データベーススペシャリスト試験の内容とは?勉強法や合格のメリットも解説
本記事では、試験の内容やデータベースに関する仕事内容、試験の対策などについて解説するので、データを扱う業務に興味のある方は参考にしてください。
本記事では、試験の内容やデータベースに関する仕事内容、試験の対策などについて解説するので、データを扱う業務に興味のある方は参考にしてください。
スキルアップ
2022/10/20 UP
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ビッグデータはAIやIoTとも関連したテーマであり、現代においてデータは高い価値を持つ資源です。データの管理やデータベースシステムの構築を行なうエンジニア向けの資格に、データベーススペシャリスト試験があります。本記事では、試験の内容やデータベースに関する仕事内容、試験の対策などについて解説するので、データを扱う業務に興味のある方は参考にしてください。
データベーススペシャリストとは
はじめにデータベーススペシャリスト試験の概要と、試験の主催機関が想定する対象者について紹介します。またデータベースに関するさまざまな仕事内容を解説します。
試験の概要
データベーススペシャリスト試験とは、情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験である情報処理技術者試験の一区分です。情報処理技術者試験の各区分は、その難易度に応じたスキルレベルが1~4まで設定されています。本試験は最も難易度が高いレベル4に位置付けられており、高度な知識や技能を持つIT技術者であることを証明する資格といえるでしょう。
本試験はデータベース管理者やインフラ系エンジニアを目指す人が対象です。データベース全般の専門知識に関する問題が出題され、データ資源の管理方法やデータ分析手法、データをビジネスで活用する知識や実践能力などが問われます。
期待される役割
試験の主催機関であるIPAは、本試験の対象者像および期待する業務と役割を明示しています。対象者像としては、データベースに関係する固有技術を活用し、情報システム基盤に関するビジネスで中心的な役割を果たすこと、データベースの専門家としての技術支援を行なうことなどを挙げています。
業務や役割については、データ資源の管理やデータベースシステムの企画・要件定義・開発・運用・保守などがあります。高品質なデータベースを扱えるよう、技術動向や目的に応じた技術の選定、利用者の要求に基づくデータ分析とデータモデルの作成などに関する知識や実践能力も必要な資質です。
データベースに関する仕事内容
ビジネスの場におけるデータベース関連業務について解説します。数年前からビッグデータというキーワードがトレンドになっており、ビッグデータをビジネスの場で活用する機会が増えています。特にWeb業界や金融業界は、データを収集しやすいためにデータの活用がより進んでいる業界といえるでしょう。
エンジニアの業務であれば、データの種類に応じたデータベースの作成、データベース言語SQLを用いたデータベースの開発作業などが挙げられます。他にも、データを通して新しい洞察を発見してビジネスの方針を決めるコンサルタントの役割もあります。
膨大なデータを分析することで、信頼性の高い将来の予測をしたり、これまで誰も気付いていないような新しい発見が生まれたりすることもあるでしょう。データ活用から客観的な事実に基づいたビジネスの判断ができるようになります。業界によってはデータ収集に手間がかかるために活用が進んでいないこともありますが、そういった業界でも今後はデータ活用が広まっていくでしょう。
データベーススペシャリスト試験の内容
データベーススペシャリスト試験は、時間で区切られた4つの試験で構成されています。各試験の形式や出題の傾向などを紹介します。
試験時間・出題形式
例年の試験時期は10月の第3日曜日です。受験できるのは年に一度だけなのでご注意ください。以下の午前と午後に分かれた4試験で構成されており、各試験ですべて100点満点中60点を取ることが合格条件です。
