情報セキュリティスペシャリスト(現情報処理安全確保支援士)とは?制度変更による違いや取得するメリット
セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士の違いや取得するメリットについて解説します。
セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士の違いや取得するメリットについて解説します。
スキルアップ
2022/01/19 UP
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IT技術の進歩にともない、サイバー攻撃も多様化・巧妙化が進んでおり、セキュリティのスペシャリストの存在は重要性を増しています。そんなセキュリティのスペシャリストを認定する資格として、情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティスペシャリストは有名です。
現在では制度変更により、情報セキュリティスペシャリストは情報処理安全確保支援士へと変わりましたが、違いについて知りたい方は多いのではないでしょうか。この記事では、セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士の違いや取得するメリットについて解説します。
情報セキュリティスペシャリスト(情報処理安全確保支援士)とは
情報セキュリティスペシャリスト試験は、IPAが主催する情報処理技術者試験として2016年まで実施されていた試験です。2017年からは制度が変更され、情報処理安全確保支援士試験となりました。
情報処理安全確保支援士は、セキュリティエンジニアやセキュリティコンサルタントを目指す人に最適な資格であり、サイバーセキュリティに関する専門的な知識・スキルを有することを証明できる資格です。
試験では情報システムやシステム基盤の脅威分析、セキュリティ要件を抽出するための知識や実践能力だけでなく、情報セキュリティマネジメントや法的な知識も問われます。加えて、ネットワークやデータベースなどの知識も求められ、幅広く深い知識・スキルが必要です。
試験は毎年春期(4月)と秋期(10月)に実施されています。合格するためには、午前?・午前?・午後?・午後?の4つの異なる出題形式の試験それぞれの合格ラインを上回る必要があります。
情報セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士の違い
制度変更によって変わった2つの試験の違いについて、簡単に解説します。
試験内容や難易度には大きな違いはない
情報セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士のIPAのページを比べてみると、期待する技術水準や試験の出題形式に大きな違いはありません。対象者像を見比べてみると、情報セキュリティスペシャリストはエンジニア向け、情報処理安全確保支援士はコンサルタントなどのより経営に近い人材向けのように見えます。
情報処理安全確保支援士試験は情報セキュリティスペシャリスト試験をベースに作られており、難易度はほぼ同レベルといわれています。情報セキュリティスペシャリスト試験の合格率は毎年15%前後であり、最後に実施された2016年の合格率は14.9%でした。
対して、情報処理安全確保支援士試験の合格率は16%〜19%弱程度となっており、合格率ベースで見ると情報処理安全確保支援士試験のほうが若干難易度は低いといえるでしょう。
情報処理安全確保支援士になるためには登録が必要
最も大きな違いとしては、情報処理安全確保支援士として登録情報セキュリティスペシャリストの資格保持者となれる点です。試験に合格した場合、“支援士になる資格を有する者”という位置づけになります。
実際に情報処理安全確保支援士として認定されるためには、試験合格後に共通講習と実践講習の2種類を受講しなければなりません。講習の受講後、情報処理安全確保支援士(登録情報セキュリティスペシャリスト)として活動できるようになります。
加えて、その後は毎年オンライン講習を受講するとともに、3年毎に集合講習を受講して資格の更新が必要です。情報処理安全確保支援士になるための手順を簡単に以下にまとめました。
1.情報処理安全確保支援士試験に合格する(受験手数料5,700円)
2.支援士になるための講習を受講(登録手数料10,700円、登録免許税9,000円)
3.支援士の資格を更新するための講習を受講(オンライン講習20,000円、集合講習80,000円)
情報処理安全確保支援士として活動するためには、試験に合格するだけでなく、その後の講習受講や毎年の更新が必要になる点が従来との大きな違いです。
情報処理安全確保支援士を取得するメリット
情報処理安全確保支援士として活動するためには多くの手順が必要になります。また、費用もかかることから取得するメリットについて詳しく知りたいという方は多いでしょう。ここではメリットとして大きく3つご紹介します。
IT系初の士業として公的にスキルを証明できる
情報処理安全確保支援士は、IT系では初の士業となります。支援士として認定されるとロゴマークが名刺などで利用できるようになり、セキュリティに関するスペシャリストとして、公的にスキルを証明できます。
ただし、弁護士などの士業とは異なり、独立して看板を掲げられるような資格ではありません。あくまでも会社員やフリーランスとして、本業に付随するスキルを証明するための資格となります。
しかし、今後はさらにセキュリティに精通した人材はどのような場面でも重宝されることは間違いありません。IT関連の知識・スキルは証明することが難しいものですが、士業として公的に証明できることは、ビジネスにおいて多くのチャンスをもたらすものとなるでしょう。
機密度の高い案件に参画できる
ビジネスチャンスを増やすという意味では、支援士の資格を有することで機密度の高い案件に参画できる点も見逃せません。例えば、官公庁などの機密度の高い案件に参画するための条件として、支援士を有することを挙げている案件もあります。
支援士を有する企業は案件への参画可能件数が増え、事業の発展にも役立てられるでしょう。このことからも、支援士の取得は個人のみならず、会社全体として検討することをおすすめします。
個人で支援士の資格を取得しようとする場合、最も大きなハードルは費用面です。会社がサポートすることで、将来的な会社の利益にもつながります。
検索サービス、JP−RISSAへの入会
情報処理安全確保支援士になると、一般社団法人情報処理安全確保支援士会(JP−RISSA)への入会が可能です。JP−RISSAは会員のスキル維持と向上を目的とした勉強会などを定期的に実施しており、コミュニティに参加することで専門性の高い情報交換が行なえます。
加えて、IPAの情報処理安全確保支援士検索サービスに登録できます。検索サービスは得意分野や保有スキル、勤務地などのさまざまな情報が登録でき、誰もが簡単に検索できるサービスです。
企業や自治体はこのサービスを使って最適な支援士を探せます。フリーランスとして活躍する場合には、検索サービスを利用することで活躍する機会を増やすこともできるでしょう。
情報セキュリティスペシャリスト試験で知識やスキルを証明しよう
情報セキュリティスペシャリスト試験は2017年に制度変更し、現在では情報処理安全確保支援士となっています。従来どおりセキュリティエンジニアやセキュリティコンサルタントを目指す人に最適な資格であり、情報セキュリティに関する知識やスキルを有することを証明できる資格です。
試験内容や難易度に大きな違いはありませんが、情報処理安全確保支援士は試験合格後に講習を受講することではじめて認定されます。支援士として認定されれば、IT系初の士業として公的にスキルを証明でき、機密度の高い案件への参画や、独自の検索サービスへの登録、JP−RISSAへの入会が可能です。
支援士になるための講習には費用がかかることから、会社からサポートしてもらいながら認定を目指すことをおすすめします。個人だけでなく会社としても支援士のメリットは大きいため、今後より重要視されるとみられるセキュリティのスペシャリストとして、資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。