AIエンジニアとは?仕事内容、必要なスキルや資格について解説
AIエンジニアの役割や具体的な仕事内容、AIエンジニアに求められるスキルや資格について解説していきます。
AIエンジニアの役割や具体的な仕事内容、AIエンジニアに求められるスキルや資格について解説していきます。
キャリア
2021/06/09 UP
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近年、多くの企業でAI(人工知能)を利用したシステム開発が進み、実際に使用されるようになりました。Webサイトに設置されているお問い合わせのチャットボット機能は、生活に身近なAIの活用事例の一つといえるでしょう。
こうしたAIを扱う人材をまとめて「AI人材」と呼びます。そして、このAI人材の中でも特に活躍の場を広げているのが「AIエンジニア」という仕事。今後の発展や成長が見込まれているにも関わらず、あまり知られていないAIエンジニアの業務とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、AIエンジニアの役割や具体的な仕事内容、AIエンジニアに求められるスキルや資格について解説していきます。
なお、AI人材全般については『AI人材とは?必要な理由と求められるスキルや育成方法を解説』で詳しく説明しているので、こちらも併せてご覧ください。
AIエンジニアとは
人間のような判断能力・学習が行なえるソフトウェアやシステムを総称してAIと呼びます。では、AIに関わる開発を行なうAIエンジニアの役割とは、どのようなものなのでしょうか。
AIエンジニアの役割
AIエンジニアは、Pythonなどの言語を使用した「AI開発」、AIにデータを入れて精度を上げていく「学習」、そして運用しているAIを検証し、より精度を上げていくための「分析」を行ない、AIを構築、運用していくのがおもな役割となります。
企業はAIを活用して、ビジネスにおけるさまざまな課題を解決します。AIエンジニアは、AIの専門知識や技術を活用してAIシステムを開発し、企業が抱えている課題を解決に導くことが求められています。
AIエンジニアとITエンジニアの違い
このようにAIのシステムを作って企業の課題を解決するAIエンジニアは、一般的にいわれているITエンジニアとどう違うのでしょうか。
ITエンジニア
ITエンジニアのおもな仕事は、あらかじめ決められた仕様書や企画書通りにシステムを開発することです。そのため、作業工程や構築するシステムに、ある程度決まった型があるのが特徴です。
AIエンジニア
一方のAIエンジニアも、AI開発のタイミングでは、ITエンジニア同様、決められた仕様書や企画書通りにシステム開発を行ないます。しかし、AIエンジニアは、この内容がAIに関わるものとなるため、求められる知識が変わってきます。
例えば、プログラミング言語はPythonやC、C++などが多く、JavaやC#が多いとされるITエンジニアとは違います。また、TensorFlow、PyTorch、Kerasなど使用するライブラリも違うため、これらが使える必要もあります。
さらに、前述の通りAIエンジニアはAIに学習させる工程や分析の部分を担う場合もあります。そのため、ITエンジニアとAIエンジニアは同じ開発を行なうエンジニアといえど、業務内容、求められる知識やスキルが大きく変わります。
AIエンジニアの具体的な仕事内容
AIエンジニアの役割を理解したところで、具体的な仕事について解説していきます。
上述の通り、AIエンジニアの仕事は「AI開発」「学習」「分析」の3つに分けることができます。ここでは、それぞれどのような仕事なのかを解説していきます。
AI開発
まずはAIエンジニアのもっとも重要な部分、AIの開発です。
近年、AI開発といえばディープラーニングといわれるほど、ディープラーニングが用いられています。このディープラーニングには、TensorFlow、PyTorch、Kerasなどのライブラリがあり、これらを活用しながら開発を行ないます。
プログラミング言語としては、上記のライブラリで使用されているPythonが主流です。エッジAIと呼ばれる端末側に入れ込むタイプのAIの場合、CやC++が用いられることもあります。
なお、エッジAIについては、以下の記事も併せてご確認ください。
エッジAIとは?クラウドAIとの違いや利用シーンについても解説
学習
AIを開発後は、AIの精度を高める学習を行ないます。
構築したAIにはデータを大量に与える必要があります。AIエンジニアは、このデータを収集、作成し、クレンジングと呼ばれる不要データの削除なども行なう場合があります
なお、この学習の作業はデータサイエンティストが担当する場合もあります。データサイエンティストについては、「データサイエンティストとは?スキルや需要、将来性について徹底解説!」も併せてご確認ください。
分析
最後は分析です。分析まで行なうAIエンジニアはそこまで多くありませんが、多くの場合、分析に必要なデータの提供などは行ないます。
分析の場面では、データサイエンティストやデータアナリストなども活躍します。