試験区分 | 午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ |
---|---|---|---|---|
試験時間 | 9:30-10:20 | 10:50-11:30 | 12:30-14:00 | 14:30-16:30 |
出題形式 | 選択式 | 選択式 | 記述式 | 記述式 |
出題数 | 30問 | 25問 | 3問 | 2問 |
解答数 | 30問 | 25問 | 2問 | 1問 |
試験の採点では多段階選抜方式を採用しています。この方式では、前の時間の試験が基準点に達しないと、その後の時間の試験は採点されずに不合格になるというものです。通常は試験後の成績照会をすれば各試験の点数が確認できますが、採点されなければ点数は表示されません。
午前Ⅰ・Ⅱ試験
午前Ⅰ・Ⅱ試験はいずれも選択式の問題です。午前Ⅰ試験はテクノロジ系17問、マネジメント系5問、ストラテジ系8問の計30問で、応用情報技術者試験の午前試験と同等レベルの難易度になっています。また午前Ⅰ試験のみ免除制度があり、以下3つのうちいずれかの条件を満たせば、その後2年間は受験を免除されます。
・応用情報技術者試験の合格
・いずれかの高度試験または支援士試験の合格
・いずれかの高度試験または支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る
午前Ⅱ試験はデータベースと関連が深い以下の分野から出題され、試験問題のうち約7割はデータベース分野から出題されます。
・コンピュータ構成要素
・システム構成要素
・データベース
・セキュリティ
・システム開発技術
・ソフトウェア開発管理技術
過去問と近い問題が多く、特に難問は再度出題されやすい傾向にあります。ただしセキュリティ分野は新しい用語も出題されることがあるので、押さえておくとよいでしょう。
午後Ⅰ・Ⅱ試験
午後Ⅰ・Ⅱ試験はいずれも長文形式の問題であり、午前試験と違って記述式の問題も出題されます。午後Ⅰ試験は3問中2問を自分で選択して回答します。過去の試験の傾向としては、技術者が実務で扱うようなシチュエーションを想定し、設計や分析の業務における理解度を問うような内容でした。SQLやデータベースの正規化に関する問題も出題されています。
午後Ⅱ試験は2問中1問を選択して回答する形式です。問題文が10ページ以上にわたることもあるほど長く、午後Ⅰ試験よりも難易度が高いです。午後Ⅰ試験と同様に実務の業務を想定した内容であるため、実際にデータベースの設計や運用の経験があればイメージしやすいでしょう。
データベーススペシャリスト試験の難易度と対策
データベーススペシャリスト試験は、情報処理技術者試験の最難関であるスキルレベル4に該当し、難易度は高いです。試験の勉強法や対策などについて解説します。
合格率について
本試験の合格率は約15%と低いですが、他の高度情報技術者試験も同程度の水準となっています。ちなみにスキルレベル2の基本情報技術者試験の合格率は20~40%、スキルレベル3の応用情報技術者試験は20~25%の合格率でした。レベルが高くなるにつれて合格率も下がる傾向にあることがわかります。
試験の受験者の経験年数も公表されており、割合としては2~6年の経験を持つ人がボリュームゾーンです。また本試験の受験者は応用情報技術者試験の合格者も多くいると想定されます。そういった受験者のなかで15%の合格率と考えれば、難易度は高いといえるでしょう。
おすすめの勉強法
重要なのは過去問演習です。午前試験は過去問と同じ問題が半分近く出題されるため、過去問にしっかり取り組むことで合格基準の60%に到達する可能性が高くなります。午後試験は過去問と同じ問題が出題されることはありませんが、どのような問題が出題される傾向にあるかをつかんでおくと勉強しやすいでしょう。また午後試験は長文を読んで回答するため、時間配分の練習にもなります。
試験勉強する際には、本を読んで覚えるなどのインプットよりも、実際に問題を解くようなアウトプットを重視することをおすすめします。特に午後試験の記述式の問題は、普段から書き慣れていなければ本番で書くことが困難になります。またデータベース言語であるSQLの経験がない人は早めに着手して慣れておくとよいでしょう。実際にSQLを書いて挙動を確認するのも勉強になります。
