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ITスキル標準(ITSS)とは?7段階のスキルレベルや資格について

この記事では、ITスキル標準の概要や策定された背景、スキル評価や11種類の職種について解説します。新設された「ITSS+(プラス)」についても触れていくので、ぜひ最後までお読みください。

ITスキル標準(ITSS)とは?7段階のスキルレベルや資格について

この記事では、ITスキル標準の概要や策定された背景、スキル評価や11種類の職種について解説します。新設された「ITSS+(プラス)」についても触れていくので、ぜひ最後までお読みください。

知識・情報

2022/11/22 UP

インターネットを活用したビジネスが普及し、あらゆる場面でITの存在は欠かせないものとなりました。IT産業の発展にともない、IT人材の需要も高まっています。

ITスキル標準(ITSS)は、高度なIT知識・技能を有する人材の育成のために作成された指標です。IT領域のサービスではどのようなスキルが必要となるかを明確にしており、それをもとにスキルの習得を目指すことができます。

ITスキル標準について、名前は知っていても、どのようなものなのかは知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ITスキル標準の概要や策定された背景、スキル評価や11種類の職種について解説します。新設された「ITSS+(プラス)」についても触れていくので、ぜひ最後までお読みください。

ITスキル標準(ITSS)とは

ITスキル標準(ITSS、IT Skill Standard)とは、高度IT人材の育成を目的として作成された、ITに関する能力を評価する指標です。2002年12月に経済産業省が公表し、現在は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって管理されています。

ITスキル標準では、IT領域のサービス提供に必要なスキルを明確にし、体系化しています。ITスキル標準における「スキル」とは、特定の分野における技能ではなく、自らの業務課題を満足に実現できる「実務能力」とされています。

また、IT領域の職種を11種類に分類し、そのうえで能力に応じた7段階のレベルを設定しています。

高いレベルのスキルを有していることは、顧客やプロジェクトメンバーなどに対して、プロフェッショナルとして高い価値を提供できるということを意味します。そのため、単に技能的なスキルが高いだけでなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力の高さも要求されるのです。

ITスキル標準(ITSS)が策定された目的・背景

1990年代以降、IT産業は急速に発展していきました。

ビジネスモデルの変化にともない、さまざまな企業で高度IT人材が求められるようになりました。需要に対して、IT業界は人材不足が深刻であり、企業はいかにIT人材を確保するかが大きな課題でした。

当時、日本政府も国家戦略の一つとしてIT産業の発展を推進しており、高度IT人材の育成も重要課題の一つとして挙げられていました。

人材育成を効果的に行なうためには、キャリアパスや習得すべきスキルを標準化・明確化する必要があります。そこで、企業が共通して使用できる実用性の高いスキル指標として、ITスキル標準が策定されたのです。

ITスキル標準(ITSS)の7段階のレベル評価

ITスキル標準(ITSS)の7段階のレベル評価 クリックして拡大

ITスキル標準は、スキルに応じた7段階の評価があります。ITスキル標準の7段階のレベル評価について、それぞれ見ていきましょう。

レベル1

エントリーレベルです。IT企業における実務未経験者や新入社員などが該当します。

IPAは「情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる」段階であると定義しています。

レベル2

ミドルレベルであり、一定範囲の作業であれば独力で担当することができるレベルです。

IPAは「上位者の指導の下に、要求された作業を担当する。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる」段階であると定義しています。

レベル3

ミドルレベルであり、高度IT人材としてのスキルを有していると評価される段階です。

IPAは「要求された作業を全て独力で遂行する。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有する。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる」レベルと定義しています。

レベル4

よりハイレベルな、高度IT人材に該当するレベルです。

IPAは「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤとして認められる。スキル開発においても自らのスキルに研鑽を継続することが求められる」段階であると定義しています。

レベル5

ハイレベルな高度IT人材のなかでも、上位に該当するレベルです。

IPAは「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内においてテクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレーヤとして認められる」レベルと定義しています。

レベル6

高度IT人材のスーパーハイレベルに該当する評価です。

IPAは「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレーヤとして認められる」レベルと定義しています。

レベル7

高度IT人材において、最も高いスキルレベルの評価です。

IPAは「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレーヤとして認められる」段階と定義しています。

