです。
出題範囲の詳細については、IPAの「エンベデッドシステムスペシャリスト試験 シラバス」にまとめられていますので、そちらをご参照ください。
その他の情報に関しては、以下の表にまとめました。
試験実施時期 |
例年4月第3日曜日 |
|||
願書申込受付期間 |
例年1月中旬〜2月中旬 |
|||
受験料 |
5,700円 |
|||
受験資格 |
制限なし |
|||
受験地 |
全国各地 |
|||
午前? |
午前? |
午後? |
午後? |
|
試験時間 |
9:30〜10:20 (50分) |
10:50〜11:30 (40分) |
12:30〜14:00 (90分) |
14:30〜16:30 (120分) |
出題形式 |
多肢選択式 (四肢択一) |
多肢選択式 (四肢択一) |
記述式 |
記述式 |
出題数 |
30問 |
25問 |
3問から2問を選択 |
2問から1問を選択 |
合格基準 |
100点満点中60点 |
100点満点中60点 |
100点満点中60点 |
100点満点中60点 |
また、ES資格は免除制度の対象です。次の条件に該当する方は、条件を満たしてから「2年間」は、「午前?」の試験が免除されます。
・応用情報技術者試験に合格する
・情報処理技術者試験高度試験または情報処理安全確保支援士試験に合格する
・情報処理技術者試験高度試験または情報処理安全確保支援士試験の午前?で基準点以上の成績を得る
さらに詳細な情報に関しては、IPAの「エンベデッドスペシャリスト試験」をご参照ください。
エンベデッドシステムスペシャリストを取得するメリット
ES資格を取得することで得られるメリットは、大きく次の4つが挙げられます。それぞれのメリットについて、一つずつ見ていきましょう。
1.体系的に学ぶことができる
ES資格の資格勉強を通じて、複雑なエンベッドシステムに関する知識を効率よく体系的に学ぶことができます。
例えば、ES資格が活躍できる場面の一つにIoTがありますが、このIoT開発では、以下のようなものも求められます。
・少ないリソースでシステムを動かすための知識やスキル
・障害の切り分けの知識
・OSの知識
・セキュリティの知識
こうした知識やスキルは業務の中で都度覚えていくのは難しいため、効率よく体系的に学ぶために資格勉強は最適といえます。
2.将来性が高い
IoT化が進む昨今では、エンベッドシステムスペシャリストを始めとした組込みエンジニアの需要が非常に高まっています。今後はさらに需要が高まる見込みです。
組込みエンジニアは参入障壁が高く、幅広い知識とスキルが求められます。そのため、幅広い知識とスキルを持った組込みエンジニアの需要は高く、現役のエンジニアとして活躍し続けることができます。世の中の流れと業界の現状を考えると、ES資格の将来性は高いといえるでしょう。
3.幅広い分野で活躍できる
ES資格の取得には、ソフトウェアだけでなくハードウェアに関しても高度な知識やスキルが必要です。そのため、システムをハードウェアに組み込む専門家ともいえます。昨今は、IoTにAIを組み込んだシステムが注目されていることもあり、以下のような非常に幅広い分野での活躍が可能です。
・コンシューマー
・オートモーティブ
・セキュリティ
・ヘルスケア
・スポーツ
・エンターテインメント
・インダストリー
DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に向け、国が掲げるサイバー空間とフィジカル空間を合致させたシステムによる理想社会「Society5.0」を担うトップエンジニアを目指せます。
4.転職が有利になる
ESはさまざまな業種・分野を問わず、幅広く活躍できます。既存の組込みシステムだけでなく、IoTやAI、ビッグデータなどの先進技術を活用した組込みシステムは、業種を問わず必要とされています。
一般的なエンジニアよりも、多くの場面で活躍できることでしょう。
ES資格は難易度が高いこともあり、資格取得者は組込みエンジニアとして、高度な知識とスキルを保有していることをアピールできます。組込みエンジニアとしての知識とスキルを客観的に示せるため、転職を有利に進めることが可能です。
エンベッドシステムスペシャリストは今後さらに需要が高まる!
ES資格は、組込みシステムに特化したエンジニアのための国家資格です。エンベデッドシステムスペシャリストはシステムエンジニアの一種ですが、広範囲の専門知識と発想力、さらにプロジェクトチームを管理する能力が求められます。
ES資格の近年の合格率は16.4%と難易度は高めですが、取得することで知識とスキルの証明ができます。資格を取得することで、幅広い分野で活躍でき、転職でも有利になるほか、仕事の質を上げることにもつながるでしょう。
IoT化が進む昨今では、エンベデッドシステムスペシャリストを始めとした組込み系エンジニアが今まで以上に必要とされています。将来性を考慮して、ES資格を取得してみてはいかがでしょうか。