各試験の対策
午前Ⅰ試験は、IT全般が試験範囲となるためたくさん覚えることがあります。試験の免除条件を満たしているのであれば、免除期間が終わらないうちに試験を受けることをおすすめです。また午前Ⅰ・Ⅱ試験はいずれも過去問からの出題が多くあります。本試験だけでなく応用情報技術者試験の過去問も合わせて対策しておきましょう。
午後Ⅰ試験は、短時間で内容を理解し回答する練習を積みましょう。過去問や試験問題集などで時間配分の練習ができます。また論理設計やSQLに関する問題が多く出題されるため試験問題のパターンを学んでおくと良いです。SQLについてはデータ操作に関する基本構文を頭に入れておきましょう。
午後Ⅱ試験は午後Ⅰ試験よりもさらに長文の問題が出題されるため、時間配分がより難しくなります。先に問題を読んで問われているポイントを把握してから長文を読むという手順がおすすめです。問題の解き方には慣れも必要になるため、実際に試験問題を解いて練習しておきましょう。
データベーススペシャリスト試験に合格するメリット
試験に合格するメリットについて紹介します。データベース全般の知識が身に付くだけでなく、就職や転職におけるアピールポイントとしても活用できます。
データベース全般の知識が身に付く
データベース分野全般の知識が身に付き、データベースに関連したソフトウェアを扱いやすくなります。今のIT社会においてデータは非常に価値のある資源です。ビッグデータ技術は注目されており、IoTやAI分野との関連もあります。IoTやAIを扱う場合にもデータベースの知識は活用できるでしょう。
企業が扱う膨大なデータの管理、信頼性の高いデータベースの構築、ビジネスへのデータ活用の検討といった業務でも知識が役立ちます。これまで実務でデータベースを触れていたという人もいるかもしれませんが、実務で触れるのは一部分だけで、知識に抜けや漏れがあるかもしれません。試験勉強を通して網羅的に知識が身に付くことが期待できるでしょう。
データを扱う職種への就職や転職で有利
ビッグデータ技術に関するエンジニアには、データベースエンジニアのほかにもデータアナリストやデータサイエンティストと呼ばれる職種があり、いずれも高い需要があります。本試験に合格することで、データ分析やデータベース開発に対して高い実力を備えていることをアピールできます。転職を考える場合は、実務経験を積んでいたり、学んだ内容に関するポートフォリオが用意できていたりするとさらに有利です。
またデータベース関連の資格には、Oracle社によるORACLE MASTERのようなベンダー資格もあります。しかしベンダー資格は対象となる製品が導入されている職場で無ければ活用できません。国家資格であるデータベーススペシャリスト試験は汎用性が高いといえるでしょう。
他の試験の一部免除がある
試験に合格することで他の試験が一部免除されたり、応募資格が得られたりなどのメリットがあります。具体的には以下の試験や募集などで優遇措置があります。
・中小企業診断士、弁理士、技術士、ITコーディネーターの一部の試験が免除
・警視庁や各府県警のサイバー犯罪捜査官や情報処理区分の採用における応募資格の一つ、または加点の扱い
・厚生労働省のものづくりマイスター事業「ITマスター」の募集条件の一つ
データベーススペシャリスト試験はデータ技術に関する専門性があることを示す
データベーススペシャリスト試験は、情報処理技術者試験のスキルレベル4に該当する難関資格です。データベースの作成や開発、管理運用などの業務に関する知識が問われます。ビッグデータ技術が注目を集めていることもあり、データ分析に関するエンジニアやコンサルタントはさまざまな業界でニーズが高まっています。
本試験には午前Ⅰ・Ⅱ試験、午後Ⅰ・Ⅱ試験の4試験があり、特に午後の試験は長文問題で高難易度となるため対策が必須といえるでしょう。適切な時間配分の練習と、過去問から頻出分野を把握して対策することをおすすめします。試験に合格することでデータベース全般の知識が身に付き、データを扱う職種への就職や転職でも有利に働くことが期待できます。