データアナリストは、データサイエンティストと同様にデータの解析・分析により、プロジェクトの目的をどのように達成するべきかを提案するのがおもな仕事となります。例えば、顧客ニーズを把握するためにデータを分析し、その結果をもとに仮説を立て、企業の課題解決に必要なものを提案します。
データサイエンティストと似ている部分が多い職種ですが、データアナリストのほうがより分析に特化している職種といえるでしょう。
AIエンジニアのおもな活躍の場とは
AIエンジニアの仕事について確認したところで、ここからは、AIエンジニアが実際に活躍し、必要とされている現場について紹介します。
AI技術を採用している企業
AIエンジニアは、今までは例えば自動運転などの分野で多く募集されていました。しかし、金融や医療メーカー、製造業などでもAI技術が扱われるようになるため、今後は幅広い企業で求められると考えられます。
またメーカーだけでなく、SIer(システムインテグレータ)系の企業や、AIシステム専門の開発会社、AIに特化して研究を行なう企業などもでてきており、ますます活躍の場が広がるでしょう。
AIシステムは、一度システムを開発すれば終わりというものではありません。AIシステムを維持していくためには、保守や修理といったアフターフォローも必要となります。そのためAIを活用する企業が増えるにともない、AIエンジニアの需要はますます高まっていくことでしょう。
AI関連の教育者
近年、AIエンジニアを求める企業が増えている一方で、AIエンジニアはまだまだ人材が不足している状況です。
今後は政府のAI戦略により、AI教育が一般化していくと考えられています。近い将来、AI教育ビジネスとして、専門学校や民間スクールが盛んになっていくことが予想されています。
そのため、AIの知識をもつことでAI関連のエンジニアを育てる教育者としても、活躍できる可能性があります。
AI関連の知識や技術は、非常に専門性が高いものとなります。そのためAI関連の教育者となる場合は、AIエンジニアとして働いた経験や知識が大いに役立つことでしょう。
大学や研究機関の研究者
AIエンジニアには、大学や研究機関でAI関連の技術を専門に研究する道もあります。
企業にAIエンジニアとして勤務する場合は、あくまでも営利目的でのAI開発を行ないます。そのためAIエンジニアには、プロジェクトに対する結果が第一に求められることとなります。
それに対し大学や研究機関での勤務は、営利目的ではなく、AI技術を用いて社会全体への貢献をすることが目的となります。また「知りたい」「やってみたい」という、純粋な動機でのAI開発を行なえる可能性があります。
大学や研究機関では、既存技術の応用ではなく、新しいAI技術を開発する基礎研究に携わる機会が多くなります。そのため、AIに関するより高度な知識やスキルが求められることとなります。
AIエンジニアに必要な知識やスキル
では、AIエンジニアに必要とされるスキルとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。ここからは、AIエンジニアになるうえで欠かせない知識やスキルについて解説していきます。
機械学習やディープラーニングの知識
AIエンジニアは、企業の課題を解決するためにさまざまなデータを解析しAIを構築、最終的にシステムという形で落とし込んでいきます。
AIというと2021年現在ではディープラーニングを指す場合が多いものの、求められる要件によっては機械学習が適している場合もあります。そのためAIエンジニアは、機械学習とディープラーニングの両方について理解していることが望ましいです。
汎用プログラミング言語「Python」を中心としたプログラミングスキル
AIエンジニアは開発も行なうため、プログラミングに関する知識が必要です。
前述の通りプログラミング言語としては、特にPythonが重要です。Pythonはディープラーニングのライブラリの多くで使用されており、AI技術との相性がよいプログラミング言語です。
また現場や案件によっては、組み込み系のエッジAIなどでCやC++などでの開発も行なわれています。
なお、エッジAIについてはこちらの記事も併せてご確認ください。
エッジAIとは?クラウドAIとの違いや利用シーンについても解説
数学的知識
機械学習では、微分積分学や線形代数学、確率論や統計学などを使ってデータ解析を行ないます。そのため、AI開発には数学の知識も求められる場合があります。データ活用の場面など、数学的知識はAI開発以外にも活かすことができます。
AIエンジニアの需要や将来性
ここまでAIエンジニアのスキルや仕事内容について解説してきましたが、ここからは今後の需要や将来性についてみていきましょう。
今後も多くの人材が必要
AIを活用した事業開発を行なう企業は、年々増加傾向にあります。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、AI人材の需要見通しの平均値は、2018年が4.4万人なのに対し、2030年には24.3万人に増加すると予想されています。
しかし人材供給の見通しは2030年で12万人となっており、2030年の平均人材の需給におけるギャップは12万人を上回ることがわかっています。そのため、AI関連の業界は、今後も多くの人材が必要とされることが考えられます。