ITスキル標準(ITSS)の分類による11の職種

ITスキル標準(ITSS)の分類による11の職種 クリックして拡大

ITスキル標準で設定された職種とは、ビジネスにおいてITエンジニアが活動する専門領域を分類したものです。ITスキル標準の分類による11の職種について、それぞれ見ていきましょう。

【職種1】マーケティング

マーケティングは、顧客ニーズに対応するため、市場の動向を予測・分析します。そのうえで、事業戦略、販売戦略、実行計画、資金計画などのビジネス戦略を企画・立案して実施する役割を担います。

また、戦略の投資効果、新規性、顧客満足に対して責任を有しています。

【職種2】セールス

セールスは、顧客の経営方針を確認し、課題解決策の提案、 ビジネスプロセスの改善支援・ソリューション、製品・サービスの提案を行ない成約につなげる役割を担います。

顧客との良好な関係性を構築し、顧客満足度を高めることも重要です。

【職種3】コンサルタント

コンサルタントは、顧客のビジネス戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献することを目的としています。そのために必要な提言や助言を行ない、IT投資の経営判断を支援します。

提言によってもたらされた価値や効果、顧客満足度、実現可能性などに対して責任を有しています。

【職種4】ITアーキテクト

ITアーキテクトは、ハードウェアやソフトウェア関連技術を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために高品質なITアーキテクチャを設計します。

ソリューションを構成するための基準を明らかにし、実現性に対する技術リスクの影響について事前評価を行ないます。

【職種5】プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの提案から、立上げ、計画、実行、監視コントロール、終結までを実施します。

納入物やサービスについて、品質やコスト、納期を管理する役割を担います。

【職種6】ITスペシャリスト

ITスペシャリストは、顧客の環境に最適なシステム基盤の設計、構築、運用、保守などを行ないます。

構築したシステム基盤の性能、回復性、可用性などに責任を持ちます。

【職種7】アプリケーションスペシャリスト

アプリケーションスペシャリストは、アプリケーション開発に関する専門技術を活用し、業務上の課題を解決するためのアプリケーションの設計、開発、構築、活用、テストおよび保守を実施します。

また、構築したアプリケーションの品質に対して責任を有します。

【職種8】ソフトウェアデベロップメント

ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウェアエンジニアリング技術を活用して、マーケティング戦略に基づいたソフトウェア製品の企画、仕様決定、設計、開発を実施します。

上位レベルでは、ソフトウェア製品に関するビジネス戦略立案や、コンサルテーション開発なども担います。

開発したソフトウェア製品の機能性、信頼性などに対して責任を持ちます。

【職種9】カスタマーサービス

カスタマーサービスは、ハードウェアやソフトウェアに関連する専門技術を活用し、顧客のシステム環境に合致したハードウェア・ソフトウェアの導入、カスタマイズ、保守、修理を担当します。

また、顧客のシステム基盤管理やサポート、ITインフラの設計、構築、導入、管理、運営を行ないます。

導入したハードウェア、ソフトウェアの品質に対して責任を有します。

【職種10】ITサービスマネジメント

ITサービスマネジメントは、システム運用関連技術を活用し、サービスレベルの設計を行なう仕事です。

サービスレベルの維持・向上のため、システム稼動情報の収集・分析を行ないます。また、システム基盤管理を含めた運用管理も担当します。

システム運用リスク管理の側面から、システム全体の安定稼動に対して責任を持ちます。

【職種11】エデュケーション

エデュケーションは、専門技術をもとに、研修カリキュラムの設計、開発、運営、評価などを実施する仕事です。ユーザーのスキル開発要件を踏まえたカリキュラムの設計を行ないます。

ITスキル標準(ITSS)と情報処理技術者試験の各種資格

ITスキル標準(ITSS)と情報処理技術者試験の各種資格

IPAが主催する「情報処理技術者試験」は、ITスキル標準(ITSS)に対応した試験です。ITスキル標準のレベルと、それに対応する試験について、具体的に見ていきましょう。

【ITSSレベル1】ITパスポート試験

ITパスポート試験は、情報処理技術者試験のなかで最も難易度の低い試験です。資格を取得することで、業種・職種を問わず、業務で必要となる基本的なIT知識を有していることを証明することができます。