厚待遇で働ける可能性
AIエンジニアになるためには高度な専門知識や技術が必要となるため、目指すハードルは高く感じます。しかし非常に需要が高い仕事であり、企業は優秀な人材を確保するために給与などを優遇していることも多く、厚待遇で働ける可能性があり将来性は高いといえます。
AIエンジニアになるまでのキャリアパス
このようにAIエンジニアは高い需要が見込まれる職種です。このAIエンジニアとして働くためには、どのようなキャリアパスがあるのでしょうか。
まずAIエンジニアになるためには、数理モデルのコーディングやAI関連ライブラリの活用など「AIに特化したスキル」を身につける必要があります。上述のTensorFlowやPyTorch、Kerasなどのライブラリ以外に、Pythonなどの言語での開発スキルなども重要です。
また技術的スキルと同時に、データ分析やレポーティング、効果検証などのデータサイエンティストやデータアナリスト寄りのスキルもあるとよいでしょう。現場で実際に分析を行なうことがなかったとしても、必要データの提供など関わることが予想される部分になります。
キャリアパスを考えた場合、こうしたスキルを身につけて、直接AIエンジニアの求人に応募する方法が一般的です。しかしこの場合、即戦力となる知識・技術が求められるため、スキルによっては就職が難しいこともあります。
また、まずはAI関連企業にITエンジニアとして転職し、サポートの立場で経験を積んでからAIエンジニアのポジションを目指すのもよいでしょう。この場合、現職のスキルを活かして転職をし、勉強をしつつ現場でAIに触れる機会を得てAIエンジニアになることになるため、時間はかかるもののよりスムーズにAIエンジニアになれる可能性があります。
AIエンジニアに取得必須の資格
ここまでAIエンジニアについて、役割、スキル、業務内容、そしてキャリアパスなどを見てきました。最後は、AIエンジニアのキャリアパスとも関係する資格について見ていきましょう。
まず大前提としてAIエンジニアになるために、明確な必須資格はありません。しかし、目覚ましい進化を遂げる業界の第一線で活躍し続けるためには、AI開発に役立つ資格を習得しておくことが望ましいです。
取得すると役立つ資格
取得しておくと役立つ資格には、以下のようなものがあります。
G(ジェネラリスト)検定 | ディープラーニングの基礎知識を有し、事業活用する能力や知識を有していることを認定する資格です。 |
E(エンジニア)資格 | ディープラーニングの理論を理解し、実装する能力や知識を有していることを認定する資格です。 |
Python3エンジニア認定試験 | 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施している民間資格。Pythonの文法基礎を問う試験となります。 |
統計認定 | 統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験です。 |
G検定とE資格はディープラーニングに関する資格の代表的なものであり、AIエンジニアを目指す場合はぜひ取得しておきたい資格です。
データサイエンティスト向けの資格
データサイエンティストとして働くことも視野に入れている場合は、前述の資格以外に、次に紹介する資格も役立ちます。
アクチュアリー資格試験 | 確率や統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う、数理のプロフェッショナルであることを認定する資格です。 |
オラクルマスター | 日本オラクル社が公式に運営するOracle Databaseシリーズを扱う技術力を認定する資格です。データベースの管理や運用のほか、SQLの熟成度を問う問題が出題されます。 |
Python3エンジニア認定データ分析試験 | 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施している民間資格。Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法を問う試験です。 |
これらの資格はAIエンジニアとなるために必須のものではありません。しかし資格を取得しておくことで、自身がどの程度のスキルを有しているかを客観的に証明することができるため、就職活動でも役立ちます。
今後AIエンジニアにはより一層の活躍が期待される
AIエンジニアは高度な専門知識や技術が必要なため、AI自体の需要に対し、人材の供給が追い付いていない状況です。一方で、AI自体はかなり難易度が高いため、AIエンジニアに直接応募するのが難しいという側面もあります。
こうした場合は、現在ITエンジニアとして活躍中の場合、AIを扱っている企業にITエンジニアとして就職し、徐々にAIエンジニアに移行していくことも考えてみてください。
人材不足=AIエンジニアとして活躍するチャンスに恵まれている、ということもできます。AIエンジニアに必要なスキルを習得するには時間を要するため、もしAIエンジニアを目指す場合は、早めに学習に取り組むようにするとよいでしょう。