資格の学習をとおして、社会人として必要なITの基礎的能力を身に付けることが可能です。

【ITSSレベル2】基本情報技術者試験(EF)

基本情報技術者試験は、高度IT人材に必要な基本的知識・技能、それを活用する能力がある人を対象とした試験です。ITエンジニアの基礎資格であり、ITパスポートと比べてテクノロジーに関する出題が多い傾向にあります。

「ITエンジニアの登竜門」とも呼ばれる資格で、学習をとおしてITに関する基礎知識を固めることができます。

基本情報技術者試験については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
新しくなった基本情報技術者試験とは?合格を目指すメリットや勉強法も紹介

【ITSSレベル3】応用情報技術者試験(AP)

応用情報技術者試験は、戦略から設計・開発、運用についての知識が求められる、基本情報技術者試験の上位試験です。

IT技術者として数年経験を積んだ人を対象とした試験で、IT技術に加え、マネジメント能力や戦略立案など、幅広い分野の知識と応用力が問われます。

プロジェクト管理などの知識も要求されるため、プロダクトマネージャーを目指す場合はぜひ取得しておきたい資格の一つといえるでしょう。

応用情報技術者試験については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
応用情報技術者試験とはどのような試験?難易度や資格を取るメリットも説明

【ITSSレベル4】その他の高度試験

スキルレベル4に該当する試験は、より専門性が高い内容になっています。


ITストラテジスト試験
システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
ネットワークスペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験
システム監査技術者試験

いずれも実務能力が重視される高難易度試験です。自らの経験に基づいて回答する問題や、論述試験もあります。受験前には、過去問や参考書でしっかり学習しておくことが大切です。

新設された「ITSS+(プラス)」とは?

「ITSS+」は、新しいスキル標準です。第4次産業革命に向けて必要とされるIT人材の育成のために、経済産業省によって策定されました。また、すでにITエンジニアとして活躍している人材にとって、スキルの強化・学び直しのための指針となります。

ITSS+では、ITSSの領域に加えて、新たに必要となる4つのスキル領域を策定しています。


・データサイエンス領域
・アジャイル領域
・IoTソリューション領域
・セキュリティ領域

データサイエンス領域は、大量のデータを分析し、分析結果を活用するために求められる一連のタスクや必要スキルがまとめられています。

アジャイル領域は、アジャイル開発の基盤となるマインドセットや原則、アジャイル開発プロセスやチームの特徴、開発者の学ぶべきスキルについて解説されています。

IoTソリューション領域は、ITベンダーとして必要な技術要素や、開発プロセスなどに焦点が当てられています。

セキュリティ領域では、企業がセキュリティ対策を講じる際に必要となるセキュリティ関連業務を17分野に整理しています。分野ごとに求められる知識・スキルがまとまっており、企業におけるセキュリティ人材の育成や、セキュリティ体制の構築に役立てることができます。

ITスキル標準は高度IT人材を育成するための指標

1990年代以降、IT産業が急成長し、ビジネスモデルも大きく転換しました。IT業界の発展にともない高度IT人材の需要も急激に伸びましたが、需要に対して人材育成が追い付いていない状況でした。

効果的な人材育成を行なうために、仕事に対してどのようなスキルが必要なのかを明確化・標準化することが求められました。そのような背景から、「ITスキル標準」は企業が共通して使用できるスキル指標として策定されたのです。

ITスキル標準に対応する試験に「情報処理技術者試験」があります。すべての社会人に求められる基礎知識を問う試験から、IT技術者向けの試験、専門性の高いスペシャリスト試験まであり、資格を取得することで自分のスキルを客観的に証明することもできます。

近年、企業に求められるセキュリティ対策が高度化していることもあり、ITSS+ではセキュリティ領域をはじめとする4つの領域が新たに策定されました。既存のエンジニアの知識を強化する学び直しとして、新たな指標が示されています。

IT技術は日々進歩しており、エンジニアに求められるスキルも変化していきます。ITエンジニアとして第一線で活躍するためには、新しい領域の知識の習得や、担当業務に関する知識をより深化させていくことが求められているのです。